第13話 クロウサギの発情
「ユナさん遅いな……」
お茶を沸かしてお菓子を用意しても……こんなには遅くならないはず。
そう思い、食堂に向かった。
それから一緒にお菓子を選ぼうとテーブルにお菓子を並べて眺めていた。
ここまでは覚えている───
「アラタさん……私と、えっちなことをしてください」
ユナさんに抱き付かれ、そう言われて……俺の頭の中は混乱状態だった。
でもなんとか、状況を理解しようと目だけでも動かす。
上目遣いでこちらを見るユナさん。
俺の服を縋り付くように握りしめるユナさん。
頬は赤く、乱れた息遣いのユナさん。
俺の視界に映るユナさんは、どれも見たことがない……。
これって、まさか……。
「発情……ですか?」
「っ……は、い……。あのっ、なんで……知って……」
「オウガさんから、獣人族には発情期があるって聞いて……」
『言わなかったというより、言えないんだろうな。そんなこと言えば、それ目当ての男がわんさか集まるだろうし……。何より、打ち明けにくい体質だろう。特に人間の男には』
最初は、それでも打ち明けてくれれば何か力になれるかもしれないのに、と思っていたが……。
「そう、でしたか……。はぁ、んっ……はぁ……」
ユナさんの清楚な容姿が、発情によって淫らなに染まり……。
間違いなく、男の前では。
少なくとも、好きな人の前でしか見えてはいけない状態になっている。
これは、打ち明けにくいよな……。
「アラタさん……アラタさん……逃げてください……っ」
ユナさんは荒い息で言う。
しかし言葉とは反対に、俺の服をぎゅっと握り、身体は擦り付けて離れられないようにしている。
何より、その表情は……早く俺を襲いたいとばかりに熱に満ちている。
「わたし、今……発情していて……。このままではアラタさんを襲ってしまいます……っ。……だから、逃げて……」
「……」
ユナさんが必死に欲情を抑えて訴えている。
俺を傷つけないためにしてくれている。
分かっている。
ユナさんが最後の理性を振り絞って俺のためを思ってくれていることが。
でも、俺は……。
「アラタさん……早くっ。でないと貴方を……ッ」
ぎゅぅぅぅうと。最後の忠告とばかりに俺の服が強く握られる。
痛いほど、掴まれる。
それほど、今のユナさんはギリギリなのだろう。
そんな強く握りしめる手を俺は……被さるように握った。
「ぇ……アラタさん……」
「ユナさん、忠告ありがとうございます。でも、俺だって男です。男ですから……エロいこととか、やりたいっていうのはあります。正直に言えば、今の発情したユナさんを見て、襲われても良いとも思っています」
「っ」
「でも……相手が誰でもいいってほど、貞操観念は捨ててはいません。ユナさんが相手なら……俺は、すごく良いなって思ってます」
「〜〜〜〜っ」
ユナさんのことはまだ全部分かってない。
けど、全部分かっていなくてもユナさんは魅力的な女性だ。
気配りができて、料理上手で、優しくて……そして、今も俺のためを思ってくれている。
獣人族は人間よりも身体能力が高い。
力だって人間よりもはるかに強い。
発情期になったら、押し倒されて喰われるかもしれない。
…………。
今はそんなのどうだっていい。
ユナさんが俺を求めてくれるのなら……俺は、それに全力で応えたい。
「だから、その……んっ!?」
せめて最初は俺からリードを。
そんなことを思った次の瞬間には、唇を奪われた。
最初は唇をくっつけるだけ。
次第に、深いキスになる。
ユナさんに負けじと俺も貪るように舌を絡ませ合う。
お互い夢中になって……何分経ったか分からなくなるくらいのキスを続けた。
それから酸素を求め、どちらともなく口を離せば……ちゅぽん、という音が聞こえ、お互いの唇の間を唾液の糸が伝う。
「はぁはぁ………っ」
……頭がぼーとする。
俺まで身体が熱くなってきた。
まだキスしただけなのに———
「まだキスしただけたのに……こんなに興奮してもらっていいんですか?」
「っ、え……?」
ユナさんが発情した瞳を嬉しそうに細めている。
それだけで何のことを指しているのか、分かった。
だが、生理現象とはいえ女性の前でそうなることがどこか恥ずかしくなって……。
思わず、ユナさんから距離を取ろうと、
「だめっ。はなれないで……」
ぐっと顔を近づけられる。
顔が近づけば、身体が近づく。
そうなれば……下半身の膨らんだ部分がユナさんに当たる。
もう、言い逃れも逃げることもできない。
「……私、我慢していたんですよ。発情したらアラタさんを犯す形になって。アラタさんの優しさに漬け込む形になって。アラタさんに怖い思いをさせて……そうしてアラタさんまでここからいなくなんて嫌だから……我慢していたんですよ……」
「ユナさん……」
「なのに、あんなことを言われては……。……アラタさんが初めてなんです。クロウサギの私に優してくれるのも、もっと一緒にいたいと思うのも。そして……私の初体験をあげたいって思うのも」
「っ……」
ユナさんの言葉にドキッとする。
思わず惚けた声が出そうだったが我慢した。
俺が声を我慢した理由は、それだけでない。
無意識なのかユナさんが自身の太ももを擦り合わせる。
それにより、ズボン越しに俺のも擦れる。
声を上げてしまいそうなほどの刺激。
だが、ユナさんの言葉に対して俺もちゃんと返さなければ……。
「そ、そんなに俺のこと、思ってくれていたんですね。嬉しいです……っ」
「はい、私も……」
ユナさんは小さく笑いながら……張り詰めた俺の股間を股で挟んできた。
「ゆ、ユナさんっ」
「……ふふ、嬉しいです……」
ぐりぐりと押し付けられ、ユナさんの股の中でさらに大きくなっていく。
「ふふっ……一旦ベッドにいきましょうか。でも、それからは……この熱が収まるまで絶対に離しませんから」
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