文化祭の放課後
3日間の文化祭も終わり、あとは校内の掃除だけが残っている。
放送部は清掃が終わったこととそのあとの後祭りの開催を知らせるために機材とアナウンスの担当が1人ずつ残っている。
今年の担当は部長と副部長だ。
どちらも人と喋ることが苦手だが、この文化祭を完走できた。
この2人は人と喋ることが苦手ではあるが、その代わりに人の気持ちを感じ取る、考える力は他の人よりも強い。
だからこそ、この2人は完走できたのだと思う。
「なあ」
「ん?」
「なんでもない」
2人は寝っ転がりながらこんな会話を続けている。
片方の右手ともう片方の左手がしっかりと繋がっている。
お互いに何を伝えたいのかわかっているが、それを口にする勇気はない。
何も言えないまま時間がすぎていく。
ピコン!
スマホから音が鳴る。
掃除が終わったのだろう。
「それじゃあ」
「うん」
マイクの電源をつけて校内アナウンスをする。
それが終わってもなかなか外に出ないし、喋り出すこともない。
「「あのさ、」」
2人の声が重なる。
顔を見合わせて軽く笑った後に、最初から言い始める。
「「付き合ってください」」
もう一度笑い合い、思いっきり相手を抱きしめる。
放送室の前にいた他の部員はいつの間にか消えていた。
「「いこっか」」
2人は手を繋ぎ、ライブ会場に向かう。
付き合い始めてから最初のデートには学校のライブが選ばれた。
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