冬休み前の放課後

 授業が終わり、あの子が帰ってきた。


 いつもよりも少し遅かったが、何かあったのだろうか。


 そう思っていると、入ってすぐの場所で泣き崩れた。


 最初はなぜ泣いているのかわからなかったが、カバンからはみ出ていたプリントで理由がわかった。


『転校のお願い』


 この学校は来年度の開校は行わないらしい。


 このことは今日のお昼に通達が来て、終わりのショートホームルームで伝えられたようだ。


 そのプリントには近くのおすすめの高校が書かれていて、そこへの推薦状も出してもらえるらしい。


 それでも、一年を過ごした学校を去るのはなかなかに辛いことだろう。


 私もこの学校が閉校になって人が来なくなることが辛いと感じるだろうが、それ以上にこの子は辛いのだろう。


 この子が泣いているうちに日は落ちて、泣き疲れて眠ってしまった。


 見回りに来た先生が彼女に気づき、起こそうとする。


 しかし、今日のあの通達のことを考えてしまい、生徒に関わることをためらってしまう。


 『生徒がこの学校に固執せず、新しい環境に向かえるようにしてほしい』と言う学校長の言葉が先生の動きを止めてしまう。


 結局、先生は職員室に帰ってこの子の家に連絡したようだ。


 そして30分ほどが経って車で親がやってきた。


 この子をおこさないように車に乗せて、車は校門から出ていった。


 それを見送った先生はどこかやりきれないものがあるようだった。


 

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