第5話 獣人だらけのS級パーティーへようこそ
「あっ、すいません……叫んじゃって……」
「いえ、大丈夫ですよ。さすがに驚きますよね。そうです。私たち【
全員獣人なのは確かに驚いたけど……。
ユナさんの言い方がちょっと気にかかる。
「そして皆さん。こちらが加入希望のアラタさんです」
「あっ、はい! ご紹介にあずかりましたアラタです! 一週間よろしくお願いします!」
元気よく挨拶して、頭を下げる。
「……ほーん。礼儀はいいな」
「……今までの男よりはマシそうね」
「……ん」
顔を上げても3人が俺のことを警戒しているのは変わらない。
「ではアラタさん。メンバーのことを紹介していきますね。まず、赤髪の———」
「ユナいい。自分でやる」
「うおっ!?」
ユナさんを見て、次に正面を見た時には、いつの間にか俺の前に赤髪の美女がいた。
「おい、男。アタシたちは全員獣人だ」
「そうみたいですね」
「怖いか? 怖いなら今すぐ逃げてもいいんだぜ? 男はすぐ怖がるからなぁ……」
俺より身長が高く、吊り気味の黄色の瞳に見下ろされる。
でも……。
「いえ、全然怖くないですけど」
「……。アタシも怖くないのか?」
「まあ、はい」
「ほーん……。アタシを見て怖がらないとは……お前。随分と肝が据わってるなぁ」
「そうですかね?」
威嚇は迫力があったけど、獣人ってだけでは怖くはない。
獣人っていっても、見た目は美女にモフモフの耳と尻尾が生えた感じだ。
むしろ、お得感がある。
「アーシアさん」
隣にいるユナさんが瞳を細めた。
「悪い悪い。ちょっと試しただけだ」
「……」
「っ、悪かったってユナ……。ゴホン。おい、男。アタシの名は、アーシアだ。見ての通り、大狼族だ」
燃えるような赤髪に、吊り気味の瞳。
時より見える、八重歯。
俺よりも頭ひとつ分高い身長。
頭の上にはオオカミらしい耳とふさふさの尻尾。
そして……。
「あの……」
「あん? ふっ、やっぱり怖いのかぁ?」
「いえ、怖くはないんですけど……その」
「なんだ。モゴモゴと……。ハッキリ言え」
そうだな。言わないとな————
「その、胸が当たってるんですけど……わざとですか?」
——許可なく、堪能しているのも悪いし。
アーシアさんは女性。
さっき絡んできた男とは違い、近づくほど当たるものがある。
それはおっぱいだ。
アーシアさんはかなりの巨乳だ。胸の大きさを比べるのは申し訳ないが……ユナさんより2回りは大きい。
「……。っ!?」
アーシアさんがゆっくりと視線を下げ……ようやく自分の巨乳が俺の胸板にぺしぺし……いや、むちむち当たっているのに気づいた。
「お、おおお前! さては変態だな!」
「ええ!?」
アーシアさんの頬が少し赤い。キッ、と瞳が鋭くなった。
確かに男はみんなおっぱいが好きだけど!
「今のはどう考えてもアーシアの方が悪いでしょ。相変わらず、態度と胸だけはデカいんだから」
「あんっ?」
不機嫌な表情のアーシアさんに睨まれても気にする様子がない、色っぽい美女と視線が合う。
「私はグレア。狐族よ。よろしく」
薄紫の長髪に、くりっとした青色の瞳。
頭には2つの尖った耳と、後ろには長くカールした尻尾がある。
「ふーん。あの文面に釣られてきたからどんな男かなと思ったけど……。案外普通の男だったわね」
「あの文面グレアさんが考えたんですか?」
「ええ。ああいう風に書いたら逆に怪しんで来ないと思ってね」
わざとだったのか。
でも前世じゃああいうどこか怪しげな文面が普通だからなぁ。
逆に懐かしさを感じて来てしまった。
「ほら最後は貴方よ、シャロ。挨拶はしっかりしないさい」
グレアさんは隣に座る、気怠げそうな美女の頭をぽんぽんと優しく触り促す。
「ん、シャロ。大熊族。よろしく……」
栗色のツインテールに、垂れ目気味の瞳。
高身長な2人と違って、小柄で華奢。顔立ちも幼い。
「私は別に何もない。お腹すいた」
「そ、そうかぁ……」
視線を一瞬合わせただけで、あとは俺に興味なさげ。
シャロちゃんと仲良くなるのは時間がかかりそうだなぁ。
「そして、私が兎族のユナです」
1番接しやすいユナさん。
黒髪ロングに、赤色の瞳。ピンと伸びた黒長のウサギ耳。
アーシアさん、グレアさん、シャロちゃん、ユナさん……4人とも種類が違うものの、みんな獣人だ。
「ではアラタさん。次は部屋の案内をしますので、私についてきてください」
「分かりましたっ」
3人に軽く頭を下げて、ユナさんと部屋を出た。
アラタとユナの足音が二階に行ったことを獣人ならではの耳の良さで感じ取ってから……3人は口を開く。
「お前ら……あの男、どう思う?」
「どうも何も、まだ判断するには早いでしょ」
「ん、最初から興味ない……」
アラタの比較的、礼儀正しい態度を見てもなお、警戒している3人。
「だが……」
アーシャは一旦区切り、
「あのユナがアイツに……心を開いたら見方は変わるだろうな」
◇◇
「部屋の説明は以上で終わりです。何か分からないことがありましたら、私に言ってください」
「ありがとうございます!」
「次の説明の前に……。お昼も近いですし、昼食にしましょう。アラタさん。一緒に市場に付き合ってもらってもいいですか?」
「もちろん!」
と言うわけで、市場にやってきた。
多くの人で賑わっている。
異世界の市場はなんだか祭りの屋台に近い感じがする。
「買い出しに付き合ってただきありがとうございます」
「いえいえ。荷物持ちなら任してください」
腕をぐっと曲げてアピール。
「荷物は私が持つから大丈夫ですよ。先ほどから説明が多いですし……一旦外の空気でもと思いまして」
「なるほど!」
ユナさんの気配りだったか。
リーダーとあって周りのことをよく見ているなぁ。
「リラックスしている時にあれですが……。【
「メンバー全員獣人なのは驚きましたけど……皆さん、思ったより優しそうです。まあ、めちゃくちゃ警戒されてますけど……」
3人とも、話しかけてたら返してくれるものの、表情はずっと険しかった。
『S級パーティー【獅子の舞ビースト・ハード】は……何故か、男だけが抜けるんだ』
でも今のところ、パーティーを自ら抜けるほどの要因は見つからない。
「早く皆さんに認めてもらえるように頑張ります!」
まだトライアル期間は始まったばかりだしな。
これからだな。
「それにしても、買い出しとか料理は自分たちで作るんですね」
「獣人が……意外ですか?」
「その、俺の勝手なイメージだとS級パーティーぐらいになるとメイドとか使用人を雇うものなのかなぁと」
S級パーティーぐらいになると、お金は稼いでいるだろうしな。
「中には、そういうところもあるそうですね。ですが……獣人のお世話など、進んでやりたがる人はいませんから」
「……」
し、しまった……。変な話題を振ってしまった……!!
「あ、あの———」
謝るか、話題を変えるか……悩みつつも第一声を発した。
だが、ユナさんと発言が被って……。
「家事や料理は、私が担当しています。私は……。兎族は、獣人の中で最弱と言われていますから」
ユナさん瞳は、辛い過去がありそうな。どこか思い詰めているような……。そんな風に見えた。
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