第17話 夜叉蜘蛛

「見事!!!!アンナの仇を討ち取ったな!!!!」


「うっ!!??うぅぅ!!??ま、まずいわヴィラン!!!!産まれそう!!!!」


「任せろ!!手助けしてやる!!出産なんぞモンスターの血管を作るより簡単だ!!!!」


それから3時間後……可愛い女の子が生まれた。


「オンギャアーー!!!!オンギャアーー!!!!」


「ああ……私の可愛い子……」


愛しく我が子を抱く母の姿を見ていると胸にくるものがあるな。しかし、今回の失態は俺にある。彼女に謝らねばならない。


「……すまないジーナ。君達がさらわれたと聞いてすぐ探したんだが……もっと早く君達を見つけるべきだった。」


俺の謝罪に対し、ジーナは首を横に振った。


「あなたのせいじゃないわ。夫もあなたに感謝するでしょう。」


「そうか。そう言ってもらえて嬉しい。それとアンナの遺体だが、先程ストーンゴーレムから連絡があった。無事、村に送り届けたそうだよ。」


「そう、良かった。ねえ……ヴィラン?」


「ん?」


「この部屋にモンスターはいる?」


「いいや。なぜそんなことを聞く?」


「私は元冒険者だからわかるの。この部屋に獰猛な獣が潜んでいる。」


「なに?」


俺はテレパシーを使い、外にいるモンスター達を呼び寄せた。


(間に合うか!?)


大狼か大蛇かそれとも怪鳥ゴゲーゴか。

この世界の生物は油断できない。

人間だろうと魔族だろうと平気で襲いかかってくる。


「上から失礼する。」


突然、上から声が聞こえた。見上げるとそこには6本の腕を生やしたボロボロの白装束を着た骸骨……いや、女が天井に張り付いていた。


「なっ!?……心臓に悪いぞ夜叉蜘蛛!!」


……夜叉蜘蛛。

エキドナの弟子モルゲンのしもべの1人だ。

彼女は第一次聖魔大戦時、ミカエルによって召還された異世界転移者……勇者だった。

しかし、魔王との戦いに敗れ、拷問を受け犯され引き裂かれ殺された。その間、誰も助けに来なかったという。

その後、彼女はエキドナの死霊魔術でスケルトンとして甦った。


(彼女はエキドナの忠実なしもべだった。なぜ過去形なのかと言うともう違うからだ。エキドナは可愛い弟子に夜叉蜘蛛を信頼の証としてくれてやったと言っていた。 )


「フンッ!!」


夜叉蜘蛛が降り立ったと同時に4本の腕が背中に引っ込んだ。


「相変わらず便利だよねえソレ。」


6刀流だっけか。

千年もの間、異世界転移者やドワーフやエルフの猛者を殺して殺して殺しまくった。

魔法を使った所を見たことがないが……使えるのだろうか。

とりあえず、モンスター共には定位置に戻るようテレパシーで連絡しよう。


「……ヴィラン。私と一緒にドクロ岩の野営地に来て欲しい。」


「なぜ?」


「そこの指揮官があなたと私を指名している。」


「目玉食い……あのジェネラルオークか。君も呼ばれているということは……とうとう始まるんだな。」


「そうだ。エキドナ様もモルゲン様も目玉食いに借りを返さねばならない。戦争に手を貸す。ズラーン王国を滅ぼす。」


「えっ!?ズラーン王国!?それはまずいわ!!!!夫がいるの!!!!」


「なんだって!?」


「大口の商人の店があって……助けてヴィラン!!!!お願い!!!!」


「…………」


「悪いが……私は手を貸せない。」


「わかってる。なんとかしてみよう。ジーナ?ある程度回復したら転移魔法で村に帰れ。そして、ここには2度と来るな。わかったな?」


「え、ええ……わかった。」


「行くぞ夜叉蜘蛛。俺の手を。」


「わかった。」




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