第3話 罠と、邪神と、レベルカンスト
冒険者ギルドの裁定を食らった。
証拠がないので、ギルドにある俺の口座の金を、全部取られただけで済んだ。
俺のギルドランクは最低のFだから、降格のしようもなかったが。
装備もないし、冒険者稼業は出来ない。
俺は雑務依頼を
今日もカウンターに行き。
「医者の依頼は入ってない?」
「毎日来られてもありません。掲示板に貼られている依頼が全てです」
「でも間違いって事もあるだろ」
「しつこいですね。あらっ?」
受付嬢に書類が回された。
「どうしたんだ?」
「医者の手伝いの依頼があります」
「ひゃっほう。な、こういう事もあるって。依頼受託の手続きをしてくれ」
「はい」
医者の助手になれた。
「医者のヘロンだ」
「よろしくお願いします」
「さっそくだが、往診が入った。場所は邪神のダンジョンの2階層になる」
「そんな所にも行くんですね?」
「ああ、今回のは金が良いんだ。嫌ならついて来なくてもいいぞ。だが、その場合、二度と私の依頼は受けさせない」
「行きます。行かせて下さい」
ヘロンに連れて行かれ、邪神のダンジョンの入口をくぐる。
そして角を曲がった途端取り押さえられた。
「お前はジャス。なんのつもりだ?」
「白々しい。呪いを掛けてその言い草か」
「呪いなんて知らないぞ」
「みんな耳を貸すなよ。よし手筈通りに行こう」
何を言っても無駄らしい。
俺はロープで縛られ、大穴の所へ連れて来られた。
ここは知っている。
邪神の住み家に直通しているともっぱらの噂の場所だ。
ここに落ちて生きて帰った者はいない。
刑罰でこの穴に落とすのは死刑と同義だ。
「落とすぞ」
俺は落とされた。
もう終わりか。
短い人生だったな。
どのぐらい落ちたか分からないが、急に勢いがなくなった。
そしてふわりと地面に着地。
前を見ると10メートルほどの身長で、ヤギの角が生えた巨人が鎖に縛られている。
言われなくても分かる。
邪神だな。
「贄がやってきたか。生きたまま貪り食ってやろう。魂も何もかもな」
「ちくしょう。こうなったら嫌がらせだ。【味変】」
俺は自分の全てが激マズになるように願った。
大きな手で掴まれ口の中に放り込まれた。
そして、くちゃっと腕を磨り潰された。
「グオオオオオ」
邪神がもだえ苦しむ。
みたか味変の激マズ。
そして、斜めに傾いたかと思ったら、衝撃が襲い意識が飛んだ。
意識が戻り、口から這い出すと、邪神が倒れてた。
ぴくりとも動かない。
邪神は俺の味変激マズに精神が耐えきれなかったらしい。
マズさで死ぬんだな。
流石のスキルレベルMAX。
レベルアップのファンファーレが鳴りやまない。
「ステータス」
――――――――――――――――――
名前:テイスト LV99(MAX)
魔力:9980/9999(MAX)
スキル:1/1(MAX)
味変 LV9(MAX)
――――――――――――――――――
レベルがカンストしちまった。
魔力もだ。
レベルが上がってもその恩恵は少ない。
魔力が上がるのと、魂が強化されるのだ。
魂が強化されると精神魔法とか呪いとか即死魔法に掛かりづらくなる。
アンデッド系の攻撃に強くなるって事だけだ。
レベルの恩恵については、他の人も同じだから文句は言えない。
今の俺は、魂が強いのと魔力が沢山あるだけの一般人だ。
だが、魔力の心配がなくなって思いっ切りスキルを使えるのは良い。
常に極上の味を楽しめる。
腕の痛みで思考が中断された。
左腕がぐちゃぐちゃだ。
見てるだけで痛さが増す。
ふと、扉の方向を見ると宝箱が出てた。
ポーション出てくれと祈りながら蓋を開けると、あったのは紫のエリクサー。
これで左腕が治る。
片腕だけで何とかエリクサーを飲んだ。
痛みが消え、傷は全てなくなっていた。
扉の外にポータルがあったので、それに乗る。
晴れ渡った青い空。
木々の緑。
鳥のさえずり。
全てが新鮮で、まるで生き返った気分だ。
生きて帰って来れた。
そして、ジャス達の顔が浮かんだ。
ジャス達、栄光パーティを許せない。
ギルドに訴えてやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます