因縁、因習、因果と情念

 昭和初期の日本を舞台として、元軍医の忠治と彼の元部下で特務機関勤めの島根、書生の千太郎。彼ら三人が、異形にまつわる奇妙で猟奇的な事件に巻き込まれていく。読み進めるほどに人の執着とそれに絡まる怪異のありようが、這い寄るように姿を現す。
 怪異も自然も人の情緒も、濃密でいて鮮烈な描写でしっかりと書き切られている。事象も顛末もどこか物悲しいのに、不思議とすとんと胸に落ちる結末。
 土と血の香りが色濃くまつわる、絢爛たる伝奇ホラー。おすすめです。

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