少年少女の葛藤と苦悩、その選択とそれを受けてまた苛まれる様子を、「月光」の音色に重ねて描く、ボーイ・ミーツ・ガールの行く末。
眼に映る彩も、耳が拾う音も、あまりに美しくて、ずっとそれに焦がれていた。
それはさながら星に手を伸ばすように、或いは月に手を翳すように。
眩しい月に手を伸ばすと、自分に影が落ちる。光は降りかからない。
月の光で照らされる若人は、その音律から懸命に己の求めるものを見出そうとする。
彼らは影など気にせず懸命に手を伸ばしていた。そのはずだった。
光が強いと、それに比例して影は濃くなる。
照らし照らされ、彼らは光にも影にもなり得るのだろう。
ベートーヴェン ピアノソナタ14番 「月光」と、僕と彼女。
とにかく読みやすい文章。
「月光」への、作者さんの繊細な感性で綴られた音を奏でる文章は、読み手をぐんぐんと「月光」の世界へといざなっていきます。
気づけばその旋律に心を掴まれて、感情を大きく揺すられることでしょう。
音楽を題材にした小説で、読んでいて本当に旋律が聞こえてきたという経験は、この小説が初めてです。
終盤にさしかかるにつれて、どんどんと鳥肌が立ちました。
短いので短時間で読めます。
小説で聴く「月光」の世界に、浸ってみませんか?