第4話  バーサーカー・シユ君


 ー シユ君の学園回想 保健室 朝 ー


 「おう、邪魔するぜ」扉ガラァ


 考え直す時間を与えたのに来てしまったか。

 学園の不良生徒三人衆、胃袋空腹連合がな。


 「どうした、朝早くから?

 牡蠣かきを生で食べたならそりゃノロウイルスだ。

 インフルエンザと同じく学園は堂々と休めるぞ?」


 「そうじゃない。あれから3人で話し合った。

 手術の件もあるし教師共は俺達を邪魔者扱いしてる。

 納得のいく答えが出るまででいい。頼む!!!」

 

 頭を下げられたらしょうがないか。

 このまま放っておいたら保健室占拠しそうだし。


 「わかった。書類は用意してあるからそこに記入してくれ」

 「ヤケに用意がいいな?」

 「相手の気が変わらないうちに交渉を進めるのが営業職ってもんさ」


 昨日の内から部活で残っていた先生方に承認印貰ってたからな。

 厄介者を引き取ってくれると思って皆快くサインしていた。


 「じゃ、学園長に提出してくるから。

 今のうちに机とか保健室に移しておけよ?あはははは」


 まあこれに関しても交渉済み。

 私に失敗経験をさせて萎縮させる気だろうが相手が悪かったな学園長。


 ー 保健室 数十分後 ー


 「全ての手続きが完了した。これで君たちは私の管轄になる訳だが、

 保健室には保健室のルールがある」

 「「「ごくり」」」

 「本名ではなくコードネームで呼び合う事」

 「コードネーム?」

 「そうだ。君ならリーダー君、そして側近君と当て字君だ」

 「いや書類に本名書いてあるが?」

 「・・・・その名前では辛い事を思い出すだろ?

 だから新しく生まれ変わるための儀式だ」


 ふむ、としばらく考え込むリーダー君。導き出された答えとは!


 「なるほど、金曜映画ショーで見たな。

 名前を奪って労働させるやつ」

 「そ、そんなことないよー」棒読みー

 「り、リーダー!サボると豚にされちゃう!!!」

 「


 バレてる!!!

 

 「メンバーが集まったところで!シユは保健室の今後を考えました!

 そこで!部活動を作ります!!」

 「「「「は?」」」」


 いや、脈略が読めないぞシユ君。


 「このまま帰宅部では印象が悪くなるばかり。

 でも先生と離れ離れになるのは嫌!だから先生が顧問の部活動です!!」

 「直訳するとシユ君は放課後も私と居たい。

 君達も保健室登校の一員なら協力してくれ、だそうだ」

 「すごい翻訳の仕方だな。だがシユってのは本名じゃないか?」

 「シユはシユなので!」

 「・・・・先生せんこーあんたも苦労してるんだな」引き気味

 「まあな」遠い目ー


 シユ君の鶴の一声ひとこえで部活動を作ることとなった。

 部活の顧問か~。私ってフィーリングで教えるタイプだからな~。

 ちゃんとした理屈での指導ってできるかな~?


 ー 円卓会議 ー


 それぞれの学習机を円状に並べて会議が始まる。

 雰囲気を出すために私は肘を机に当て両手で口を隠し、サングラスをかける。

 テレビでよく偉い人がしてるポーズだ。

 「り、リーダー。あれって」

 「ああ、間違いない。また何かに影響されてる」

 「帰理隊かえりたい


 「これより新規部活動会議をはじめようか」

 「ではシユから!先生とリーダーちゃんと側近ちゃんがカッコよかったので!

 スポーツチャンバラ部でいいと思います!!」

 「待て!あれは合気道を合わせた変則での戦いだ!

 本当のやつは防具とかちゃんと付けて戦うもので」あせあせ

 「なら合気道部でいいんじゃないか?俺も気になってるし」

 「ぐぬぬ」

 「むむむ」


 リーダー君とシユ君の意見は平行線だ。

 別に空いた時間で私が別の教えればいいんだけどな。


 「そこの2人が白熱するのは構わないが

 側近君と当て字君の意見も聞こうじゃないか?」

 「無論リーダーがいる方!!」

 「ええと、私もやってみたいのはす、スポーツチャンバラの方。

 なんか楽しそうだったから」

 「当て字・・・・先生せんこー俺には合気道も教えてくれ!

 2足のわらじになっちまうが!それでもこいつらを守れるぐらい強くなりたい!」

 「ん-。まあどっちも瞬間動作が競われる競技だから無駄にはならないぞ?

 あと合気道はこう、受け身の練習から入るから新規に進めずらいんだ」

 「受け身?攻撃ではないのか」

 「相手の勢いを利用する前に自分の体を自在に動かす術を身に着けるんだ。

 見ていて地味かもしれないが基礎中の基礎だから妥協はできない」

 「分かった。側近もスポーツチャンバラでいいな?」

 「勿論」

 「判決!万票一致でスポーツチャンバラ部結成!!」ガンガン


 そのハンマーどこから持ってきたんだ?シユ裁判長


 「部申請書類取ってくる。ったく忙しくなってきたな、あはははは」

 「そうはいいつつ楽しそうだぞ、あの先生せんこー」フッ

 「シユにもそう見えます」にこり



 ー 数分後 ー


 「ごめん!人数と実績の面とマイナースポーツという観点から

 ”同好会”スタートだ」

 「まあ野球とかサッカーに比べたらな。

 俺もスポーツチャンバラってあの場で初めて知ったし」

 「人数なら簡単です!!〇致しましょう!!!」

 「シユ君何言ってるの!!!」

 「ボッチの帰宅部を1匹誘拐ゲットだぜ!すればいいんです!」

 「拉〇も誘拐も本質的に一緒だろ!!」


 よかった!リーダー君ツッコミできる子だ!


 「むー!リーダーちゃんめ!同志先生!この人密偵です!スパイです!

 校庭の木を数える仕事に就くべきです!!」」

 「こらこら、物騒なこと言わない。あと人間の単位は匹じゃないぞ」

 「と、ところで正式な部活と同好会の違って?わっちには同じに見えるけど?」


 側近君が質問をぶつける。ナイスだ!この子も空気読んでくれるタイプ。

 無理やり流れを変えてくれた。


 「やることは変わらないけど予算配分や部室、あとは練習場所の優遇。

 そして面接の際相手に舐められないところか」

 「新参に体育館を貸してくれるほどバスケやバレー部は甘くないと」

 「向こうも練習したいだろうしな」


 比較的他の部活と被らない日曜日に保健室メンバーは来てくれるかな~。


 「わかりました!道場破りしましょう!たのもーです!」

 「いや私達4人だからな。バレーもバスケもできないって!!」

 「先生入れたら5人です!」

 「あの手のスポーツってベンチの選手と入れ替わるからな。

 仮に試合したとしてメンバー交代で疲れてない選手が出て来た時点で

 私達に勝ち目がない」

 「ならスポーツチャンバラで!!」

 「いや勝負受けないし!!

 道場破りしておいて別の種目受けてくれる聖人はいないから!!」

 「しょうがない!剣道部と卓球部とバトミントン部に殴り込みです!」

 「剣道の竹刀って防具つけてても当たると痛いぞ?」

 「・・・・。今日の所は勘弁します!!!!」

 「弱虫」


 当て字君が普通に罵倒した!!!この子毒舌だ!!


 「とにかく体育館は結構な勢いで使われてる。

 外でグランドの片隅にマット敷いて練習するしかないさ」

 「分かりました!野球部のグランドを占拠しましょう!!!」

 「先生せんこー。シユって子はなんで好戦的なんだ?」

 「平和しかしらないからだな。当人には悪意がない」

 「刃朝赤バーサーカー


 ふとチャイムが鳴る。1限が終わったか。


 「顔合わせも済んだし勉強の開始だな!

 文武両道を目指してこその部活!

 リーダー君。合気道は心を研ぎ澄ませることで強さを発揮する。

 苦手な勉強も克服しないと強くなれないぞ?」

 「うう。善処する」


 さてどうしたものか。部活の顧問なんかやったことないぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る