第7話 残骸
気絶した俺はレイに家まで運ばれた。
翌日もう一度ダンジョンに入ると
ダンジョンモンスターの
それはレイドダンジョンでも変わらない法則で、やはりこのダンジョンもその例外には洩れていないようだ。
頭部パーツ。
腕甲パーツ。
脚部パーツ。
電撃砲パーツ。
その他、様々なパーツが各二百個ほど手に入った。
倒した数は千体以上居そうだったが、しかし戦いの破損で使えないパーツも結構あったからな。
比較的損傷の少ない個体から得られたレアドロップと呼べる物もあった。
これは空気中の魔素を電力に変換する特殊機構だ。
それらを持ち帰り、裏ダンジョンの
【
それは人形師の代名詞とも呼べるスキル。
人形その物を製造する事ができるスキル。
指人形も、ハニワも、形代も、レイも。
全てはこのスキルによって生み出された。
俺のスキルは総じて「人形」という弾丸を消費する物。
このスキルが無ければそれらは使う事もできないのだから最重要と言って良いだろう。
「新たに何か作れるのですか?」
パーツを並べて胡坐を組む俺を、覗き込む様にレイが聞いて来る。
「レシピが色々増えたからな」
それはこのスキルが解析した構造だ。
俺の戦闘や得たパーツの分解や再構築など、様々な『解析』によってレシピは増える。
そして大量の
何度も経験のある事だ。
今の解析度ではまだ鉄や銅、金などの素材そのものからパーツを作る事はできない。
部品を素材にして兵器の作成がやっとだ。
よし、閃いた!
「全身に砲台を付けたら、全方位攻撃可能な最強個体になるぞ!」
「クロウ、貴方は馬鹿ですか。
関節が死にます。
重量オーバーです。
供給魔力量が足りません。
あと、ダサいです」
バカ……
ダサ……
「はい、ごめんなさい……」
泣いてない。俺は泣いて無いんだ。
これは汗……
「しかし、私に武装が足りないのは事実。
獲得したレシピの武装の取り付けをお願いできますか?」
だよな!?
そうだよな!
必要だよな新しい武器!
っていうか、メカって聞くと興奮するのは何なんだろ。
「おう、任せろ!」
喜々として俺はスキルを発動させる。
「
レイの周りの空中に魔法陣が発生。
更に必要なパーツも輝いて浮き始める。
その魔法陣が何を行っているのかは正直分からない。
けれど、この力は俺の技術能力を完全に無視して、必要な
右腕武装「雷撃剣」
左腕武装「雷撃砲」
背面武装「ジェット推進機」
視覚機能「赤外線カメラ」
そして、ジェネレーターを使用した
全ての装着が一瞬で完了した。
「感覚的に武器の使用感が理解できます。
まるで技術に関するソフトウェアをインストールしたように」
レイの見た目も変化した。
元々、レイには雷撃砲の機能が無かった。
俺の再構築が完璧では無く、レイの蘇生だけを念頭に置いていたから不要な部分を再現しなかった。
だが、今のレイは違う。
背面には4つのジェット推進機を装着。
空を翔け、上空から攻撃も可能だ。
しかも、近接戦闘能力も付与されてある。
なら、レイが負ける理由は最早数だけだ。
「お、お前……」
驚きながら俺は呟く。
「何か変でしょうか?」
「めっちゃカッケェェェ!!」
「……あ、はい」
冷ややかな眼を向けられた気がする。
いや、気のせいだ。絶対そうだ。
メタリック装甲。
各種武装。
背負うジェットパック。
見た目も変化している。
左腕が銀色の砲門となり、右腕は手のままだが雷の剣を掌から生成する為の穴の様な物が開いている。
背面の4つの白いジェットは一体化して背負うように存在する。
眼光は青と緑の二眼に変化していた。
「クロウ、一つ提案……というよりお願いがあります」
「おう、なんだ?」
「魔力は既に回復していますよね」
「あぁ、ちゃんと10時間くらい寝たからな」
「では、もう一度結界外へ侵入し残存勢力と戦闘させてくれませんか?」
「残りとって、そりゃ今行けばリポップはまだだから昨日よりは楽だろうが……」
正直、昨日の戦いはギリギリだった。
1日であれだけの回数使ったのは初だ。
それに重ね掛けの時は、消費魔力も9倍だからな。
それだけやって、気絶までして、それでも全滅は無理だった。
それを……
「今の私なら、単騎でも勝負になるかと」
「マジで?」
「はい」
◆
って訳で、もう一回来て見た訳だけど。
「マジかあいつ……」
上空を縦横無尽に飛び回るレイ。
それに攻撃を命中させるのは困難。
次々と赤い雷撃砲が打ち下ろされる。
しかし、赤雷は別だ。
赤い雷にはパルス波の様な性質がある。
その攻撃はある種の電磁パルス攻撃。
攻撃を受けた電子機器は、一時的にその機能を麻痺させる。
あとは魔力消費速度だが。
感覚的に後1時間程度の継戦は可能。
「完全回避に機械特攻。
しかも高度AI搭載。
なんなら俺のスキルも使える。
なんだあのSFロボット」
俺、ハニワで守られるだけなんだが……
主人としての威厳、ゼロ!
「この涙は嬉し泣きか悲しくて泣いてるのか……」
まぁ、どっちでもいいや。
「がんばれー」
ハニワと一緒に俺は声援を送る。
ハニワ君たちも武器をカチャカチャと鳴らしてレイを応援している。
こいつら結構ノリいいな。
デバイスから何か変な感覚がした。
同時にレイの呟きがデバイスに通信され、俺の頭に響く。
『【
赤い雷を纏った指人形が、敵の密集地に落ちる。
直後、直径5mほどの赤雷の半球が形成。
その中の敵を沈黙させる。
3秒間持続する
わー。
スキル進化しちゃったぁ……
俺とレイのスキルは共有状態にある。
それは、レイの行った行動による熟練度も俺のスキルに蓄積されていくって事だ。
それも、俺が若くして高位探索者になれた理由だろう。
第四段階【
けど、そんなポンポン進化しない筈なんだけどな。
『
パルスの範囲が一気に三倍。
15メートルへ拡大する。
数十体の
更に、レイから通信が入る。
『クロウ、敵残数100体を低下。
レイドボスを発見しました』
「おぉ、無理するなよ?」
『レイドボスの能力を偵察してみます』
決してできるとは言わない。
レイドボスは通常エネミーとは別格の強さを持つ。
レイが敗北した巨人もレイドボスだった。
甘い相手では無いと自覚している筈。
俺も気を引き締める。
レイが安全に撤退できるように。
「あれか……」
レイが発見したレイドボス。
それが、俺の居る結界の入り口付近から見えた。
巨大な獅子の形をした白い機械。
『
レイが何処までやれるか。
そして、このダンジョンの強さ。
確かめてやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます