第16話 新たな獣人
夜。
夕食の洗い物を終えた俺は自室のベッドに一人寝転ぶ。
「ふぅ。今日は色々とあったなぁ……」
掃除をして、ユナさんと話したあの後。アーシアさんたちがダンジョンから帰ってきたが……特に変わったことはなかった。
正直、ホッとしている。
なぜ、警戒してるのかって?
そりゃ……。
『ふふっ……一旦ベッドにいきましょうか。でも、それからは……この熱が収まるまで絶対に離しませんから』
獣人特有の発情が突然始まり、お互い合意の上だったとはいえ……今日、この屋敷の中の部屋の一つで、俺とユナさんは身体を重ねた。
罪悪感はない。
でもアーシアさん、グレアさん、シャロちゃんに報告するには時間が欲しい。
ユナさんもそう言っていた。
コンコン。
自室をノックする音がして、身体を起こす。
「はーい、どうぞ!」
「アラタさん。お風呂空きましたよ」
扉をゆっくりと開けて入ってきたのは……ユナさんだった。
ユナさんはお風呂上がりとあり、頬が少し赤い。髪は乾かしたてだからなのかフワっとしていた。
パジャマ姿も……似合っている。
ちなみ、お風呂の時間は俺が一番最後。俺以外はみんな女性であり、むしろ俺から最後がいいと申し出た。その方色々都合がいいからな。
「ありがとうございます。眠くなる前に入ろうかなっ」
あの後、お風呂には入ったんけど……今入らないと逆に怪しまれるかもしれないしな。
「アラタさん」
「ん?」
着替えを用意して部屋を出ようとした時、ユナさんに呼び止められた。
「今日は……一緒に寝てもいいですか?」
「え」
「その、シーツがないので……」
「あ……」
シーツがない理由。
それは俺とユナさんが一番分かっている。
「そ、そうですよね!」
「は、はい……。ですので、一緒に寝させてもらってもいいですか?」
「も、もちろん!」
むしろ、断る理由がないよな。
「ふふっ」
ふと、ユナさんが笑いを溢した。
「アラタさんは優しいのですね」
「え?」
「だって寝るのなら、アーシアさんたちに頼まないのかって思いませんか?」
確かに俺以外にも頼めることだ。
シーツがないという理由じゃなくても、何かと理由を付ければみんな一緒に寝てくれるだろう。
それに俺と一緒に寝るのは、色々とリスクがあるわけで……。
「ふふ。意地悪なことを聞いてすいません。でもこれは私にも言えることですよね。アラタさん以外の皆さんに普通は頼むべきことなのに……そうしなかった。何故だと思います?」
また意地悪な質問だな。
だが、次はハッキリと述べる。
「何故かはあえて答えませんが……俺はユナさんと離れたくないです。できることなら今日は一緒に寝たい。ユナさんも同じ気持ちだったら嬉しいですね」
「……。アラタさん、ずるいです……」
ぎゅっと。ユナさんが俺に抱きついてくる。
俺は優しく受け止め、同じく抱きしめる。
そして、俺の胸板部分に顔を当てるユナさんが言う。
「お風呂、ゆっくりしてもらいたいですけど……できるだけ早く上がってきて欲しいです……」
「っ。分かりました。すぐ上がってきます!」
「ふふ」
きっと俺の心臓の鼓動が分かりやすく早くなったのも聞き取られているのだろう。
◇◇
「ユナさん可愛すぎるだろ……」
脱衣所に入り、呟く。
身体を重ねた後は、その人のことがもっと魅力的に見えると聞くが……。
魅力的に見えるどころじゃない。
言動とか仕草とか、ひとつひとつにドギマギしてしまう。
「これじゃ、発情期以外の日も気が持たないよなぁ……」
てか、俺。お風呂入ったらその後はユナさんと一緒に寝るんだよな?
一緒に寝るってことは一つのベッドで一緒に……だよな?
「……さっき以上にドキドキするってことだよな」
やばいっ。考えただけでもドキドキしてきた。
とりあえず、お風呂に入って一旦落ち着こう——
「あっ」
「え?」
突然、脱衣所のドアが開かれた。
入ってきたのはアーシアさん。
俺はというと、ちょうど上着を脱ぎ、上半身が裸になっていた。
「おまっ、なんで裸……っ」
アーシアさんの視線が俺の身体へ。そして顔を真っ赤した。
視界に突然、上半身が裸の男がいたら驚くのは分かるけど……。
「ここ、浴室なので……」
俺はこう言うしかない。
「ああ、そうだよな……。すまん」
「い、いえ……」
なんだが気まずい空気になってしまった。
「あのっ。アーシアさんは何か忘れ物があってここにきたんですか?」
見渡す限り、忘れ物っぽいものは無さそうだけど……。
「ああ、そうだった。忘れ物……というか、お前に一言言いにきた」
「俺にですか……?」
アーシアさんの表情が真面目なものに切り替わり、俺も聞く姿勢になる。
「お前……ユナの発情を収めたんだろ?」
同じ獣人族であるアーシアさんはそう言い放った。
【急募】経験ゼロでも大丈夫!私たちS級パーティーと組みませんか?〜獣人だらけのパーティーだった件 悠/陽波ゆうい @yuberu123
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