古物店「鬼灯堂」の店主の朝日奈と、店に入り浸る少女・みつる。二人はそれぞれ秘密を抱えて、それでも穏やかなひと時を過ごす。 それぞれの望みはささやかなもの。互いの本心を明かさぬまま、薄氷の上で紡がれる逢瀬は美しい情景だからこそ、背後に横たわるおそろしいものを際立たせる。 端正で美麗な筆致で書かれる、人の感情の強さと鮮やかさ。するりと読めて棘のように刺さる、印象深い作品です。