殺したくない殺し屋と女子大生。凄惨な世界で出会った優しい二人の物語

異能を持つ殺し屋ナイツが女子大生のサンと出会い、成長していく物語です。

主人公のナイツは凄惨な過去を持ち、やむを得ず殺し屋になった背景がある為、本当は殺人をしたくありません。けれども彼には殺し屋を続けなければならない事情があります。
毎回暗殺をする度に彼は酒に溺れ、遺されたターゲットの家族のことを思って涙します。殺し屋の世界は孤独で、いつ自分も暗殺されるかわからない世界。世界観と主人公のバックグラウンドがよく練られている為、読者はナイツに感情移入し、応援したくなります。

そんな殺しの日々を送ってきた彼の前に、ある日女子大生のサンが現れます。いささか強引すぎるくらいに彼の元へ転がり込み、グイグイ距離を近づけてくるサン。最初は胡散臭がっていたナイツも、彼女との関わりを通して次第に彼女の存在が大きなものになっていきます。

だけど殺し屋の世界はいつだって残酷なもの。次第にサンの秘密や彼女の背景が明らかになってきて、物語は大きく動き出します。
ナイツの心情の動きを描き出す構成によく練られたストーリー、常に生死と隣り合わせの緊迫した攻防戦とカタルシスを得られる熱い展開。
10万字ちょっとという短い物語なのに内容は濃密で読了後の満足感がとても高いです。

優しく孤独な殺し屋の物語。一読の価値ありです!

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