第15話 AI庭師誕生!

 世界には名庭園とよばれる庭がたくさんある。

 フランスのベルサイユ庭園、スペインのアルハンブラ宮殿の庭園、茨城県の偕楽園、石川県の兼六園、などなど。


「どれも雰囲気がちがうけど、大丈夫なのかな」

 バラが咲き乱れる庭の次には、燈籠の置いてある渋い庭。と思ったら今度の庭では、噴水が吹き上げている。こんなタイプのちがう庭を次々見せられて、「美しい」とは何かを理解できるんだろうか。

 さすがのコンピューターでも、混乱しないかな?


「昔のここの写真も何枚か入れてるから、大丈夫。そこからおばあちゃまの趣味を理解してくれるはず」

「そっか。じゃあこっちは、細かい作業ができる準備をしてやらなきゃね」

「そうだったな。レオ、ちょっと待っててくれ」

 学は、ブルーベリーパイのおまけでもらったパーツの山を持ってきた。

「アームの先に、ロボットハンドをつけよう。そうすれば草をかき分けたり、ねらった草だけを抜いたりといったこともできるようになる」

 学はパーツの中から、部品をガサガサと探す。

「でも、あのアームは動かないよ?」

 前も説明したように、今つけているのはただの飾りだ。

「動くだろ。線をつないで、リーナにプログラムを書いてもらえば」

「あ! そうか!」

 さすが電子工作!


「でもリーナは、いそがしいんじゃない?」

 リーナは画面から目をそらさずに言った。

「平気。それに、これは必要なことだから」

 ばあちゃんとマシンの両方の希望を叶えれば、空間のゆがみは解消されるはず。がんばるっきゃない。

 それではと、レオははりきってゴーグルをはめた。

「じゃあ、まずは設計を始めますか!」

 7つ道具を入れたカバンからえんぴつを出すと、学と一緒に、回路の設計をし始めた。



 カランカラン…‥

 設計図の上をえんぴつが転がった。

「がんばれ! もう1回」

 横たわるえんぴつを拾い上げようと、ロボットアームが伸びていく。

 ウイィィィン、ウイィィィン。

「まるでクレーンゲームを見てるみたいだ」

 上手く拾えるか、落っことしてしまうか。

 はらはらしながら出来具合を見守る3人の前で、スーパー・ソード・マシンはやっとえんぴつをつかんだ。

「やった!」


 落とさないように、クククとえんぴつを持ち上げるマシン。するともう1つ、ナイフを持った別のアームが伸びてきた。そして……

 シュシュシュシュシュシュ!

 なんと、えんぴつをけずった!

「おおー!」

「見て、あの芯の先!」

「完璧とがってる!」

「カンペキ! カンペキ! パーフェクト!」


 しかしまわりはえんぴつのかすだらけ。すると今度は、ちりとりとほうきを持ったアームが伸びてきて掃除をした。

 シャシャシャシャシャ。

 そしてゴミ箱へ向かう。

 ウィーン、ウィーン……

 でも捨てようとしても、アームが届かなくて捨てられない。

 ウィーン、ウィーン……

 ゴミ箱の反対側にまわってみたけど、やっぱり届かない。


 すると、またまた新たな2本のアームが現れた。マジックハンドのようにひし形の骨の連なったアームである。マシンはそれを床につけると、

 グィーン……

 アームを伸ばして、自分の車体を持ち上げた! そこで、ちりとりを傾ける。

「「「入った!」」」

 ずいぶんと器用なことができるようになったものだ。


(うーん、なんだかすごいものができてしまった!)

 最初に取りつけた刈刃の他に、アームを6本も備えた姿。3人で作っていたら、どんどんアイデアが湧いてきて、こんなにまでなってしまった。

 二刀流みたいで、なかなかかっこいい。六刀流だから、さらにすごいんだけどね!


 この腕と、リーナにもらった『センス』を活かして、マシンは果たしてどんな仕事をしてくれるのか。

「よーし! じゃあ庭にいこう!」


 クーラーの効いている部屋から出た午後の庭は、暑さでめまいがするようだった。暑い暑いと言いながら、レオたちは庭に出て、マシンを草の中に下ろした。とは言え、マシンを置きさえすればあとは部屋に戻れるのだから、少々暑くったってまあ大したことはない。自動運転――なんて便利。

 でもレオたちはマシンの仕上がりが楽しみなので、部屋には戻らず、マシンが動き出すのを待った。


 ウィィィィン……


 マシンは慎重に動き出す。何も考えずに猛スピードで働いていた時とはちがって、今度はじっくり考えながら動いている。

「ゆっくりでもいいぞ。がんばれ!」


 根を引っこ抜いたり、ねらった物だけを刈り取ったり、細かい作業でもマシンは時間をかけて丁寧に進めていく。

 昔の、ばあちゃんのように。


「時間はかかっても、機械は腰が痛くならないからいいよね」

「そうだな。それより、そろそろお腹すかないか?」

「あとはマシンに任せたらいい。うまくやってくれる」

 3人は、マシンの様子にホッと一息つく。

「言われてみれば、おなかペコペコだよ」


 玄関の方から、ざわめきが聞こえてきたのはその時だった。

「会長さん! 本当にこれは困った問題ですよ」


 あれは……おとなりさんの声!? 町内会長さんを連れてきちゃった!?

 まずい! ゆっくりやったらいいなんて、言ってる場合じゃなかった!


 ピンポーン!


 ど……どうする!?

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