序盤の感想ですもし日本が南北に分断されていたら——そんな仮定のもとに、戦後の混乱と人々の葛藤がリアルに描かれる作品です。冒頭の列車内の描写は静かでありながら緊迫感があり、「北」へ向かうという行為が持つ重みを感じさせます。社会の変化に翻弄される人々の視点が丁寧に描かれ、特に「映画」という娯楽を通じたプロパガンダの影響が印象的です。自由とは何か、支配とは何か——登場人物の心理とともに読者にも問いかけます。決して英雄ではない普通の人々が、それぞれの現実を受け入れ、あるいは抗いながら生きる姿が胸を打つ作品でした。
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