1-16 そっちの方が似合うって話

四聖星シエルの四人全員が集まったところで、改めて自己紹介しあおうとラティが提案した。


トップバッターはラティからになった。




「オレはラティ・オラージュ。サッカー部だ!異能は『瞬足』、まあ、異能を使わなくても元々速く走るのは得意だぜ。ラティって呼んでくれ!」


と整えていない黄色髪に緑色の瞳のラティが言った。「次はアシュレイっ」




「えっと、僕はアシュレイ・トーネソルっていいます。『読心』の異能持ちで、他にも占いが得意です。吹奏楽部に入っていて、家族からはアレクって呼ばれたりします。」


と、おどおどした様子で黒髪に青い瞳を覗かせるアシュレイが言った。「次、誰か……」




「俺はルーク・フォルス。異能は滅多に使わないけど『透視』。バスケ部。」


と淡々とした口調で、手元の本に視線を固定したまま茶髪に紫色の瞳のルークが答えた。「……」




「わ、私はエレン・シャルムです。美術部に入っていて、異能?は多分『具現化』ってやつです。エレンって呼んでください……」


と語尾に近づくにつれて声の音量が下がりながら、薄ピンク髪に黒色の瞳のエレンが恥ずかしげに言った。






四人の自己紹介がものの数分で終わってしまい、アシュレイたちは暇を持て余した。


自己紹介途中の反応で大体それぞれがどんな性格なのかが読み取れた。


一番、首を縦に振って興味津々そうに聞いていたのがラティ。

アシュレイとエレンは小さく頷きながら聞いていた。


ルークはと言うと、自己紹介より本の方がよほど面白いのか、一度も顔を上げることなく言葉を片耳から入れてもう片方の耳から聞き流していた。




「ねぇーアレクぅ。んーやっぱアシュレイ?」

ラティがだるそうに月型のテーブルにもたれかかってアシュレイに言った。


「オレ的にはアシュレイの顔はアレクじゃなくてアシュレイなんだよねー」

「……どゆこと?」

アシュレイが眉を顰めて彼に問う。




「アシュレイって名前の方が似合うって話」


ラティが両腕を頭の後ろで組みながら天井の星柄を見て言った。

アシュレイは感嘆の息を漏らしながら静かに照れた。「そんなこと、言われたこと無かった……」




アシュレイは最初ラティと会った時、少し生意気で騒がしい人だなという印象を持った。

しかし、会話していくうちに、ラティから出される言葉の真っ直ぐさに少しだけ尊敬するようになっていた。






「アシュレイ」とラティが緑色エメラルドグリーンの瞳を彼に向けて言う。


「なっ何?」


アシュレイはどんな返答が返ってくるか少し期待した。



「……暇なんだけど。」



予想の斜め上の回答が返ってきて、思わずアシュレイがこけた。


「それ僕に言われても……」

アシュレイは苦笑いした。





ラティは「ヒマ!ヒマ!」と駄々をこねる子供のように脚をバタバタした。



──────やっぱりラティはラティか。


アシュレイが小さくため息をつく。




エレンを見ると、家から持って来たらしいスケッチブックに何やら絵を描いていた。

ルークは引き続き難しそうな分厚い本を静かに読んでいた。



──────個性的な人が集まったなぁ……


はてさてこの個性が吉と出るか凶と出るか、この時の四人はまだ知り得ないのであった。





「最初はグー!!」

まだ声変わりしていないラティが急に大きな声を出した。


「えっ」

アシュレイが戸惑うのを気にも留めずにラティは言葉を続ける。


「ジャンケンポイッ!」


ラティはグーを出し、アシュレイはチョキを出した。

「あっち向いて~」

「えっえっ」

「ホイ!!」

アシュレイは勢いで上を向いた。ラティも上を指していた。「勝った♪」

ラティはヘヘッと笑った。



「最初は」

ラティがもう一回言おうとすると、

「うるさいっ」とルークがラティを睨んで一言で叱った。


ルークが突然大声を出した為、エレンも肩をビクッと揺らして怯えた目をルークに向けた。

ルークは自分が大声を出したことに気付き、はっとした表情をした後すぐに視線を本に戻した。「もう少し音量下げろ」


エレンは他三人の様子を確認してまた絵を描きはじめた。





ラティとアシュレイがびびって固まっていると、コンコンコンと誰かがドアをノックした。

アシュレイが「はーい」と立ち上がりながら返事をするとドアが静かに開き、女王様が顔を出した。


アシュレイとラティとルークはすぐさま立ち上がり、礼をした。

ちらっとエレンのほうを見やると、エレンは集中している様子でまだ絵を描いていた。


ルークが低い声で「エレン」と呼びかけると、彼女はスケッチブックから目を離した。


「わっ」

やっとエレンは女王様の存在に気付き、慌ててスケッチブックを閉じて立ち上がり、礼をした。



「もうすぐ始まるからスタンバイしときましょ」

女王様は両手を合わせて微笑んだ。








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