子の思い
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里美が入院して以降の子ども達、特に亮二の不安定さが目立っていた。
イヤイヤ期に重なったこの時期をどう過ごすべきか、修二にとっても手探りの日々が始まった。
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最近、亮二は何かを感じている様に思う。
幼いながらも母親の変化を敏感に捉え、感情を露わにしている様に見える。
男の子だし、初めての子であり俺も桃瀬も最初は恐る恐る抱き世話をし、毎日手探り状態で育児をして来たが、今では溺愛状態であり亮二もママが大好きだ。
その大好きなママがこんな状態になり、たった二歳の亮二にも外からは見えぬ色々なストレスが溜まっているのかもしれない。
…
夕食後、バタバタと三人を風呂に入れ、保湿ケアに着替え、歯磨きを三人分。
女の子たちにはドライヤーで髪を乾かす作業が加わる。
どちらかというとパパっ子でいてくれている双子はまだいいが、ママっ子な亮二の心は最近不安定のようだ。
そもそもイヤイヤ期に突入している事もあり、癇癪を起こし泣き喚く、そんな日もよくあるのだが、ここ数週間の亮二の姿は親としても見ていて可哀想になってくるものがあった、
「ねんね、やー!」
ベッドに入ったものの手足をバタバタさせ、埃が舞っているのか俺もくしゃみが止まない。
「おーい亮二、パパがトントンしてあげるぞ。ママはちょっと疲れちゃってるから、そっとしておいてあげよう?できるか?」
「やぁだー!ぱぱ、やぁーあー!」
残念なことにパパは嫌らしい。
ただ、亮二の訴えはわかる。
ママの隣でただ眠りたいだけなのだ。
本人だって明らかに眠いのだろう、泣きながらもその瞼はすでに上下がくっ付いている。
妹の愛梨と優梨はおしゃぶりを口に含み、こんなにも騒がしい中でもそろそろ寝落ちそうだ。
何なのだろうか、同じ親から産まれたこいつらのこの違いは。
「修二くん、亮二こっち来ていいよ。私、大丈夫だから。」
桃瀬は二日後から精神科病棟へ入院することが決まっていた。
今日はそれに関しての説明を受けるため出かけていた。
今の桃瀬は少しの外出でも疲れてしまう。
それに加え子どもたちの世話もできる範囲で頑張っているが、やはり日々体調と感情の波がある事は変わりなかった。
…
家族五人で横になるベッド。
数日後にはこの場も四人になる。
桃瀬の隣で安心したのか、毛布を蹴り飛ばしながら豪快に眠るその姿と寝顔は何とも男の子らしい。
三人の幼な子と精神的に健やかではない桃瀬のフォローをするこれからの日々、流石の俺も不安でしかなかった。
「やー!やらー、ねんね、いやー!」
すると突然亮二が叫ぶ。
「大丈夫だ、もうねんねしてるだろ?ママもパパもちゃんと居るからな。」
今はまだ、桃瀬も俺も居る。
決して嘘ではないが、この言葉も数日後には伝えられなくなるのだ。
それでも次第に大きくなる泣き声。
おしゃぶりはベッドに転がり、桃瀬の横に座って泣き喚く亮二の気持ちは痛いほど理解できた。
「おいで、抱っこしよ?」
亮二を抱くが余計に泣くその姿に俺も泣きたいし、兎に角眠い。
こんな時、母親の乳首に吸い付かせてやれたらどんなに安心するのだろうか。
しかし下の双子もだいぶ大きくなったことや哺乳瓶でミルクを飲む事にも問題がなかった事もあり、桃瀬の服薬の都合で断乳させることになったのだ。
桃瀬の横で泣き疲れ、ようやく眠った亮二。
二人の寝顔がそっくりで愛おしい。
「おやすみ。」
たぶん、桃瀬も今の状況はよく分かっている。
今回の入院はもちろん治療を目的としたものだが、一度子ども達と離れ、落ち着いた環境に身を置き治療にあたることを目的とすると説明を受けていた。
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