家族旅行

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家族三人で出かけるプチ旅行。

束の間の一人時間を楽しんだ里美は部屋に戻ると…

温泉旅行3部作その2

露天風呂にてから一年後の話。

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何となく違和感を感じながらも、体調を誤魔化しながら向かった温泉旅行。

仕事復帰目前、それは最初で最後の家族三人小旅行となった。

退院した息子を連れて数ヶ月、決してムリのない旅は、癒しと快感で満たされた。



連日の眠気と頭痛、息子が退院してスタートした初めての本格的な育児による疲れとストレスだと思っていた。

抱っこしていないと泣く亮二を一日のうちの殆どを腕に抱き、それは毎日大変だったが、寝かすと泣くしママの腕の中が心地良く安心できるのなら、それはまだまだ未熟な新米ママとして嬉しい思いだった。

里美は今朝も寝起きから感じる頭痛に小さく涙し、意を決して起床する。

すると亮二を腕に抱きながら、朝のミルクの準備をしていた修二が心配そうに声をかける。


「おはよう。また頭痛あるのか?今日行かれそう?」

「いつもの事だし大丈夫。」

「いつもって…母乳なのに薬飲んでいいのか?」

「病院で貰ってるし授乳して大丈夫って言われてるよ。」


収納扉の引き出しを開けガサガサと頭痛薬を手に取ると、キッチンの浄水器のレバーを上げ、そのまま錠剤を胃の中へと流し込む。

そしてリビングへ向かうと、倒れる様にクッションに顔を埋めた。


「今日止めてもいいんだぞ。そんな無理して行く事もないんだからさ。」

「行くもん。それよりおっぱい痛いから早く吸ってもらわなきゃ、亮くんこっちに頂戴。」


里美の固く張った胸は授乳の準備万端、亮二を受け取り乳首を口元に近づけると、息子は食いつく様に小さな突起を口に含む。

反対側の乳首からも反射的にポタポタと滴る母乳はパジャマのズボンを濡らす。


「今日も見事に滴ってるな。」

「この子退院して直接母乳飲むの、すごく上手になったんだけどまだ量があまり飲めてないのよ。まだ私のおっぱいが勝手に母乳いっぱい作っちゃうみたいなの。」


今はまだ里美の胸で作られる母乳の量と亮二が欲しがる量が合わないでいた。

もう少し母乳育児が軌道に乗ると子どもが欲しがる量が都度作られるようになるらしいが、それはまだまだ未知の世界であった。

息子に授乳する里美は顔を上げ、修二と朝のキスを交わと、それは幸せな家族の一時だった。


再来週に控えた里美の仕事復帰。

早産児を抱えての復帰に里美本人も無理は承知であったが、まずは『少しずつ』という条件で戻る事が決まった。

部署最初の妊娠出産後の復職者という事で周囲も分からぬ点は多々あったが、里美の行動力と信頼によるそれまでの積み重ねにより協力を得る事が出来た。


「荷物はこれと、あとは?」

「あとこれと、こっちはオムツとミルクと着替えね。」


賀城家は本日、初めての子連れ一泊二日温泉旅行へと旅立つ。



車に乗り込み数十分、チャイルドシートで寝落ちてしまった息子にそっとブランケットを掛け、里美は静まった空間に胸を撫で下ろした。


「子連れの旅行ってのも新鮮でいいよな。俺、こうやってずっと自分の子どもと何処かに行くのが夢だったし、今日それが叶ってかなり嬉しい。」

「そう?良かったわね。」

「頭痛は治ったのか?」

「うん、大丈夫そう。偏頭痛持ちって困っちゃうわ。妊娠中も飲んでたし、産婦人科で貰った薬だから大丈夫だろうけど、もうミルクだけに変えた方が良いのかしらね。」


二人きりの空間だとしても、話に出るのは子どもの事や子育てに関わることばかりであり、初めての育児に対する気がかりは日々増えてゆく。

二時間弱のドライブを終え宿へ到着すると、早々に二人はお待ちかねの温泉へと向かった。


「ここの貸切風呂、懐かしいわよね。」

「懐かしいって言ったって去年だぞ?…あの日はかなり寒かったからさ、あの後の俺は風邪ひいちまって大変だったわけよ。いい思い出だけどな。またするか?開放的で気持ち良かっただろ?」

「するわけないわよね。」


里美は冷ややかな視線を送る。

それは丁度一年前の話。

再会の後、再び距離が近づいた二人は久々の旅行でここの貸切露店風呂を利用していた。

人目のない場所で二人きり、裸で抱き合えば自然と愛し合い、男女の性器結合までには然程時間は掛からなかった。

その僅か半年後、自分たちが父と母になって居るとは思ってもみなかった。


今は亮二がいる手前、そのようなことをする雰囲気でもないし、里美の腕の中で気持ち良さそうに湯に浸かる亮二を眺める二人は幸せでいっぱいだった。

その後早めの夕飯を終え既に布団が敷かれた部屋へ戻ると、フカフカの布団へ亮二を寝かす。


「ふふ、亮くんお布団気持ちいいね。今日はベッドじゃないからパパとママの間でねんねだよ。」

「亮二も寝たし桃瀬、一人で大浴場行ってきてもいいぞ。俺、見てるからさ。」

「そうねぇ…そうしよっかなぁ。」

「ごゆっくりどうぞ。行ってこいって。」


里美はその言葉通り、一人のんびりと癒しの時間を満喫した。


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