第15話 赤ちゃんプレイに必要な哺乳瓶だが!! 飲み口の穴をつまようじで拡張することをお勧めするぞ! コレ私の持論!!あはははははは
ー シユの過去回想 保健室 放課後 ー
「ったくテストは不正じゃねえっつーの。ダメ教師の嫉妬じゃねーの?」
悪態をつく白髪の少女、コードネーム・リーダー。
既存の教育を効率化した保健室先生の授業を受け、
テストは平均点越えを達成した。
”同じ授業なら内容が分かりやすい教師の映像データ使いまわすって。
あはははは”
保健室の先生のは怠惰であるため、優れた人脈に頼る。
当然既存の教師がこの方法を利用しないのは保身のため。
映像を流すだけならば誰でもよく、自分がクビになるかもしれないからだ。
「そういうなって。カンニングが疑われたなら
今からの試験で結果を出せばいいだけの話だ、あははははは」
緑髪で白衣な先生は高笑いして答えた。
「じゃ行ってくっから。胃袋空腹連合3人でな。決してサボりじゃねーぞ!」
ぴしゃりと扉が閉まり3人は試験会場に向かっていった。
サボりじゃないことは分かってるってと思いながら先生は椅子に座る。
そういえば彼女たちが来てからずっと賑やかだったと振り返る。
「先生無理してませんか?このところずっと張りつめてましたし」
「んー適度に息抜きしてるから大丈夫だって」
朱色のツインテールな鬼百合シユが問いかけるが普段のハイテンションではない。
心の底から先生を心配してる口調だ。
「ちょうどシユ達だけになりましたし、シユが先生に恩返しする時です」
「まぁ君がしたいなら止めはしないけどさ。私はもう幸せなんだ。
シユ君が支えてくれたからこそ今ここにいるわけだし」
「先生がシユの病気の進行を抑えてくれたからそのお礼ですよ?
今準備をしますので」
てきぱきと作業をこなすシユとベッドで横になる先生。
「さあ出来ましたシユ特製のミルクです。私の膝枕で召し上がれ♡」
粉ミルク入りの哺乳瓶を先生に差し出す。
胃袋空腹連合が来るまで続けられた儀式。
シユがベッドに座り太ももを先生に魅せつける。
久々であるため一種の恥じらいを見せる先生。
中敷きでダシを取ったラーメンが好きな彼女にもそういった感情はあるのだ。
”ほらココですよ?”自身の太ももをぺちぺちと叩き先生を誘導する。
まるで母親が自分の子供をあやすかのような甘い声。
理性のダムが決壊し先生は太ももの海へダイブした。
頭から伝わる太ももの感覚。
むにゅっとしていて筋肉質ではないが脂肪の塊ともまた違う。
彼女は病弱な為寮から自転車通学が許可されているため
一般的な生徒よりも太ももが太い。
押せば反発するその柔肌はあまり日に焼けておらず白く美肌だ。
先生に哺乳瓶を渡し頭をなでなでする。
大人にとって屈辱であろう年下に甘えるという行為。
それを完全な善意で押し売りするシユに対しノーを突き付けられないのが先生。
歪んだ関係性だがそれには理由があった。
「そういえば久々でしたね。こうして先生と2人きりで過ごすのは」
「ああ。君が保健室に担ぎ込まれてからずっとだったか」
哺乳瓶を口から離し普段の口調で先生が相槌を打つ。
「シユが病弱だからでしたね。
せっかくの新天地だからと張り切った結果倒れてしまいましたから。
これがシユと先生の出会い。今思うと恥ずかしいですね」
苦笑しながらシユは思い出を語っていく。
まるで自分の死地を悟ったかのように。
「衰弱しきったシユに手術を勧めたのが先生でした。
でもいろんな医者から言われたんです。
”もってあと半年”それは事実上の死刑宣告。
そのころからシユの両親の態度が冷たくなっていきました」
「私なりにベストを尽くしたつもりだ。せめてこの学園生活が終わるまでは
持たせるように腫瘍は取り除いた、しかし完璧な手術では!!」
先生の言葉を遮るようにシユは再び語りだした。
「そうシユも疑心暗鬼だったんです。
医者や両親から見放されたシユに救いなんてないって。
そんな中先生はこう言い放ったんです。
”私は宇宙人だからな。
医療ドラマで鍛えた腕で君の体も元どうりにして見せるさ!あはははは!”って
意味の分からない言葉で励ましてくれて。
まだシユに希望を持って接する人がいたなんて夢にも思わなかったですから」
涙ぐみながら語るシユに対し反論をする先生。
「しかし完璧な手術にはならなかった。身体機能の改善も見られず
ただ寿命を2、3年延ばしただけ。私に与えられた医者の才能に慢心した結果。
もし金儲けを考えずひたすらに医療の道を猛進していればあるいは・・・・」
「それではシユとの接点がなく死んでいましたよ?
先生がミーハーで熱血教師ドラマに影響されてなかったら
この学園に来ないのでシユの命はとっくに終わってます。
何故なら今日がシユの”命日だった日”なんですから」にっこり
「そうか、もうそんなに経ったのか」
シユの死刑宣告は入学前から始まっていた。
そして7月後半の今日こそ約束の日だった。
「それと同時にシユの誕生日でもあるんです。
暦ではなく精神的な意味での。
新たに先生と・・・・胃袋空腹連合ちゃん達と歩んでいく第1歩としての」
「確か神話でも1度死んで生き返った神がいたっけ?」
「シユは神様ではありませんが奇跡を起こしたのは先生ですよ?
シユの生死に関与したそれは”先生の槍”いえ”先生のメス”です」
神話で語られた武器を例え話で出され照れ笑いする先生。
「あれはただのメスだって。アレを武器にするのはアニメぐらいだ」
お互い笑って現状を楽しむ。
緩やかに破滅に向かっていく現状を理解しながら。
嘘ではないけれど真実ではない、オブラートで包んだ大人な会話を。
しばらくして。
「シユの勘違いでなければ夏休みに文化祭を開こうって提案は
シユの寿命を考えての事だったんですか?」
こういう時に予測を当てるのがシユの怖い所だ。
先生自身手術の結果に満足してないから
万が一を考えての事。
「さぁな。シンクロをするなら1番盛り上がるところでやりたいからな」
回答に答えず論点をずらす大人の回答。
本音ではなく建て前で返した。当然シユが納得するはずもなく。
「分かりました!もう1時間延長です!!
シユの誕生日プレゼント!!膝枕赤ちゃんプレイコース続行です!!」
「ちょっ!!いくら何でも横暴だって!!」
「シユに嘘をつきましたね?
人間って嘘をつく時左眉毛が無意識に上がるんですよ?」
「ええ!!ちゃんと対策していたはずなんだがなぁ」
「勿論嘘です!でも間抜けは見つかりましたよ」にっこり
シユに1本取られた先生は負けを認めて哺乳瓶のミルクを飲み始めた。
柔らかい太ももに身を預け、シユが頭をなでてくる。
本来誕生日プレゼントは貰う物であって与えるものではない。
けれどもシユも先生も不安だったのだ。
”2人で先生の誕生日を迎えられるかどうかに”
シユは先生程お金がなく、与えられるものなんて膝枕ぐらい。
先生はシユに人並みの人生を与えられなかった。
過去に罪悪感に苛まれふと涙を流していたのをシユに発見され
膝枕の伝統が強引にスタートした。
始めこそ抵抗していた先生もすっかり依存してしまった。
甘く温いこの関係に。
クローン故両親の愛を知らない先生と
両親から見放されたシユ。
シユの与える無尽蔵な母性の奔流に逆らうことなく
真正面から受け止める先生
これが赤ちゃんが受けていた愛情なのかと考える思考はすぐに消滅する。
聴診器だ。
シユは自身の心臓の音を先生に聞かせていた。
とくん、とくんと自分が救った命の鼓動が先生を安心させていく。
”先生は無理しすぎなんです”
”先生の敵はここにはいません。シユがずっと守ってあげますから”
”先生が与えてくれた命で恩返しするのがシユの役目です。
だからもっとシユに頼ってくれていいんですよ?”
”先生はもっと大きなことを成せる人です。だから今日ぐらいは休みましょう”
善意のささやきが自責の念で押しつぶされそうになっていた先生を救う。
たくさん泣いて、やがて眠りについた先生。
どこか安心した表情をで眠っている彼女の頭を撫で続けるシユ。
どちらも依存していながら自分は大丈夫と言い張る関係も
今この場においては意味をなさない。
ここは保健室。たまには先生だってミルクのように甘えたい日がある。
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