あとがき――事の発端
はじめは黒沢清のホラー映画を萌え擬人化しようという、死語の営みのツイートがあって、CUREちゃん、カリスマちゃん、回路ちゃんなどと言われるようになる。リアル完全なる首長流の日ちゃん、なんていうのもいました。
以下のアーキテクト氏のツイートが閃きを与えた。
>回路ちゃんは同居しているお兄ちゃんの部屋のゴミ箱がいっぱいになると、インターネット回線から現れて、部屋のモノを片っ端から“無”にしてくれます。
残るのは、黒いしみだけ。
それに対して自分がツイートしたのが以下。
>(回路ちゃん、絶対ティッシュ嗅ぎながらエグいオナニーしてるよ)(絶頂と同時に爆発する、ビルが)
>実兄のザーメンティッシュ嗅ぎながら過酷なオナニーに勤しみ、絶頂のたびごとに一人を自殺させる、回路ちゃん
ゴミ箱→性処理の後片付けという連想は壺に端を発する20年以上の歴史を持ち、「過酷な」オナニーという枕詞は大韓民国産のソーシャルゲーム「ブルーアーカイブ」に由来する、いずれも非常に「インターネット」的なものである。こういうノリを自分は非常に憎んでさえいるのだが、骨身に染みた「ノリ」には抗えない。
アーキテクト・ヒトデ網両氏の反応。
>怪異じゃん
(怪異だよ)
>今日もどこかで回路ちゃんが過酷なオナニーをして人を殺している
妄想が脳の中で膨らみ、曖昧な形をとりはじめる。再び自分のツイート。
>実兄のザーメンティッシュをオカズにオナニーに励む妹、街で頻発する自殺騒ぎ、妹の慕情を知った僕は彼女の想いに応え、ふたりは結ばれるが………………これ行けるんじゃないか?
これが3月10日のことで、以来少しずつ書きためられたものが以下になる。ひとまず短編らしい長さにはなった。しかし、兄妹によって語られる独自の川崎の世界をより肉付けするためには、より多くの語りが必要だろうし、連続飛び降り自殺という恐怖のアイデアを生かすには、やはりもっと長い尺が必要であるように思われる。
* *
短編と長編とでは語りの構造も異なったものになる。
短編ではもっぱら妹はオナニーしてるくだりだけでいいぐらいのところがある、その方が語りの密度も上がるのではないか――とはいえ以下の拙作では妹のあおいさんも結構思弁的になる。
長編では妹による捜査の視点も加えて、兄と妹がそれぞれ自殺事件を追う中で多面的に事件を叙述する方が面白い――ふたつの視点のズレ、それぞれが語りに紛れ込ませている嘘や妄想、誇大報告。それらは読者をして異様な世界を二度三度と意欲的に歩かせるための格好の「謎」になる。
今回は短編です。どの程度ドライブ感の気持ち良さを出せているか。御笑覧あれ。
回路ちゃん 再生 @reincarnationCCQU
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