骨董に宿った魂を共感応の力で解き放ってゆく、異能系ヒューマンドラマ

怪奇現象を専門に扱う探偵事務所とそれをとりまく人々が織りなす異能系ヒューマンドラマ。シリーズ二作目は不思議な骨董店を舞台に、モノに宿った魂たちとのさまざまな出会いが描かれます。

共感応という特殊能力でもって骨董に向かい合う探偵助手の服部少年。自分自身の壁にぶつかりながらもモノたちの内なる声を聞き、魂を解き放とうと尽力する姿が印象的です。要所要所できっちりとしめてくれる探偵の樹神先生に、柔らかい安心感をもたらす調香師の百花さん、そしてこのシリーズに登場する骨董店主、カイコさんとの絶妙の連携で、骨董に隠された真実を突きとめていきます。

ひとつひとつのオブジェが持つ思いの深さ、強さ。そこには人の持つありとあらゆる感情が渦巻き、人間の業や悔恨、あるいは愛情や願いなどがひしひしと押し寄せてきます。章ごとのテーマが濃く、どれも深く感じ入る事柄ばかりです。そして終盤にかけて語られるカイコさん自身の謎。この骨董店主、非常に個性的で魅力のある人で、作品全体の空気感を担っていると感じました。このカイコさんの物語もぜひ本編で見届けて欲しいです。

魂を受け容れる憑依の瞬間や思念を感じる描写は読み手にも肌で感じさせるほどリアル。ときおり挟まれる名古屋めしと笑いを誘う会話も物語に緩急をつけてくれます。怪奇現象を縦糸に、ヒューマンドラマを横糸にした絶品のエンターテインメント作品です。

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