露天風呂にて

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結婚前の数少ない二人旅。

寒空広がる春、それは子作り旅行でもあった。

温泉旅行3部作その1。

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互いに未婚ではあるが、子作りは同意の上であった。

親もいないし直ぐに結婚しても良かったが、今の二人にとってのハードルは年齢の割に積み上げすぎたキャリアであった。

だが、そんなに簡単に授からないもどかしさは、その時期を更に遅らせた。



「温泉でも行くか。」


修二のアイデアにより、日々のあらゆる気晴らしを兼ね今日の日を迎えた。

やって来たのは橋の上からの渓谷風景が美しい、関東ではかなり有名な温泉地。

四季折々の表情が豊かで美しく、その変化で有名なこの地だが、今日は季節外れの寒空が広がっていた。

仕事で多忙な日々から離れるべく、それでもこの時期はまだ休暇を取りやすく取得できた連休は二日間。

時期的に仕方ないとは言え、平和な日々が続いている今だからこそ、自由に有給くらい使わせて欲しいものである。


「今日泊まる所ね、貸切風呂があるんだって。どうする?」

「どうするって借りて何するかって事?そんなの風呂に入るんだろ?桃瀬イヤらしい事でも考えてたんじゃないの?」

「違うもん!そうじゃない、貸切風呂を借りるか借りないかってこと。」

「そりゃあ、どっちかって言ったらなぁ…」


車のハンドルを握る修二はニヤけながら目的地を目指し、里美の反応を面白がった。

日々仕事もプライベイートも忙しく、数週間に渡りデートはお預け状態になることもあったが、毎週金曜のお泊まりだけは二人きりの時間を満喫した。

抱き合い、愛し合い、お互いの満たされない思いをそこで埋め合った。

そして今日は思いっきり愛し合い、叶うのなら今日こそ里美の子宮に待機しているであろう命の源に、自らの種を授けたいと思っていた。



仕事は充実していたし、それに楽しかった。

周囲の誰もが、この二人が恋人同士などと思う事はなかった。

特に修二の場合、仕事も恋愛も器用にこなすとばかり思われていたが、まさか相手がこんなにも近くに存在していたとは周囲はその知らせに驚いた。

風貌から恋人の存在は予想できたが、まさかの授かり婚とはショックを受けた女性も少なからず存在したらしい。

それでも二人は自分たちなりに愛を育みタイミングを探り、子作りに励んでいたのだ。


「わぁ!お風呂いい香り。」

「だな。それにしても寒すぎないか…さっさと温ったまろーぜ。」


檜の香りが漂う貸切風呂、そこは日々の疲れを癒やす空間だった。

身体を洗い一刻も早く湯気の立つ檜の湯で温まりたい所だが、裸姿の彼女を目の前に冷静でいられるわけがなかった。

泡に包まれた里美の身体、触れたいその存在に手を伸ばすと遠慮なく強く抱きしめる。


「…どうしたの?身体、ちゃんと洗っちゃお?」

「寒いからこうしてたい。」

「甘えん坊さん、修二くん赤ちゃんみたいね。」


里美は優しくそのまま修二を受け入れ、そのまま時の流れに身を任せると、冷えた空気の中で感じる人の温もりは次第に存在の愛おしさを増幅させた。

キスを重ねる二人、それは何度も何度も繰り返し変化すると、修二の右手は左右の膨らみを掌に納めた後に上半身から移動する。

全身泡だらけの二人の絡みはスムーズで、それも快感を伴った。

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