dinner
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二度目の結婚記念日。
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桃瀬が欲が爆発したようだ。
時々こういう時があって、車の中や家の中など人目を避けられる場所であればあるほど、その行動は激しいものとなる。
そして母親ではない一人の女性としての姿にもの凄く愛を感じた。
…
先週の結婚記念日ディナーは仕事の都合で予定の変更を余儀なくされ、予定していたお泊まりもあの状況下仕事となれは不可能に決まっていた。
きっと楽しみにしていたであろう記念日ディナーを待ち侘び、連日の激務をこなしていた中での予定変更。
いつかは果たせる予定の移動とはいえ、楽しみが延びることに桃瀬にとっては不服だっただろうし、抱き合って仲直り作戦もその後しばらくお預けとなった。
「ほらこれ、記念のプレゼント。そろそろ飲める様になるんじゃないか。」
「ありがとう。早く飲めるようになりたいものね。けど、もう少しかかりそうよ。」
「何で?まさか、またできた?」
「違うって。私たちそういう事したっけ?」
修二の顔が一瞬引き攣った後に笑みを見せたが、生憎そのような理由ではない。
双子の産前から話の出ていたドイツでの任務を漸く終え帰国したのが先々週のこと。
その日本帰国に合わせ、わざわざイタリアまで飛んで現地のワインを選り抜いて来たという。
イタリアのシチリア州産の高級ワインだと言うが、授乳中の里美には先の見えぬ楽しみとなった。
しかしそれ程ワインに詳しいわけでもないし、好みがあるわけでもない。
いつだったか職場の仲間との忘年会で訪れたフランス料理店でのワインに感動し、いつか再びその風味に出会えることを里美は待ち望んでいたのだ。
「あの子達はもうちょっと母乳もミルクも止められそうにないわよ。小さいからもう少し続けた方が良いだろうって。」
「それじゃあこのワインは帰国の土産として受け取ってよ。」
「子どもたちが皆、卒乳したらそのご褒美ね。あとこれ、私から。」
修二の手元に渡った薄型の箱を開けると、新しいネクタイが仕舞われていた。
仕事ではスーツを着ない修二。
スーツに代わる公的に着用する制服がある事で、この歳でスーツは一着しか所持しておらず、ネクタイも三十代に突入した男性が身に着けるには悩ましいデザインの物であった。
「Stellaのネクタイじゃん。仕事で使えないのが勿体無いもんだな。」
「もうお父さんだからね。プライベートでもスーツが必要な時は増えるでしょ。しっかり、宜しくね。」
「ありがとな。」
…
今夜は里美の妹歩美が子ども達を見てくれている。
食事を終え一度連絡を入れたが、家事もでき普段から姪甥の世話を手伝っている歩美にとって、少しばかり負担が増えたに過ぎないらしい。
「大丈夫よ、私も明日は休みだもん。二人でゆっくりデートして来て。その代わりバイト代よろしくね!」
「分かってるわよ。何かあったら連絡ちょうだいね。」
「了解〜」
ゆっくりデートと言っても、昔の様にホテルでお泊りするわけにもいかない。
だが、そういう場所もかなり久しく、二人は口にしないもののこの後の行き先は想像できていた。
「行くだろ?」
「そう、ね…久しぶりに。」
駅までの道、路地へ入るとそこは一気にネオンが輝くホテル街。
手を繋ぎ、不思議と口数の少ない二人は互いに緊張していることを察していた。
外観からも清潔さが感じられるホテルを適当に選び、入室する。
「今からじゃ三時間くらいかね?」
「何だか忙しないわね…でも今日くらい歩美に甘えちゃお?」
里美が修二に抱きつく。
「珍しいな。そんなに?」
「早く…」
「どうした?それなら先に風呂かな。」
上から抱きつきキスを繰り返し、既に身体を揺らしている里美を抱き抱え起き上がる。
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