人を殺した。誰かのために、生きていけるのだろうか。

あらすじは割愛する。

この作品は、殺し屋ナイツと彼と関わる女子大生サン、そして一風変わった殺人動機をもつ依頼者たちの物語でまとめられている。

小説で描かれる殺し屋、と一口に言ってもその種類が多様であることはご存知であろう。
暴虐な殺人快楽者がそうなることがあれば、それ以外に生きる道がなかった哀れな青年ともあろうか。

この主人公であるナイツは、どちらかといえば後者にあたる存在だ。

だが、読者が惹かれるのは「哀れな殺し屋」ではない。

このナイツ、彼の殺し屋としての腕前は確かであるが、それ以上に読者が心惹かれるのは彼の細やかな心情と葛藤、そして誰よりも人間味あふれるその性格にあると思う。

「生と死」について「死」を仕掛ける側でありながら「生」に対して誰よりも情があふれる彼だからこそ、読者は心惹かれ、感動し、引き込まれてゆく。

没入感も、全体の話の構成も、どこをとっても魅力の欠くことのない作品です。

ぜひ、ご一読を。


追記。
ただいま、すべて読んできました。

ひとこと紹介文では「誰かのために、生きていけるだろうか」としましたが、必ずこの話の最後ですべてが腑に落ち、二人を愛おしく思っているに違いないと思います。

生きていること。
誰か、とともに。

他者を殺し、己の生命を護っているナイツであるから、たどりつけるその答えに、ぜひ注目してほしいと思います。

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