異形『怪』道中

作者 森林公園

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★★★ Excellent!!!


見事な情景描写。

品のある言い回し。
方言とかね。
年相応の言葉使い。

歌詞。
土地の人の視線。

研究所の質感。


超常なんてモノはなく、
そこにあるのは情感こもったヘドロのようなナニカ。


その生々しいまでの描写が、
肉厚な登場人物たちによって更に艶々した物語へとなってゆく。


そしてなにより50越えのオッサンを主人公に沿えるその勇気。
文中仄めかされるオッサンの過去も、鶏も。


ドロドロした昭和初期の香りが普通にエロい。



島根県と鳥取県の位置がいまだにごっちゃになる貴方におススメの小説です。
鶏だけに。

★★★ Excellent!!!

【物語は】
ある診療所を舞台に幕を開ける。選び抜かれた表現で時代らしさを醸し出しているのが、印象的な作品だ。主人公が開業医をはじめた経緯などが、モノローグによって描かれている。
時刻はとうに夜中を回っていた。そんな折、主人公の思考を停止させるように、扉を叩く音が。格子戸に映った姿、時刻が時刻であることもあり彼はゾッとするのだった。

【物語の魅力】
時代らしさに力を入れている作品。冒頭では、ある出来事が描かれている。匂わせで終わっているが、これは何かの伏線なのだろうか?
明確な何かは書かれていないが、冒頭に日付が書かれていた為、恐らく過去の出来事だろう。この出来事が以降、彼の人生にどう関わって来るのか気になる点である。

一話の終わりから続く二話。繋ぎ方が巧いと思う。この物語はミステリーを思わせる部分があり、ホラーとミステリーは方向性が似ているということに改めて気づかされた。
ホラーとは”何か分からない”から怖いと感じるもの。ミステリーとは”何か分からない”から好奇心をそそられるものである。

特にこの作品は、時代らしさに拘りを感じるため話にのめり込んでしまう。表現だけでなく、空気感も良い。時間に常に追われるような現代社会の雰囲気ではなく、勤勉、真面目といわれる日本ながら、融通が利くと思われる部分があるのでそう思わせるのだろうか。

【登場人物の魅力】
主人公の性格はとても分かりやすく言動に表れており、周りの者からも彼についての印象が語られている。よく出てくる登場人物は四人となるのだろうか。主人公が世話をするようになった少年は、とても変わっており、食対して執着がある。どんな理由からそうなってしまったのか、気になる部分だ。
もう一人は、主人公の部下であり、主人公の気性などについてもよく知る人物。だからこそ悪戯と呼べることができるのではないだろうか?
そのため作中ではコミカル… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

 RT企画から戻ってきました

 一章まで読ませていただきました。

 物語から漂う昭和の雰囲気、物語の不気味さ、それらが随所に伝わる内容でした。

 物語の中で出てくる方言が、またいい雰囲気を醸し出しています。

 たまにノンフィクションなのでないか?と感じさせます。


 これからも頑張ってください!

 





★★★ Excellent!!!

第一章を読ませて戴きましたが、文体や設定など、随所から明治・昭和期の近代幻想小説の香りが漂っていて、その手の愛好家には堪らない作品となっています。また、特に人物の描写は極めて自然でわざとらしいところが無く、実在の人物かのようにありありと想像されます。web小説だからと侮るなかれ、まずはご一読下さい。

★★★ Excellent!!!

 昭和初期が舞台、主人公が元軍医と元部下、その元軍医の書生…と、古き良き怪奇小説を思わせる舞台装置が、まず興味を掻き立てられます。

 扱う事件も、古い因習や伝承に根ざしつつも、人が作ってしまったものというのも、「昭和初期」という舞台設定から感じ競れる不安、不安定を感じさせられるものばかりです。

 しかし鬱々と感じない描写の妙が感じられます。

 登場人物の言葉、仕草が、舞台設定に相応しい情景を思い浮かべさせてくれました。アスファルトよりも土を、コンクリートよりも雑木林を、何よりも黒をブラックではなく漆黒だとイメージさせられる文体は、この物語に流れる伝奇の雰囲気を否応なく高めてくれていると感じました。

 モンスターや怪物が出てくるのではなく、人同士の繋がり、人の心の機微を描いたホラーは、人の心コソに恐怖やあー不安があるけれど、解決策も隠されているのだと思わされました。

★★★ Excellent!!!

 昭和初期の日本を舞台として、元軍医の忠治と彼の元部下で特務機関勤めの島根、書生の千太郎。彼ら三人が、異形にまつわる奇妙で猟奇的な事件に巻き込まれていく。読み進めるほどに人の執着とそれに絡まる怪異のありようが、這い寄るように姿を現す。
 怪異も自然も人の情緒も、濃密でいて鮮烈な描写でしっかりと書き切られている。事象も顛末もどこか物悲しいのに、不思議とすとんと胸に落ちる結末。
 土と血の香りが色濃くまつわる、絢爛たる伝奇ホラー。おすすめです。

★★★ Excellent!!!

RTより来ました。

読者を置いてきぼりにすることなく情報を小出しにしながらも、そこにきちんとした品がある作品だと思います。

作品の前提や説明せねばならないことが多く、読者との壁ができやすい時代設定ですが、架空の読者との対話を、非常に大切にされている作家さんです。

この作品に出会えたことを、嬉しく思います。
これからも頑張ってください。応援しています。

★★★ Excellent!!!

 元軍医の忠治と、その元部下の島根、そして書生として忠治の家で暮らす千太郎。島根の持ち込む「人ならざるモノ」が関わっていそうな奇妙な事件を巡る、昭和初期の混沌とどこか郷愁を感じさせる妖しくも美しい怪異譚。

 重厚な描写はもとより、飄々とした、それでもどこか闇を感じさせる忠治さん、彼に執着する俳優のように美しい島根と、忠治さんを慕うが故に島根を邪険に扱う千太郎の三人のやりとりは軽妙で思わずニヤリとしてしまいます。

 そして、各話しっかりと練りこまれた怪異譚は、ただの怪談では終わらず、人の闇と情念が深く関わる事件の謎が解ける時、儚い自然や海などの風景を織り込んでその悲しみなどの心の機微を表現する鮮やかな描写にうっとりとしてしまいます。

 少しずつ明かされる登場人物たちの過去や秘密が気になり目が離せません。
 幾重にも絡まる人と闇の怪しい物語。

 おすすめです!

★★★ Excellent!!!

主人公はおっさんで、
おっさんの主観で
おっさんが見て
おっさんが考えたことが、
物語として切り取られています。

読者は、
おっさんの見た世界を
読むことになるのですが、

その世界は、
素晴らしく、はかなげで、
素晴らしく、美しい世界です。

そして、無茶苦茶面白いです。