第15話 対等
ああ……世界が明るい。
これは勝者の道……勝ち組への道だ。
素晴らしい……本当に素晴らしいよ。
なんて素敵な場所なんだここは。
「薄気味悪い場所だぜ!!」
「ああ、見ろよこの鳥肌!!あの洞窟の中にナニか邪悪なモノがいる!!……わかる!!……俺にはわかるんだ!!」
「入り口に見張りがいない……隠れて侵入者を待ち伏せているんですかね?」
「そうかもね……ステータスオープン!!!!」
僕の目の前にステータス画面が現れる。とりあえず、今の僕のレベルを確認するとしよう。
「おお!!なんですか!?太一様の前に現れたあのキラキラした板みたいなやつは……」
「へへっ!!驚いたかヴィラン!!あれこそ、選ばれし勇者のみが使用できるステータス画面というものだぜ!!」
「へぇ~ステータス画面?ですか。実に興味深い。それでステータスとは何なんですか?」
「……ステータスはステータスさ!!それ以上でも以下でもない!!わかったか!?」
「え?……すいません。わかりません。」
「……チッ!!バカが!!……呆れたよ。考える脳がねえんだなお前は!!わかった、わかったよ!!お前は黙って俺らの言うこと聞いとけ。いいな?」
「……はあ、わかりました。」
「火炎系、水系、中級レベル!!……力、素早さ、防御力……共に数値500以上!!……レベル100!!……これならいける!!……ヴィラン!!!!」
「はい!!なんでしょう太一様?」
「お前が先頭だ。僕達はお前の後ろについていく。これは僕の部下になる為のテストだ。頑張りなよ。危なくなったら助けてあげるからね。」
「はい、頑張らせて頂きます。彼女も一緒に連れて行っても?」
「ああ、君が望む通りにやるといい。危なくなったらそいつを使って逃げな!!その女より君のほうが大切だからね。」
「…………」
「あ?……救世主である僕に向かってなにその反抗的な目はさ、舐めてんの?殺すぞモブ女!!」
「……よくも……い、もうとを!!」
「プッ!!なにその顔ウケる!!殺れるもんならやってみなよ!!ぎゃははは!!」
「ぐっ!?……くぅ!!」
「ほら、しっかり立つんだ!!肩を貸してやる。……そうそう……さっきと同じように……しっかり立って……よし、それでいい!!ゆっくり歩こうな。では!!行って参ります太一様!!約束、忘れないで下さいね?」
「うん、もちろん!!行ってらっしゃい!!」
「うっ!!……うぅ!!」
ヴィランとモブ女はゆっくりとエキドナの巣穴と入っていった。それと同時に僕達はミカエルからもらったギフトスキルの1つ潜伏を使い2人の後を追う。
(ゴブリンでもオークでもトロルでも何でも出てくるがいい!!さぁ……僕の目の前のエサにどう食いつく!?期待しているよ魔族共……奴らの死に様を……残虐ショーを僕に見せてくれ!!!!いつもの通りに楽しませてくれ!!!!)
だが、その期待は裏切られた。
(なんだよもう!!!!全然現れないじゃないか!!!!)
つまらない……全くもってつまらない。
そう思いながらイラついているとヴィランが妙なことをし始めた。杖を地面で叩き始めたのだ。
(なにやってんだあのバカ……)
その時、カチッとスイッチを押すような音がヴィランのほうから聞こえた。
すると奴らの前方に落とし穴が現れた。
「よいしょっと。」
ヴィランは躊躇することなくモブ女を前方の落とし穴に落とした。
「きゃあああ~~~!!!!」
モブ女の悲鳴が聞こえなくなると落とし穴は閉じた。そして、ヴィランは先程までモブ女を支えていた腕を回し、次に首をゴキゴキと鳴らした。そして……
「ふぅ……ああ~~スッキリした!!!!」
そう言って呑気に歩き始めた。
「ふん♪ふふ~~ん♪」
(鼻歌を歌っている。周囲の警戒もせずに……いや、そもそもここに入ってからヴィランは警戒する素振りすらしていなかった。たぶんこれは……つまり……)
あいつは敵のスパイ……このダンジョンのボスの手先か。
「面白い!!!!」
おっと、思わず声がもれてしまった。
まぁ、大丈夫だろう。あいつは馬鹿だから自分の正体がまだ僕にバレたと気づいていない。
(なぶり殺してやるよ……このダンジョンに巣くうボスと一緒にね!!!!簡単には殺さないよ……フフフフフフ!!!!)
それからしばらく歩くと、ようやくボス部屋に到着した。
(けっこう広いな……それと、部屋の真ん中に玉座があるけど……肝心のボスはどこだ?)
そう思っていた矢先、ヴィランがなんと驚きの行動をした。手下の分際で玉座に座ったのだ。僕は潜伏スキルを解き、ヤツにこう言ってやった。
「ハハッ!!おいおい!!冗談はよせよヴィラン!!お前みたいな雑魚が座って良い椅子じゃないだろうそこは?」
「これで良いのさ。これでようやく対等に話せるね……太一君。」
「は……なんだって?ごめん、よく聞こえなかった。もう一度言ってくれる?」
「対等だと言ったんだよ太一君。今、この時、この瞬間、この場をもって……君と俺が対等となったんだ。」
「……ッ!?……ふ、ざけんなよてめえ!!!!」
立場を理解できていない。
こういう馬鹿が僕は一番嫌いなんだ。
「跡形もなく消し炭になるがいい!!!!ファイヤーーボーール!!!!」
「フンッ。」
しかし、消し炭になることはなく、僕が放ったファイヤーボールはボフンッと言う音と共に消えた。
「あり得ない……卑怯だぞ!!!!チート使ったな!!??ズルいぞ!!!!」
「まだ、気づかないかい?今、君1人だぜ?」
「えっ!?」
僕は慌てて後ろを振り向くと、そこには5体の化物が立っていた。
固そうな岩の体……身長は僕と同じくらい……顔には不気味な巨大な一つ目だけあって僕を見つめている。
理解した。モブ戦士達はこいつらに殺されたのだと。
「そのモンスターの名はストーンゴーレム。滅び山の泥を人形にして俺の魂と悪霊を少量混ぜ混んだ……ただそれだけのモンスターなんだがね。しかしこれがどうしてどうして結構役に立つんだよ。例えば、周辺の岩とかに溶け込んで侵入者に襲いかかるとか……」
「…………な。」
「ん?なにか言ったかな?」
言葉を交わすのも面倒だと思った僕は後ろにいたゴーレム達を一瞬で斬り伏せた。
「おお、すごい!!さすがだね太一君!!」
パチパチと拍手をするヴィランに僕は剣先を向けた。
「偉そうにふんぞり返りやがって!!!!跡形もなく切り刻んで殺してやる!!!!」
「対等だ……対等なんだよ俺と君は。そんな悲しいこと言うなよ。」
「それが一番ムカつくんだよぉぉぉぉ!!!!」
僕は凄まじいスピードでヴィランの懐に入り、斬りかかる。
「うおっ!?」
「いやあああ!!!!」
一文字斬り……この世界で学んだ剣術の1つ。
僕の剣撃でヴィランは横に真っ二つ……にはならかった。
「ふぅ~~!!危ない危ない!!」
「嘘だろ!?なぜ、僕の後ろに!!??」
しかも、かなり距離を取られた。
一体全体なにがどうなってるんだ。あの剣撃をかわせる訳がない。あり得ない。
「わかったよ。君の望み通り戦おうじゃないか!!!!」
やつは懐から泥団子を取り出し地面に投げる。するとその泥団子は液状となり広がり、そこから次々とストーンゴーレムが現れる。
「およそ30体……加えてコイツも投げる!!コイツはメタルゴーレム!!ストーンゴーレムの上位種だ!!きっと満足してくれると思うよ!!」
そう言って銀色のボールを地面に投げると、液状となって広がり3体の銀色のゴーレムが現れた。
「ふ~~ん。目は2つ……スレンダーな体格だね。防御力はなさそうだが……素早そうだ。で?こいつらだけで僕を満足させられると本気で……えっ!!??」
一瞬だった。
奴らは僕の懐に入り込むと僕の持っていた剣を破壊し、腕と足を破壊した。
「うわあああーーー!!??」
「さぁ、話し合おうじゃないか太一君。……対等にね。」
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