概要
主題、黒沢清「回路」。題名、「恢炉あおいの悪習」。
恢炉(ひろいろり)あおい、ぼくの妹は奇妙な習慣を身に着けている。
恢炉(ひろいろり)桃李、私の兄は部屋の壁の染みを気にしている。
――連続飛び降り自殺、ディープ・マゼンタ、擬茎、荒れ地の薔薇、血漿、死、熾天使、燃える蝶蛾、屍の中の私、変容、一切の希望を捨てよ爾等この門をくぐる者。
恢炉(ひろいろり)桃李、私の兄は部屋の壁の染みを気にしている。
――連続飛び降り自殺、ディープ・マゼンタ、擬茎、荒れ地の薔薇、血漿、死、熾天使、燃える蝶蛾、屍の中の私、変容、一切の希望を捨てよ爾等この門をくぐる者。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!不本意ながら、明日も継続する。
鬼才 黒沢清の監督作を擬人化するというコンセプトを元に執筆された本作は、2000年代前後の同監督の作品が含有する退廃的な世紀末仕草と官能的な筆致により形作られている。そうした意味で特定のモデルから記された物語として完成度は高く、狂気に傾倒した世界の中心でぐるりぐるりと手と手を合わせてインモラルな舞踊を繰り広げる兄と弟のドラマは興味深い。妄想、誇張、虚偽、初めから信用性を欠いた語り部の視点から語られる、世間を賑わせる連鎖的な飛び降り自殺の真相"らしきもの"に対する究明に感じられるスリルは一行に面白いと言える歩みだろう。卑近さに欠ける文章は要所要所で目が滑る──官能的でも耽美的でもない思弁的な言…続きを読む