ファミリーデー
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修二と里美の職場でのイベントにやってきた。
そこでも発作に見舞われた里美は友人のフォローでその場を何とかやり過ごしたのだが…
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どんなタイミングでそうなるのか、はっきりとは分からないでいた。
この人の多さに不安を抱いたが、きっと気にしすぎる事は良くないと思いあえて触れず普通に過ごす事にした。
二人の職場に賀城家他、様々な家族が揃う一日。
本日は年に一度のファミリーデーである。
賀城と桃瀬という様々な意味で名の知れた二人が夫婦となった事で、その珍しさから周囲の視線が注がれていた。
…
「来月さ、例のファミリーデーだけど今年も来るだろ?他のヤツが家族で楽しそうにしてるとさ、俺は寂しいわけよ。だから絶対に来いよ。」
「あのね、あの子達を連れて私一人ってなかなかキツイのよ?でも…折角だし行こうかな。いつも通り動物も来るんでしょ?動物園は行くの大変だからね、こういう時に体験させてあげたいわよね。」
職員の家族を対象とした、毎年恒例初夏のイベント。
出張や夜勤が多いこの組織で勤務する職員と、その家族の時間を提供すること。
また小学生を対象とした、親の職業を知る、国の仕事とはを学ぶ機会として開催される福利厚生の一環としての催しなのである。
とはいえ、賀城家の子どもたち三人は両親の職業の事など知るわけもなく、ちょっとしたお出かけの一部であろう。
組織内、研究所勤務の里美は育児のため休職中であり、この場に来る事はかなり久々で同僚に会える事も楽しみに今日を迎えた。
ベビーカーに優梨と愛梨、それに掴まりながら歩く亮二は一年ぶりのファミリーデーにきょろきょろと目を丸くして周囲を見渡す。
「パパ、どこだろねー。利佳子に連絡してみる?」
「あっちゅい…」
「ね、今日暑いね。お部屋入ってお水飲もうか。」
早く修二と合流したい里美は周囲を見渡すが、人だらけで見つけられず、とりあえず修二が誘ったという利佳子に連絡を入れる事にした。
「利佳子?もう来てる?」
「えぇ、私たちはエントランスの中に居るわよ。外じゃ日差しが強すぎて、これじゃあ晴が暑そうなのよ。」
「うちもこの子たちに水分取らせたい。私も今着いたから、そっち向かうわ。」
里美は重たいベビーカーを一人押しながら、利佳子が居るという場所を目指す。
それにしても残暑厳しいこの季節、もう少し開催を後にすれば良いものの、この時期になってしまう理由も里美は理解していた。
「利佳子、お待たせ!快人くんも来れたんだねー。」
「里美、あなたベビーカーにもう一人連れて、かなり逞しいお母さんに見えるわよ。」
「本当大変なんだよ?ベビーカー重たいし、修二くんがいないと疲れちゃう。」
「今日暑いよね。少し涼んだらさ、皆んなで色々回ろうよ。俺も手伝うからさ。」
「ありがと。晴ちゃんも大きくなったね、もう喋る?」
「単語は少しずつね、言ってることは伝わってそうだけど。双子ちゃんはもう喋るんじゃないの?この寝てる子はどっち?」
「この寝てるのは優梨だよ。うちは三人とも色々遅いからなぁ…やっと晴ちゃんと同じくらいじゃない?」
お互いの子育ての近況報告も簡単に済ませると、少し涼んだところで外のアトラクションへと向かった。
…
優梨も目を覚まし、まだ里美の腕の中で寝ぼけていると、利佳子が気づく。
「あれ修二くんじゃないの?」
「そうだね。というか、あれはキャラに似合わないわね。」
そこへ近づくと、色とりどりの風船に子ども達は目を輝かせた。
修二は支柱からバルーンを取り子ども達四人に手渡すと、各々の顔がパッと明るくなった。
「おつかれ、修二に風船とは似合わないな。」
「仕方ないだろ。これも仕事だからな。」
「修二くんがこんな事をしてるって事は、この国も平和って証拠なんじゃないの?」
「…って事だろうな。」
修二の職務内容を把握している元同じ組織で勤務していた利佳子が問うと、それは里美も同感であり、ずっとこんな平和が続けば良いと心から願った。
「ぱぱ、こってー!」
亮二が抱っこを求めると、修二はその場に屈み我が子を抱きしめた。
続いて愛梨と優梨も抱きつくと、幸せで胸いっぱいの修二はもう仕事どころではなく完全に父親の顔でありデレデレの表情を見せた。
「ヒヨコさんは触ってきたか?」
「…?」
「小さい鳥さん、向こうにいるから行っておいで。赤ちゃんだから優しくいい子にだっこするんだぞ?」
「賀城さん、お子さん達とどうぞ行ってきて下さい。私ここ、一人でも問題ないんで。」
「ありがたい、少しだけ行かせて貰おうかな。」
「ありがとうね。」
修二をフリーにしてくれた後輩女性へ里美も礼を伝えると、先にある『ふれあい広場』へと進んだ。
モルモットにウサギ、ヒヨコ、犬や亀までもいるふれあい広場。
自分と同じくらいあるであろう大きな亀に興味津々の子どもたちに職員が乗っても大丈夫だと促し、修二が愛梨を抱えて甲羅の上にのせる。
「こわいのー、やだー」
「大丈夫だって。恐くないし噛みつきゃしないって。ヒヨコさんの方がいいか?」
すると激しく怖がりポロポロと涙を流す。
パパに抱っこされた愛梨はそのままヒヨコの元へ行くと、小さな両手でそっとすくい上げた。
「おー、上手だ。亮二もやってみ?晴もできるか?」
「ちっちゃいねー、あかちゃん?」
「ニワトリさんになるんだよ。亮くんも鳥さんのお肉食べるてるでしょ。」
里美の説明に修二は何という説明をしているのかと思ったが、実際はそれが現実であり食物連鎖の仕組み。
これならちびっ子四人も怖がらずに触れ合え、楽しそうでなりよりである。
「私たち、他も行ってこようと思うの。他の人たちにも会いたいし。」
「そうなの?三人とも、晴ちゃん達とバイバイだってよ。」
黙って手を振る賀城家の子ども達と夫婦に見送られ、利佳子夫妻はその場を去った。
…
そしてここからは家族の時間。
五人揃って並べばやはり注目の的、今となってはこの二人が夫婦であることは知られて当然だが、結婚当初は周囲に驚かれ、里美の日に日に大きくなってゆくお腹に気付いた人々により『そういう事か』と、二人が直接伝えずとも状況は知れ渡った。
久しぶりに現れた里美の姿を見かけて会釈をする者、通りすがりにチラチラと視線を追う者等、様々だったが、やはり気分が良いものではない。
「何か…嫌だな、居心地悪いかも。」
「まだ気になるが?今はさ、家族で居るんだし別にこういう日なんだし、況してや悪い事をしてるわけでもないんだ。復帰したらそんな事気にしてられないぞ。」
いつかは自分も誰かと結婚し、家庭を持つ事を夢見ていた。
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