祭りの後の放送室
祭りが終わり、後片付けが始まった。
それぞれの教室の後片付けや全体でのごみの分別、そして清掃が行われている。
木材をはじめとした燃やしても無害なものはグラウンドに集められ、大きな山としてキャンプファイヤーとして使われる。
今はそれの回収作業が行われていて、放送室にある人影は1つしかない。
今回の祭りで始まりの言葉を言った彼女がこの部屋に残っている。
キャンプファイヤーの開始を告げるためにこの部屋に残っているのだ。
この3日間、彼女は最初から最後まで放送を続けた。
迷子のアナウンスから各出し物のリポート、果ては歌うという無理難題もなんとかこなしてみせた彼女には達成感が満ちているのだろう。
「やっぱりこの学校が、この部屋が好きだな〜」
独り言で彼女は呟く。
『ありがとう』
伝えることはできないとわかっていても、この学校の放送室としてありったけの感謝の気持ちを言葉にした。
「え?」
彼女は何か不思議なものを聞いたかのように辺りを見回す。
さっきの言葉が届いたのかもしれないとは思うが、ただの放送質である私の声が彼女に聞こえるはずがない。
彼女は少し考えた後に、満点の笑顔をした。
『こちらキャンプファイヤー班、準備完了です』
トランシーバーの向こうからキャンプファイヤーの準備ができたことが伝えられる。
彼女はパシンッと頬をたたき、気合を入れた。
「準備が完了しました。
これより、キャンプファイヤーを開始します」
その言葉とともに木々の山の裾に火が放たれる。
放送室からもその火が見える。
彼女は窓からそちらを見つめていた。
これでこの祭は終わるが、私はこの校舎とともに、人々に忘れられるまで残り続けるのだろう。
4 seasons for BC 〜ある放送部の軌跡〜 ミンイチ @DoTK
サポーター
- nao読み専です。土日祝日にまとめて読んでいます。 他サイトのアカウントを削除しました。 2025年1月25日 楠 なお(佐藤 楓&黒猫)
- 稲邊 富実代私は、内科の医師です。 40名の入院患者様を受け持ち、全身全霊で診させていただいて居ります。 毎晩、夜中に病棟から電話がかかってきます。 夜中に病棟から呼ばれて行くこともしばしばです。 患者様のために、悲しみや苦しみの、或いは喜びの、涙を流す毎日です。 患者様のために一喜一憂し、私の心は山の頂から奈落の底まで行ったり来たりする毎日です。 この愛を、目の前の患者様だけではない、広く国民に捧げたい・・・そう願って国政を志しましたが、道は開けません。 私は、イザベラ・デステ侯妃を知って、政治に、そして国を守るということに初めて開眼したのです。 この作品「プリマドンナ・デルモンド」を私は、1986年8月、医学部5年生の夏休み1か月で、不眠不休で、死に物狂いで書き上げました。 翌月1986年9月11日の夏目雅子さんの一周忌に間に合わせたい一心で。 夏目雅子さんは稀な手相の持主で、同じ手相を自分が持っていることを知った高校1年生の私は、東京の大学に入って医学を学びながら夏目雅子さんの専属作家になろうと決意しました。 しかし、その夢を果たせぬまま、私が医学部4年生の時、夏目雅子さんは白血病のため27歳の若さで帰らぬ人となられました。 夏目雅子さんに主演していただきたくて構想を練っていたのに、永遠に間に合わなくなってしまった作品「プリマドンナ・デルモンド」・・・でも、せめて一周忌に間に合わせたくて、不眠不休で書き上げた1986年夏の光景が鮮明に胸に甦ります。 あの時、献身的に協力してくれた母も、もういません。 翌年医学部を卒業し、研修医になってからは過酷な医師の仕事に追われ、出版社に持ち込むことも無いまま、数十年が経ってしましました。 「選挙なんて無理。」 と諦めていた私は、国政への思いを封印し続けて生きて参りました。 でも、コロナ禍に 「医師としての知識や経験、見解を広く国民に役立てたい。」 という思いが高じ、国政を目ざす様になりました。 しかし、候補者公募を受けても受けてもことごとく書類選考で門残払いにされ、知名度を挙げなければ無理だと言われ、その時、思い出したのがこの作品だったのです。 でも・・・数十年ぶりに読み返してみて、あの時の熱い思いが一気に胸に押し寄せ、涙にむせんでいるうちに、選挙に出るため知名度を挙げたくて藁をもすがる思いでこの作品にすがろうとし気持ちは消え失せました。 夏目雅子さんのために書き始めたのに、知れば知るほどイザベラ侯妃の素晴らしさに魅せられ、 「この人を埋もれさせたくない。 一人でも多くの方に、イザベラ侯妃を知ってほしい。」 という思いに突き動かされた1986年医学部5年生の夏の純粋な思いで胸がいっぱいになりました。 当時は無かったインターネット、そして小説投稿サイト・・・その御蔭で、忘れていたこの作品にもう一度出会うことが出来ました。 忘れていた自分に。 忘れていた使命に。 そして、忘れていた幸せに。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます