第27話 オマケ

私たちは幸せだった。



「ボケたようなあなたの性格が敵を作らないのよねえ……」


シャーロット姉様が言ったことがある。



姉の話によると、ルシンダ嬢と言うか夫人と言うかは、そのまま牢屋行きになってしまったらしい。


「牢屋って、あんまり居心地よくないって、聞いたことがあるんだけど、どうなのかしら」


あと、カザリンは、その後、行方不明になってしまった。なんでも借金取りに追われているらしい。これは、顔を見ないで済むのでありがたい。


うちのハウスキーパーのカザリン女史の方は、絶対男の売り買いなんか、しなさそう。

……と思っていたのだが、実は推し活が趣味で、例の白薔薇館はメンバーの絵姿を集めているらしかった。見せてくれないので論評できないけど。


元メンバーのリオンのことが密かに心配になったのだが、なまものはお断りだそうで、胸をなでおろした。



「侯爵は……」


侯爵は王都のどこかにいるらしい。ただ、社交界をはばかって、公式行事などに出てくることはない。会わないで済むので、好都合だ。


両親に関しては、私も兄姉と同じことになってしまった。つまり、ほとんどというか全く会うこともない。いいのかしらと思うが、レジーナお姉さまが、いいのよと一言で片づけた。


「人は人よ」


一応、親は他人ではないんだけど。


ただし、親の理想を踏みにじった私のこともレジータ姉様のことも、両親は成功例として大いに自慢しているらしい。そして、シャーロット姉様のことは失敗例として、(孫の教育に口出しするなどして)何とか救いの手を差し伸べようとしているらしいが、シャーロット姉様のみならず、姉兄全員がこれには大激怒だった。


「逆鱗に触れるって、このことよね」


「もう、ほっといて欲しいわ!」


シャーロット姉様が怒って、『何もわからない親のための貴族の子ども向け礼儀作法のしつけ方』と言う本を壁に向かって投げつけた。母からのプレゼントだ。


私は、隣国の王家から差し向けの家庭教師が来ているからと、断った。

そんな者、来るわけがない。だけど、両親は感心して納得しているので、なかなかいい言い訳だと思っている。







むやみやたらにデカい愛の巣(デカい城)で、夫のリオンはソファにダラダラしている。いつ仕事をしているのか良くわからない。太らないのが不思議だ。


まあ、そんなもんかと思っていたが、ある日、私は、三人の子どももろとも引っ越しするからと言われた。


「え? どこへ?」


「今度、僕、王様になったんで、隣国の王宮へ」


「えっ?」


い、今、なんて?



「だから、今日から、ウチのリオン・ジュニアは、王太子になるから」


リオン・ジュニアは、父ちゃんに話しかけられると嬉しいのでニマーと笑った。


乳歯がかわいい。


「トマシンは、王妃ってことで。よろしくね」


「ちょっと、ちょっと待って、あの……」


「大丈夫、大丈夫。引っ越しは二週間後ね」




それは、出会ってから数年後の物語。


運命は、まだ決まっていない。


だけど、その話は、また今度。





蛇足:

ちなみに、ルシンダが捕まった話を『国王陛下第五十回生誕記念パーティ』でチクったのはチャールストン卿の手の者で、当然狙ってやりました。

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お前を愛することはないと、だんなさまに宣言されました。その後、隣国のイケメン王子が物欲しそうに付きまとって来るんですけど?! buchi @buchi_07

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