夜のお世話
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寝室で眠っていたはずの家族全員が目を覚ました、 とある日の夜中の出来事。
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今夜も始まった、いつ呼び出されるかわからない赤ちゃんのお世話。
こんな生活もかれこれ一年以上が経過したが、満足な睡眠は今度いつできるのだろうか。
大好きなワインもビールも我慢、風邪薬でさえきちんと飲めないから、私の体力と心は落ちていく一方だった。
…
長男が生後半年の時に双子の妊娠がわかり、もうその頃には完全に寝る前だけはミルクに切り替えていたこともあって、朝まで眠ってくれるようになったのは幸いだった。
日中の育児と悪阻で外に連れて行くのも辛く、だけど仕事をしている時だけは少し気が紛れてそれが救いだった。
そして今夜も寝室のベッドでフギャフギャと泣き出す弱々しい声。
「この声は愛梨ちゃんか。」
寝ぼけ眼で起きる私。
抱いても泣き止むことはなく、左腕にまだ首の座らない愛梨を抱き、薄暗いキッチンで調乳する。
泣かせ続けて他の子たちが起きちゃうくらいなら、こうやって抱きながらの夜中のミルク作りなんてお安い御用。
ユラユラと揺れながら『そのうち起きるから』という母親の感でもう一人の娘、優梨のミルクも作っておく。
寝室に戻ると、意外にも起きていたもう一人の子は亮二。
「あれ、亮くんが起きちゃった?」
囁き声で話しかけた私。
こちらもシクシクと泣きながらママを求めてやってくる。
寝ぼけているのなら再びそのまま眠ることを期待したがそれは叶わず、今度は亮二を抱いて落ち着かせる。
夫は隣で寝息を立て、私が夜泣きに対応していることなんて気付いてなんかいない様子。
昼間働いて来てるし、そして生活には充分すぎるくらいのお金を稼ぎ、起きていれば子ども達のこともよくやってくれるし別にいいんだけど、こんなにも自分の子どもの泣き声に気づかないものなのかと正直呆れる。
「あーちゃんごめんねぇ、ちょっと自分で飲んでてね。」
クッションを上手く使い哺乳瓶を立てると、愛梨はコクコクとミルクを飲み始める。
「亮くんはオムツ変えようね。一回ねんねだよ。」
腕から離し一度寝かせ、嫌だと泣き出す亮二をそのままにオムツを変えていると、聞こえてくるのはもう一人の泣き声。
「起きちゃったか…」
優梨も起きることは覚悟していたが、タイミングは今ではない。
こうなると私の二本の腕は許容範囲を越える。
亮二のオムツをちゃっちゃと変え、優梨にも作ってあったミルクをそのまま与えると二人一緒に深夜のミルクタイム。
でも、だいたい時間は揃わないから色々しながら深夜に何時間も起きっぱなしなんてこともザラにある。
私の右手には哺乳瓶、左手に亮二。
妹たちがミルクを飲む姿に気づいてしまった亮二は自分も飲みたいとグズリ泣くが、再びミルクを作りに行く気力はなく自分の胸を出し乳首を吸わせる。
すぐに咥えさせられる母乳は最高の育児必需品。
さっき作ってきたミルクは、もう一人の妹のための物なのだ。
一歳を迎えてそろそろミルクも止めるなんて話も見聞きするけど、たぶん亮二はまだまだ無理そう。
小さめに成長を続けているし、先日の乳児健診でももう暫く続けるよう指導を受けた。
何より妹たちが飲む姿を見てたらそれは欲しくなるだろう。
この子もまだ一歳と数ヶ月、フォローアップミルクとおっぱいにはまだまだお世話になる。
そしてミルク代が嵩む日々は悩ましい。
息子の目元にはキラリと光る涙の跡がカーテンから漏れる光に反射する。
「あー…眠〜い……」
こうなると流石に騒がしい様子に気づいた修二も目を覚ました。
「大丈夫か?起こしてくれていいんだぞ。」
「ごめん、うるさかったね。」
こう自分から目覚めるのはかなり珍しい。
それだけ騒がしかったのだろう。
修二はセルフ飲みをさせている愛梨を抱き上げ修二の腕の中に収まると、30ccほど残して眠ってしまいそうな娘の哺乳瓶を小刻みに揺らす。
「愛梨さーん、あとこれだけだから飲んじゃお?頑張れー。」
小さめな双子である事に加え一ヶ月以上早く産まれたこともあり、体力的に入院中からミルクの飲みが二人ともあまり良くなかった。
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