女の子同士も結ばれたい。側近君編

第6話 リーダーのイチバンであるために その1



 リーダーのイチバンであるために その1


 ー シユ部長の過去回想  6月中盤 ー


 保健室登校を始めて1か月が過ぎた。

 保健室の隣にある使われてない倉庫が部室になったけどちょっと狭い。

 卒業アルバムとかどこかの部活のトロフィーとか飾ってる。

 着替えはカーテンを閉めた保健室。

 いつになるかは分からないけど、わっち達も賞状とか貰えたらいいな。


 

 ー グラウンドの片隅 放課後 ー


 「あはははは、”第1回ルール無用メンタル強いヤツ大会”を開始するぞ!」 


 この先生は何に対して笑ってるんだろう?

 先日も”レギュラー争奪戦をやったばかりだ。


 結果は当て字副部長が  3戦全勝

 リーダーが       2勝1敗

 わっちが        1勝2敗

 シユ部長が       3戦0勝


 シユ部長は戦力外として、わっちは胃袋空腹連合でイチバン弱い。


 「先生!!横流しされた核ミ〇イルはありですか!!!」

 「シユ君!それ嘘じゃないと国際問題だから!!!!」


 シユ部長は何時も好戦的だし先生もそれを抑えてる。


 「先生、そろそろシユ部長に体罰しても誰も止めないけど?」

 「体罰?あははは。そんな旧時代の教育法なんて意味がないだろ?

 根性論で何とかなるほど世の中は甘くない。

 少し前に言ったはずだが水分を取って運動したほうが効率的だし、

 運動も休みを作った方が筋肉も成長するしな」


 わっちの質問に先生が答えた。

 水分補給も休息もリーダーが反発していたっけ?

 強くなるためには努力を惜しまず練習すべきと、

 対して先生はファイルを持ち出し書類を見せて論破した。

 変態だけど保健室の先生。わっち達より体の構造に詳しい。


 「ルール無用とは口論で揺さぶるってことだ。

 ただし君たちは高等部だから子供のケンカのような醜い争いは禁止だ」

 「俺達がことをするとでも?」キリッ

 「なお私も参加するぞ。あはははは」

 「はぁ?!!!ばっかじゃねーの!!!大人げない!!!!」

 「ほらそこ。イエローカードだ」スッ

 「ぐぬぬ」


 り、リーダーが早速反則を食らったよ。

 口喧嘩で先生に勝てるのなんていなさそう。



 ー シユ部長 vs 先生 ー


 「し、試合開始」


 当て字副部長が審判で勝負が始まる。

 

 「ふっふっふ。対先生用の切り札はシユの手中に有り!」

 「おいおい舐められたものだな?私に勝つなら10年は若返ってからだ!」

 「「「「うわぁ」」」」ドン引き


 先生以外の意志が統合された瞬間。


 「フッ。シユはシユの外履きをレベル1で降臨!

 不足コストは先生の人望から確保!!

 これが欲しければ分かりますよねぇ」ニィ

 「くっ、なんて卑劣なことを」

 「まずは右足。ほら取ってきなさい!ポチ!!」ポイ

 

 ゑ?ルール無用ってそういう事?

 靴よりも早く先生の体は動いた。

 先生は投げられた靴を空中で回収。口にくわえて戻ってきた。


 「ワン♪」はぁはぁ

 「よーしよしよし」頭なでなで

 「先生、場外。後1度場外で失格」ドン引き

 「なにその靴のニオイは堪能した。あと20秒は大丈夫だ」

 「「「「短かっ!!!」」」」

 

 先生は我慢という物を知らないみたい。


 「さ、再試合はじめ」

 「先ほど投げたのは右靴。そして靴は2個でワンセットです!!」

 「!!!!!」

 「シユの左靴が手元にあるのです!天才な先生ならわかりますよね?

 2-1の答えが!」ブン!!


 野球のピッチャーのように大胆に振りかぶって投げられたシユ部長の靴。

 放物線の頂点に達する前に先生が落下地点へ回り込んでジャンプキャッチ。

 テレビのかくし芸大会とかで合格点貰えそう。

 

 「ワン!!!」

 「そ、そこまで!場外2回でシユ部長の勝ちです」

 「し、しまったああああああああああああ」頭抱えー


 全力を出した選手には拍手を送るべき、

 けれどこの試合には称賛とか感動しないよ。



 ー 当て字副部長 vs 先生 ー


 「ええと第2試合です!!それでははっけよーい、のこった!!」


 シユ部長、それは相撲だよ。


 「先生はシユさんのこと好きですよね?」

 「確かにそうだがここにいる全員好きだぞ?」

 「そしてリーダーさんはあなたに好意を抱いています。純粋な強さに」

 「えっ!!!そーなの!!!」マジで!!!

 「訂正する。今好感度ゼロだ」げんなり


 先生はほんと強さだけはあるんだよ、リーダーの気持ちを揺さぶるほどに。


 「つまり浮気ですね♪例えば夜のベットで2人同時には相手できません。

 だっておしべはひとつですから」

 「ちょっと!!!!!私には男〇器は生えてないから!!!!」

 「しょうがないですから手のひらから生やしましょう。

 ちょうど2個ありますし♪」

 「怖いよ!!!ちょっと胃袋空腹連合の諸君!!

 こんな子野放しにしてたの!!!」

 「いや、あー、すまない」目線反らしー


 リーダーじゃなくても心が折れるよ。


 「でもシユ部長とわたしが加わったら4人です。

 胸からおしべを生やしましょう。

 これでおしべとめしべ的な何かがアレしてそれです」

 「ちょっ!!!!えっ!君達夜遊びしてる系かよ!

 流石に教師として見逃せないぞ」あせあせ

 「この話に耐性がないってことは・・・・もしかして先生ってドウ〇イ?」

 「どどどどって私女だから!!!!胸からアレが生えたら速攻切除するし!!」

 「可哀そうに。先生の子供になるものを見殺しにするなんて」およよよ


 涙の代わりに目薬を差す副部長をよそに先生が語りだした。


 「確かにな。私は医者の才能を持ちつつも金儲けに走っていた。

 私しか助けられない目の前の命を犠牲に未来の子供たちの幸福を願った。

 せいぜい1日2人ぐらいしか助けられない医者よりも

 資産家になって金で子供たちに衣食住を提供して救うほうを選んだ。

 暴論でいえば”命を救う効率”を重視した。


 目の前の現実いのちを放棄して明日の未来いのちをな」


 膝を落とし四つん這いになりながら懺悔の涙を流す先生。

 この人にも罪悪感という感情はあったんだ。


 「先生?隙あり♪」ぽん

 「は?」

 「勝者!当て字副部長ちゃん!!!」

 「先生、思い出に浸りすぎです」にこり

 「よし分かった!明日道徳の抜き打ちテストだ!

 普通あの場面で攻撃しないだろ!!!」ぷんすかー

 「センコー、流石に職権乱用と負け惜しみだ」


 リーダーの意見が100正しい。


 その後は番狂わせもなく、

 当て字副部長     4戦全勝

 先生         2勝2敗

 リーダー       2勝2敗

 わっち        1勝3敗

 シユ部長       1勝3敗


 お手洗い通いから解放されたのと、

 リーダーとわっちの思考が読めるので当て字副部長が最強。


 それに引き換えわっちは弱いままだ。

 このままだとリーダーから捨てられてしまうかも?

 強さに囚われた彼女を振り向かせるにはチカラを付けるしか!


 そんな思考を遮ったのが先生。


 「あー、みんなお疲れ様だ。結果を見て自分の弱さを痛感してくれ。

 それはそうと今は6月中盤。

 テストも終わってウキウキなところ悪いが・・・・・・・・


 私の保健室に夏休みはないぞ?あははははは」


 夏休み。学生にとっては約40日ある楽園。

 それを踏みにじる大人が此処にいた。

 教師は・・・・大人は勝手にルールを作るから


 わっちはこんな世界が大嫌い。 

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