第12話 焼肉と、Dランク昇格試験と、メディシスの家

 ボスウインドウルフの肉とオークのレバーで焼肉をする。

 早く血を戻さないと、今後の行動にも支障が出る。

 今頃、ウインドウルフの肉は干し肉になっているはずだ。


 部屋が干し肉で埋まってしまうな。

 俺は考えた。

 メディシスをパーティに加えたら収納バックとポーションがもれなく付いてくる。


 何か作戦を考えないと。

 焼肉を存分に食ってから、俺はギルドに向かった。

 もう、貧血はないみたいだな。

 さすがモンスターの肉。

 食うと回復も早い。


「Dランクの昇格試験を受けたい」

「ポイントは溜まってますね。今からでも大丈夫ですか」

「平気だ」


 ギルドの修練場に入るとこの間の教官がいる。


「早かったな」

「ウインドウルフを1日で326頭狩った」

「そいつは凄いな。それだけでもCランク相当だな。手合わせを免除してやってもいいぞ。実力はこの間ので分かっている」


「力試ししたいので手合わせお願いします」

「よし、掛かって来い」


 思い切り踏み込んで、木剣を力任せに横に薙ぐ。


「この間より素早さが上がっているな」


 余裕で受け止められた。

 俺は剣を返して、連撃に出る。


「とりゃあ」

「おっと切り返しもなかなか」


 やはり受け止められた。

 俺は剣の力を抜いて相手のバランスを崩そうとした。

 教官は素早く剣を戻して、反撃してきた。

 不味い。


 慌てて防御する。

 木剣が甲高い音を立てる。

 スピードについていけてる。


 だが、教官は連撃に移った。

 防御するのがやっとで、最後は剣を弾き飛ばされた。


「俺相手に10合わせできれば大したものだ。Bの実力はあるだろう。腕をあげたな。今は身体能力頼りだが、若いうちは仕方がない。ゆっくりと技術を覚えるんだ。Dランクおめでとう」

「はい、ありがとうございます」


 ちくしょう、届かなかった。

 きっと教官は元Sランクに違いない。

 栄光のメンバーは個人ランクSの者はいない。

 それぐらい高い壁だ。


 ギルドの帰りに矢が飛んできた。

 だが、空気の流れが分かったので矢の起動が読める。

 俺は素手で矢を掴み取った。

 Bランク相当の身体能力だからな。

 おまけにウインドウルフの肉には、風の感知能力が含まれるらしい。

 このぐらい容易い。

 あの教官が化け物なだけだ。


 余ったボスウインドウルフの肉は干し肉にして、ここぞという時に使おう。

 殺し屋は第2、第3の矢は撃ってこない。

 無駄を悟ったのだろう。


 避けたのならともかく、空中で掴まれたら、実力差がはっきりと分かる。

 グリフォンの目玉が欲しいな。

 あれを食えば、スキル鷹目相当の能力が使える。

 殺し屋の顔を拝んでやりたい。


 俺はキュアラを連れて、メディシスの家に遊びに行く事にした。

 行ってみるとそこは、大邸宅だった。


「何、この場違い感」

「そうですね。ちょっと身構えてしまいます」


「立っていてもなんだ。入るか」

「ええ」


 門のは開いていたので、庭に入って、玄関の扉のノッカーを叩く。

 反応はない。

 扉を開けると異臭が物凄い。

 見ると、薬品が所狭し置いてある。

 足の踏み場もないほどだ。


 薬品は腐った様なものやら、とても言葉に出来ないようなきたならしい物に似た物が沢山ある。

 これって失敗作やら廃棄物なんじゃないのか。


「来たのか。久しぶりなのだ」

「色々と言いたい事があるが。まずは、この汚物を何とかしろ」

「これは記念品なのだ。捨てられないのだ」


「鑑定できるし、記憶力が良いんだよな。1年以内に使わない物は捨てろ」

「そうね。女子の屋敷としてこれは許せないです。片付けましょう」

「キュアラもそう思うよな。大邸宅が泣いているぞ」


「仕方ない。泣く泣く捨てるのだ」


 それから3人で片付け始めた。

 どこに廃棄するかと言えばダンジョンだ。

 邪神の穴に落とすのだ。

 落としても怒り狂う邪神は存在しない。

 怒られたりもしないはずだ。


 1日掛かりでも、玄関ホールしか片付かなかった。

 どんだけあるんだ。

 メディシスをパーティに加えるのを、ちょっと止めようかとも考え始めたが。

 良い説得方法を思いついた。


 それで押してみよう。

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