春の放課後

 授業とホームルームを終え、部員たちが放送室に集まってくる。


 放課後に来なければいけない日は、自分が担当に当たっている日の前日と当日のみでいいけれど、ほぼ全員が毎日集まってきている。


 特に今日は初めての放送だったので、今後の改善点などを話し合うためにミーティングのようなことが行われている。


 放送室にはスペックが低いけれど、音源をとってきたり映像を編集したりするためのパソコンが2台置いてある。


 部員が出した注意するべきところは、副部長がまとめてそのパソコンに残しておき、今後も見返すことができるようにしている。


 話し合いが終わると、活動内容はそれぞれがしたいことに変わる。


 次に流す曲を決めるためにパソコンをさわる人や発声練習をする人、なにかのコンテストのために案を考えておく人など様々だ。


 そして、自分のしたいことを終えた人から「お疲れ様です」の声とともに帰っていく。


 最後まで残っていたのは部長と副部長で、リクエスト用紙とそれをいれるリクエス箱を用意していた。


 部長ははしゃぎすぎたようで、目を細くして船を漕いでいる。


 そんな中でも、副部長は黙々とリクエスト用紙をパソコンでデザインしていた。


 一段落したのか、副部長が部長の方を見ると座ったまま眠ってしまっていた。


 それを見た副部長はまたか、といった様子で近づいていき、ほっぺたをペチペチ叩いて起こそうとするが、まったく起きる様子はないように見える。


 今なら、と思ったように副部長は部長の頬に口を近づけたが、いつものように、もう少しというところでやめてしまう。


 やってられないというような様子で部屋を出ていった。


 出ていってすぐに、部長は起き上がった。


 こちらもいつも通り、顔は燃えてしまいそうなほどに真っ赤に染まっている。


 そしてこちらも走って部屋を出ていく。


 このやりとりがいつまで続くのかはわからないが、少なくとも彼らが卒業するまでは見守りたいなと、思っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る