第14話 特別編 ひな祭りはひなあられ食う日だろ!その2

 リーダー 「前回のあらすじは!!着物を着たら悪霊に取り付かれた!」

 謎の女性 「神の一手いっては目指さないぞよ?」


 俺の背後に現れた謎の女。黒髪に赤系統の着物、烏帽子えぼしだったか

 なんか昔の偉いヤツが付けてる細長い帽子。

 背後に弓、腰に刀ってことは相当昔の幽霊だな。


 「あー。平家ぶち〇してーでおじゃる」ふぁあ~


 腕を伸ばして大口開けて野蛮なこと言ってやがる。

 というか口癖なんだよ!!まるで”お百合丸”じゃねえか!!

 流石にプリンはないからな!!


 「誰かと思ったら寺子屋の。元気にしておったかぇ」

 「寺子屋ってことは・・・。あははは!じゃあ義百合よしゆり君か!

 しばらく見ないうちに大人になってまぁ」

 「合戦で打ち首にあったが今はこうして地獄で無双の日々じゃ」

 「「あははははは」」


 ゑ?なにこれ!同窓会のノリ?指さして確認した後、

 俺の肩を組んで懐かしむセンコーと義百合ってヤツ。


 「おっと紹介が遅れた。余は源 義百合みなもとのよしゆり

 平和を愛する平家狩人イエーガーじゃ」

 「平和って言ったよな!!!」


 なんだよ平家イエーガーって!外国語覚えて使いたがるとか中学生か!!


 「YO!奴らタイラー。余はホーマン。対立確率勝率確実♪」

 「うぜええええええええええええええええええええええええええええええ

 エセラッパーめ!!!」

 「流石余の依り代よりしろ。内に秘める勝利への渇望。

 それを叶えられない絶望。余が来たから掴むぜ希望♪」

 「普通に喋んねえと破るぞこの着物」ゴゴゴゴ

 「ひぃっ」


 アンタ武将だろ?なんで小娘の威嚇いかくに怯えてんだ?


 「冗談じゃ。ちと現世で暴れたくなってな。平家はどこじゃ?」きょろきょろ

 「あー平家じゃなくてサムライ自体もういねーぞ?

 刀ぶら下げてる時代は終わった」

 「よし!戦乱の世になるまでひと眠りするかえ」

 「切り替え早!!!」


 昔の偉人って凄いはずだろ?教科書訂正しろって!!


 「あー義百合君。命のやり取りはないけどスポーツ、

 昔で言う模擬戦はあるんだ。

 やってみるかい?スポーツチャンバラ」スッ


 そういって道具を渡すセンコー。なんか笑顔なのがムカつく。


 「首を取らぬ戦いでよいのだな?それでは緊張感がない。負けたら余が切腹で」

 「待て待て待て!俺の体で切腹したら死んじまうだろ!」

 「安心せい。余の器ならばここで折れることはない。

 だが負けるのは武士の恥ぞ!」

 「模擬って意味辞書で調べてこい!!というか寺子屋通ってただろ!!」

 「あー義百合君はどっちかというと剣術派でな。

 あまり成績は・・・。」

 「寺子屋のぉ!!!泣くぞよ!!止めなされ。止めなされ」


 あー授業そっちのけで剣の道に行ってたのか。

 センコーに出会わなかったら俺もこの馬鹿と同じルートだったのか


 「失敬な!リーダーはちゃんと勉強してます!成績はわっちより下だけど!」

 「頑晴がんばれ頑晴がんばれ♡」

 「フォローになってねええええええええええええええええええええ!!!!」


 俺のほうが切腹してえよ!!!!!!絶対しないけどそんな気分!!!

 

 「ふむ。肉体を借りるぞ白髪しらがみの娘よ。名は?」

 「・・・・今はリーダーだ。センコー倒すまでは名乗らねえよ」

 「上出来だ。余も借りがあるからな。征くぞ!!!」

 「おう!!!」

 

 体の中に何かが入り込む感覚、けれど拒絶どころか安心感がある。

 俺もどちらかと言えば戦闘狂だしな。

 目をカッっと開き!脳に焼き付けられた言の葉を紡ぐ!


 「白き先導者は道を示し!」  「黒の求道者は道を創る!」


 「「今交差せし運命さだめ覇道也はどうなり!」」


 「荘厳指導者リーダーズ・ロード!!」 「マエストーソ!!!」

 

 うん、悪くはないな。白が俺でアイツが黒。

 黒が道を創るっておかしくないかって?

 多分邪魔者蹴散らして歩くためじゃね?


 「あははは!!子供かよ!!!!」

 「子供だ!!!!!!!!!」


 センコーにはこのカッコよさが分からないらしいな。


 「分かりました!シユも幽霊と合体します!!」卒塔婆そとば構えー

 「どっから持ってきたんだよ!!!罰当たる前に戻してけって!!」

 「ちぇっ。これはシユ用のお墓なので日の目を見るのは早かったですね」

 「自分のやつかよ!!!」



 シユって子はお墓にある板状の木を構えていた。

 多分アニメの影響だな。


 そんなこと思ってるとサッカーボールが飛んできた。

 グランドの片隅だしボールなんてよく飛んでぇええええ。

 体が勝手に動く!!


 「ほっほっ。なるほど!この世界は!これで!蹴鞠を!するのかえ!」

 「つ、強者つわもの。皆の衆!強者がいるぞ!!

 グランドの片隅でござる!」

 「うげ!!やばい!ことに!なったぞ!!」


 リフティングしながらだと言葉が短くなっちまう。

 けどこの反射速度並みじゃない。

 俺よりワンテンポもツーテンポも速い。

 反射神経?違う!あらかじめボールの落ちる位置を読む未来予知か!!

 こいつは本能で察してる!!

 平家とやり合ってる根拠を行動で示しやがった!!



 「あー、リーダー君と義百合君。

 君達の全力だと相手の生徒ケガするから柔らかいゴムボール持ってきた。

 繰り返すが命のやり取りは禁止だ」

 「そうなったら俺が止めるから。んじゃいっちょやりますか!!」

 「たのもー!!!」


 昔の貴族も”たのもー”って言うのかよ!!!


 サッカー部に宣戦布告した俺達だが結果は見えていた。

 ゴムボールと右手のスポーツチャンバラ用刀ですべてをなぎ倒した。

 悔しいが俺単独では不可能な所業だ。


 「くっ!拙者達がこうも簡単に、お主リーダー殿ではないな」

 「なんか強い幽霊が憑依してんだよ。だからこれは不正。

 領土は取らないし部員の引き抜きもないただの遊びだ」


 地べたに横たわるサッカー部部長を横目に、

 俺も鍛えればこれぐらいできるのかと疑問に思う。



 「ぴんぽんぱんぽーん!あーあー例の如く新生徒会長鬼百合シユ!!

 今回は選挙は無しの1日生徒会長です!!

 現在サムライ幽霊が憑依したリーダーちゃんが戦いを求めています!

 ので!!

 全部活にお知らせをします!!

 ”強者討伐イベント”の開催です!!!

 最強の名を欲する勇者たちよ!!!いざ来たらん!グランドへ!!」


 「おおおおおおおおおおおお!!!!」

 「なんか始まった!!!」

 「また生徒会長殿が倒されたぞ!!!!!」


 ホントだよ。生徒会長というネームバリューを生かすために

 適宜革命起こすからなシユって子。

 放送室に乗り込んだ1日生徒会長のおかげで俺の周りに人が集まってくる。

 面白くなったじゃねえか!!!


 「寺子屋のぉ!流石にこの数は待ち時間が出るから!ちと手伝ってくれぬか!」

 「あはははは!久々に暴れるとするかな!」

 「リーダーお供するよ!!」

 「うふふふ♡」


 胃袋空腹連合とセンコーが加わり4人となるが、戦力差4対900ねぇ・・・・。

 それでも負ける気はしねぇなぁ!!!


 ー グランドの片隅 2時間後 ー


 「現世の若人わこうどは元気があるのぉ。正直危ないとこだった」

 「あはははは。流石寺子屋で負けなしの実力者。

 最後まで膝をつかなかったのは私と義百合君だけだな」

 「リーダー、マジキツイ」

 「猛駄目歩もうだめぽ


 当然借り物のチカラで満足する俺じゃない。今すべきことは!!!


 「おい幽霊!!ウォーミングアップは済んだだろ?俺と戦え!!」

 「お主では余の足元にも及ばぬ。それは自分自身が分かるはずじゃ」

 「くっ!!」


 悔しいがその通りだ。ぎゅっと握りこぶしを作るくらいには正論だ。


 「良きサムライを育てたな寺子屋の。

 世が世なら余を超えていたかもしれないぞよ」


 ”よ”が渋滞してるぞ!


 「今は剣術で稼げる時代じゃないからな。

 逆に義百合君が今の時代に生まれていたら落ちぶれていただろうさ。あはははは」


 んなことは分かってるさ。それでも俺はセンコーに勝ちたい。


 「・・・・もしあの時勉強していたら余は違った結果になったのか?」

 「まぁいくさで命を落とすことはなかっただろうな。

 けれどもそれじゃ仲間を守れない」

 「なら余の人生に悔いはないな!!!」

 「「あはははははは!!!」」


 大人組は勝手に高笑いしてるし。こう思い切りがいいというか。



 「寺子屋のにも会えたし、戦いも満喫した。

 成仏ってヤツか。もう現世にいれそうにない」

 「おい、アンタ色が薄く!!着物自体もか!!」

 「余は所詮着物に残った魂の残滓、いうなれば未練の燃えカス。

 それが叶った今消滅もやむなし」

 「待てよ!勝手に消えんなよ!!俺との勝負がまだ!!!」


 幽霊だから俺が手を伸ばしてもすり抜ける。

 悲しさより怒りと虚しさがこみあげてくる

 

 「唯一の心残りはそれだがお主も気づいているはず、

 合戦の後半に体の主導権を得て戦っていたのは誰だったかを」

 「んなことは分かってんだよ!!

 けどそれでアンタを超えたって証明にならねぇ!

 首洗って待ってろ!地獄だろうが天国だろうが!」


 だが幽霊は首を振る。戦えないっていうのか!!


 「・・・・地獄がどんなところか教えよう。

 持たされるのは刀1本。襲い来る敵はかつての仲間や親、そして恩師。

 偽りとは言え寺子屋のを切り伏せ続け、刺され、刺して、負けて。

 自害をしてもまた同じことの繰り返し。


 魂が真の意味で浄化されるまで続く殺し合いじゃ」


 「・・・・アンタがそんな過酷な世界で生きてたとはな。すまない」

 「暗い顔すんなって。あんたが寺子屋のの弟子で本当に良かったと思うぜ?」


 にっこりと笑った後光になって消えていく亡霊。

 どことなく俺っぽい口調になってたな。


 「ねぇリーダー。もしかしたらあの幽霊ってリーダーの生まれ変わりかも?」

 「え~!じゃあ勉強できないのもアイツのせいじゃん!!」

 「責任転嫁」


 生まれ変わりねぇ。

 じゃあセンコーを倒したいってのも俺の意志じゃなくて幽霊の・・・・。


 「りりりりりりりリーダー!!着物が消えたから下着姿」よだれダバー

 「うふふふ」ぱしゃり


 は?

 

 「はあああああああああああああああああああああああああ!

 成仏して着物事持ってきやがった!!いい話かと思ったのに!

 ひな祭りはひなあられ食う日でいいだろおおおおおおおおおおおおお」


 保健室へ全力ダッシュ!やっぱコスプレする日じゃねえって!!!



 あとがき


 ー 保健室横倉庫 夜 ー


 騒動の後生徒全員帰宅した後倉庫に立ち寄る。

 月明りに照らされた制服姿の少女。

 燃えるような赫灼かくしゃくのツインテールが風で揺れる。

 彼女は篝火、元気なようで人をあざ笑う様はピエロのようだ。


 先生 「今回の件君はどこまで知っていたんだい?」

 篝火 「さぁ?物に宿る魂でひと際輝いていたのを選んだまで。

    さりとて先生の知り合いだったとはねぇ。ニシシ」

 先生 「私に恨みがあるなら正面切って堂々と来ればいい!

    なぜ周りの教え子を巻き込む!!」

 篝火 「別に僕は先生個人に恨みなんてないし

    事実上他人さ。

    でも熱血教師に成りたいんだろう?

    その夢を叶えてあげるのが僕の使命。違う嫌がらせかな。ニシシ」

 先生 「人の夢をもてあそぶのは趣味が悪いな」

 篝火 「うーん。僕は善人だよ?いずれ大人になるにつれて

    現実を知り、悪い大人にだまされ、人生をすりつぶしていく。

    だから早い段階で軌道修正させてあげないとね」

 先生 「もう人の心なんて残ってないんだな」

 篝火 「違うよ?僕は人の夢を叶えるために作られた。

    ・・・・当然僕自身の夢を叶えてもいいよね?」

 先生 「はぁ。君がこの学園の生徒でなければ処理していたんだがな。

    まったく教師って職業はどうしてこうも貧乏くじなんだろうねぇ」


 本来対立するべき存在がこうして秘密裏に会話をする。

 この子も私も生徒たちにとって倒すべき存在かもしれないな。 

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