第10話 一歩一歩確実に。

「エキドナ!!!!」


俺は倒れている彼女に近づき、血だらけの手を握った。


「ぐっ!!……くぅっ~~!!」


「胸か!?胸が苦しいのか!?」


「ハァ!!ハァ!!……ああ!!その装備……あんただったかい!!あそこの机の引き出しに薬が入っている!!あ、赤色の薬だ!!……持ってきておくれ!!」


「わ、わかった!!」


俺は机の引き出しを開ける。


「ええと……あ!!あった!!これか!!」


俺は赤い薬の瓶を開け、彼女に飲ませる。


「ゴクゴクッ!!……ふぅ。ありがとう。助かったよ。少し……やす、む……」


「あ、ああ……おやすみ。」


「……スゥ……スゥ……」


「……こうして冷静に見ると美しい女性だな。下半身は蛇だけど……ん?」


少し、おかしなことに気づいた。

なぜ、彼女の手は血だらけなんだ、と。


「……床にカラスの羽……ああ、そうか。」


聞いたことがある。魔族達はカラスを使って連絡を取り合っていると。スマホみたいなもんか。


「感情的になってカラスを握り殺してしまったって訳か。喧嘩相手のこと、後で聞いてみよう。俺にとっても重要な事だ。」


ようやく、ようやくだ。

ようやく、前に進めた。これからだな。

一歩一歩確実に、だ。


「なにも変わらない。俺の目標は……ミカエル。あの女の命だ!!」


それから数時間後……


「……はぁ……はぁ……ふぅ。」


「落ち着いたかいエキドナ?」


「……ああ、それじゃ早速借りを返してもらうよ……え~~と……名前はフランク、で良かったかい?」


「ヴィランだ。この姿の時はヴィラン。変装している時はフランクで。ややこしいと思うが、これも計画の内の1つでね。どうか、理解して欲しい。損はさせない。」


「……わかったよヴィラン。それでねヴィラン。冥界の杖は持ってきたかい?」


「ああ。」


「使えなかっただろう?私の前に出しな。今、封印を解いてやる。」


「わかった。」


「……よし!!これでいい!!使ってみな!!」


「いいって……杖を縦に撫でただけじゃないか。」


「いいから!!ほら!!母親から教わっただろ?杖底で2回叩くんだよ。床でも壁でも空でもどこでいい。」


「わ、わかった!!」


俺は床を杖で2回叩いた。すると、何本もの光る線が現れる。


「お、おお!!……これはいったい?」


「次元の裂け目だよ。なぜ、そうなのかは考えちゃいけない。そういうものだと、ただ知ればそれでいい。わかったね?」


「……わかった。」


「よし。じゃあ、その線を杖でさわりながら、こう念じるんだ。……ん~そうさね~とりあえず、この机の上に立ってごらん。頭の中でイメージするんだ。」


「イメージ?……え?」


それは一瞬の出来事だった。俺はエキドナの言う通りにイメージした。すると、俺は机の上に立っていたのだ。まるで今までそこに立っていたかのように。


「ふふ……どうだい?凄いだろ?」


「ああ!!こいつは凄い!!鍛錬すれば一瞬で敵の懐に入り込むことができるぞ!!」


「それだけじゃない。ちゃんとイメージする事が出来れば一瞬で遠い所に行くことができるよ。」


「そいつは凄い!!……あとは?これだけじゃないんだろ?」


「……勿論。着いてきな。あんたに死霊魔術を教えてやる。習得できれば、あんたは無敵の軍団を手に入れられるだろう。」


そう言って、彼女は歩き出した。


「……そいつは、楽しみだ。」


俺が欲しいのは軍団ではなく、武器兵器なんだが……仕方ない。思い通りに行かないのが人生ってもんだ。俺は彼女に着いていった。


(ないよりはマシだ。そう思うことにしよう。)


俺は歩みを止めない。道を作るのだ。

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