ウッドとネモ〜戦闘狂は少女の歌で悲しみを知るか?
凪司工房
第一章 「悲しみの墓守」
1
天には黒衣に宝石を
星のローブの真下には広大な森が広がっているが、それらは人間がよく知るそれとは幾らか異なっていた。
風に押されて揺れる葉は巨大で、一枚で小柄な獅子など隠せてしまいそうだ。その大きな葉が枝から伸びているのではなく、樹木のように
その巨大な草花の隙間から、ただ土を掘る音が響いてくる。
ふと見れば、大きく長い卵型に窪んだ部分が幾つか見える。足跡だ。だがそれらもまた周囲の草花に合わせるように大きい。
土塊が何かに
湿った土は水分を含み、乾いたそれより遥かに重い。けれど音は休むことなく、リズムを乱すこともなく、絶え間なく軽快に奏でられる。
堀り、捨てる。
突き刺し、抉る。
彼はどこまで掘り進めようというのか。
そう。彼だった。
茂みの奥に現れたのは、日焼けなのか、
筋肉だけで構成されたような腕が伸縮を繰り返し、その手に掴んだスコップで既に己が半分ほどは埋まるくらいの穴を掘っていた。
その脇には彼と同じく見目逞しい男の体が二つ、首が無い状態で転がっている。べっとりと流れ出していた
――アルタイ族。
そう呼ばれる巨人の種族だった。
二つの遺体を埋めるのに充分なほど穴を掘り終えると、彼は丁寧に二つの遺体を布で包み、穴の中に下ろした。二つはもう生命を持たないことが充分にこちらに伝わるほど硬く、持ち上げても横たわったままの姿勢で変わらない。
彼は仲間の遺体を穴の底に丁寧に並べ、一度目を閉じた。その瞳から、するりと何かが抜け落ちた。
「また、か」
己の掌で受け止めたその
心臓の辺りが妙に
――まただ。
雫が落ちた。
「何だ。一体、俺はどうしてしまったのだ」
ウッドと呼ばれるこのアルタイ族の男はかつて戦士だった。それもアルタイ族の若手の中ではトップクラスの剣技を持ち、将来はディアムド帝国の主ともなれる。そう噂されるほどの猛者だった。
「あの日から。そう、あの日からだ」
それは少し昔の話。
そう。百五十年も
永遠の寿命を持つアルタイ族にとっては
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