祭りの後の放送室

 祭りが終わり、後片付けが始まった。


 それぞれの教室の後片付けや全体でのごみの分別、そして清掃が行われている。


 木材をはじめとした燃やしても無害なものはグラウンドに集められ、大きな山としてキャンプファイヤーとして使われる。


 今はそれの回収作業が行われていて、放送室にある人影は1つしかない。


 今回の祭りで始まりの言葉を言った彼女がこの部屋に残っている。


 キャンプファイヤーの開始を告げるためにこの部屋に残っているのだ。


 この3日間、彼女は最初から最後まで放送を続けた。


 迷子のアナウンスから各出し物のリポート、果ては歌うという無理難題もなんとかこなしてみせた彼女には達成感が満ちているのだろう。


「やっぱりこの学校が、この部屋が好きだな〜」


 独り言で彼女は呟く。


『ありがとう』


 伝えることはできないとわかっていても、この学校の放送室としてありったけの感謝の気持ちを言葉にした。


「え?」


 彼女は何か不思議なものを聞いたかのように辺りを見回す。


 さっきの言葉が届いたのかもしれないとは思うが、ただの放送質である私の声が彼女に聞こえるはずがない。


 彼女は少し考えた後に、満点の笑顔をした。


『こちらキャンプファイヤー班、準備完了です』


 トランシーバーの向こうからキャンプファイヤーの準備ができたことが伝えられる。


 彼女はパシンッと頬をたたき、気合を入れた。


「準備が完了しました。

 これより、キャンプファイヤーを開始します」


 その言葉とともに木々の山の裾に火が放たれる。


 放送室からもその火が見える。


 彼女は窓からそちらを見つめていた。


 これでこの祭は終わるが、私はこの校舎とともに、人々に忘れられるまで残り続けるのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

4 seasons for BC 〜ある放送部の軌跡〜 ミンイチ @DoTK

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ