第13話 モンスターの作り方(後編)
「……ここが冥界、か。」
辺り一面氷だらけ……動いているモノもなく、生物らしい生物も見当たらない。寒くないのは俺が着ている死神のローブのおかげだろう。
『ク、クルシイ……!!!!』
「ん?おお……聞こえる聞こえる!!これが悪霊の声だな?」
これは悲鳴ではない。
もう少し待とう。
「…………」
『ギャアアア~~!!!!』
「……ん?おお!!やっとか!!」
俺はブレストレットに剣になれと念を込めた。
するとブレスレットは光輝き、剣へと変わる。
「で……自分の胸にこいつを刺せばいいのか?」
恐る恐る剣の先っちょを触ってみる。するとグニャリと曲がった。
なんと柔らかい。
こんなので俺の胸を刺せるのだろうか。
「……とりあえず、胸にこの剣を突き刺そう。」
胸を突き刺したが全く痛みはなかった。そして、その瞬間だった。背後からナニかの気配を感じた。振り向くとそこには人の形をした何かが立っていて俺を見つめていた。
「これが……俺の魂か!!」
女神の剣で俺の魂の一部を切った。するとその魂は上に行こうとする。
「おっと!!」
俺は魂を掴もうと手を伸ばす。しかし触れない。俺は咄嗟に冥界の杖を魂にむけた。
「……この感覚……魂を捕らえた!!」
杖を右左上下と動かす。魂も同じように動く。磁石のようなものだ。これならばユートピアに帰ることが出来るだろう。
「でも、この出てきた魂はどうすれば……」
とりあえず、戻れと念じた。すると魂は俺の体に戻った。女神の剣も同様に念じた。
「……元のブレスレットに戻った。便利だなぁ。」
では、帰るとしよう。
俺は冥界の杖で地面を5回叩いた。
「ただいま。魂、持ってきたよ。」
「おお!!思ったより早かったな。それじゃ、さっそくこのモンスターに魂を入れておくれ。」
「……ドラゴンか。わかった!!」
俺は魂をドラゴンに入れる。
『グ、グググ……ギギギ!!!!』
「体が痙攣している!?」
「呼吸するんだよ!!!!ほら!!!!」
エキドナはそこらにあった石をドラゴンの頭にぶつける。
『グギャッ!!??』
「お、おい!!エキドナ!!??」
「この役立たず!!!!この能無し!!!!呼吸をするんだ!!!!血流を促すんだよ!!!!」
『ギャオオオーー!!!!』
ドラゴンは雄叫びをあげるとそのまま死んでしまった。
「……失敗だな。また魂を作るかい?」
「いや、まずはこいつの身体を調べる。なんで死んだのか原因を探らなくてはね。」
そう言ってエキドナは自分の爪でドラゴンの腹を裂く。
「……成る程。やはり臓器の配置が原因だったか。」
「臓器の……配置?」
「ああ……もちろんそれだけで動くとは限らない。臓器の形、脳の大きさ、血液、魂の大きさ……色々教えてやるよヴィラン。」
「……長く、なりそうだ。」
「フフ……そんなに長くはかからないよ。私が持ち得るモノ全てをお前にくれてやる。」
こうして死霊魔術師になる為の修行が始まった。厳しくもあり楽しくもあり充実した日々だった。
それから10年後……
「ヴィラン……もうお前に教えることは何もない。あとは魔族達に認められるだけだ。」
「ああ。行ってくるよエキドナ。仲間を集めてまたこの滅び山へ戻ってくる!!」
俺は作った。何千何万というモンスターを。
俺は止まらんぞ。
踊ってやる。全てを手に入れてやるぞ。
そして……
「ああ……ミカエル。待っててくれ。必ず殺してやる!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます