「抱きつき魔令嬢」から幸せな女の子へ。彼女の運命を変えた愛と勇気の物語

とても面白かったです!ラストが気になって一気読みしてしまいました!

この物語のかなめとなるのが【鍵】の存在。
これは魔法と言い換えてもいい特殊な能力で、貴族にしか使えません。ですが、【鍵】は第二子までしか継承されない、収納魔法と転移魔法はどちらかしか使えない、などの制約があります。この【鍵】が文字通り物語のキーとなってきます。

ヒロインのロッテはなんと幽閉されたシーンから始まるというなかなかの不遇ぶり。
両親が横領の罪で逮捕され、家宅捜索の際に見つけられたロッテはボロボロの状態でした。
運よく魔法師団長のギュンターと副官のフーベルトに救われたロッテ。そして彼らは彼女の特異な能力を知ることになります。
それは「他人を転移させられること」。転移魔法は通常自分自身だけしか転移させることができず、これまでにも他者を転移させることがきたという話は聞いたことがありません。この能力を買われ、ロッテは魔法師団に入団することになります。

ですが、人を転移させるためには相手に抱きつかなければなりません。
そんな彼女についた悪名は「抱きつき魔令嬢」。誰それ構わず抱きつくことで、ロッテはあらぬ噂を立てられます。それだけではなく、彼女を幽閉に追いやった両親や、ギュンターの婚約者候補である令嬢の嫉妬による企みに巻き込まれ、これでもかというほどつらい試練が次々にロッテを襲います。
ですが、そんなロッテを支えてくれるのが魔法師団長のギュンター。恋愛に関してはやや疎い一面もありますが、有能で【鍵】を持つがゆえに不遇な道をたどらざるを得ない者たちを救おうと考えている優しい男です。
そんな彼の優しさに触れながらロッテは少しずつ強くなっていきます。ギュンターの副官であるフーベルトもロッテに想いを寄せながらも彼女の大きな力になってくれます。

読み進めるに連れて序盤に出てくるさまざまな伏線を綺麗に回収し、パズルのピースがピタピタとはまっていく読み心地は爽快。重厚なストーリーの中で魅力的なキャラクターがストーリーを彩ります。
登場するキャラクターもそれぞれ個性的で、特にギュンターとフーベルトのやり取りは大事な場面にも関わらず時には笑ってしまうほどの心地よさでした。二人とも同じくロッテを愛する男たちですが、お互いに信頼し合っている仲なのでむしろ三人でいるのもいいなと思ってしまうほどです(笑)
隣国のイエンス王子も、隙あらばロッテを狙おうとしてくる素振りを見せつつも有事の際は活躍してくれるカッコよさ。彼も交えた恋模様をまだまだ見たいなんて思ってしまいました。

とても10万字未満でつづられたとは思えないほどに濃密で読み応えのある本作。まだまだ物語の余韻を感じさせつつ迎えた大団円は胸が温かくなりました。
不遇な運命から幸せを掴んだ一人の少女の物語を、どうぞ最後まで見届けてください。

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