第11話 ウインドウルフと、群れと、ボス

 ウインドウルフはDクラスモンスターだ。

 これの肉の効果はあまり高くない。

 スレイプニルの肉なんかだと絶大な効果が出るんだが、

 Sランクモンスターは高望みが過ぎる。


 微増でも仕方ない。

 ウインドウルフで我慢しておこう。


 オーガの時と同じように激マズ餌で仕留める事にする。

 餌を置いてしばらく待つ。

 ここは草原だから遮蔽物がないので、地に伏して待つ。


 来たぞ。

 ウインドウルフが1頭来て、餌の肉の匂いを嗅いだ。

 そして、肉を舐めて、キャインと鳴いて、白目を剥いた。

 そして、ぴくぴく痙攣している。


 舐めたのでは死ぬには至らなかったか。

 俺はナイフで止めを刺した。


 遠くでウインドウルフの遠吠えがする。

 あれは群れを集めてる。

 何か失敗したか?


 俺は馬鹿だ。

 ナイフで止めを刺したから、血の匂いでウインドウルフが集まってくるんだ。

 しまった、失敗した。


 予定では餌を食って死んだはずだったんだよ。

 オーガの肉を齧って首を締めりゃあ良かった。

 変な所で節約しようと思ったのが間違いだ。


「血の匂いでウインドウルフが集まって来る。俺のミスだ。討伐に慣れてないから、気が回らなかった」

「集団でも蹴散らせるのではありませんか」


 そう、キュアラが言う。

 それもそうか。


 俺達はゴブリンとオーガの肉を齧った。

 スキルを使ったのは言うまでもない。


 さあ、来い。

 その時、瓶が飛んできた。

 そして、俺達に液体が掛かった。


 逃げていく後ろ姿はジャスだった。

 あの野郎、この液体は何だ。

 ウインドウルフの集団が集まった。

 だが、数が多すぎる300頭はいるだろう。

 さっきの液体はモンスター寄せだったらしい。


 これは死んだな。

 いや死なないか。

 ウインドウルフは風を起こしてスピードを上げているが、攻撃は噛みつきだけだ。

 食われる覚悟があるなら、死にはしない。


「【味変】。キュアラ、一緒に齧られろ。首筋はカードするんだぞ。即死でなけりゃ手はある」


 俺とキュアラは激マズになった。


「そうですね。回復魔法もありますし」


「来るぞ!」


 ウインドウルフの青い毛並みが海となって襲い掛かってくる。

 必死に首筋をガードする。

 手足に噛みつかれ、噛みついたウインドウルフから死んで行く。


 キュアラが生きているのか、死んでいるのか確認が出来ない。


「【回復魔法】」


 死んでても別に構わないが、生きている。

 くそ、鬱陶うっとうしいんだよ。

 オーガの怪力でウインドウルフを振り払い、ポーションを飲む。


 何時になったら終わるんだよ。

 血は無限に無いんだぞ。

 後で増血の効果のあるモンスター料理を食べないと。

 増血と言えばオークのレバーだな。

 オークの肉は美味いが、レバーは激マズなので捨てる部位だ。

 安上がりになんとかなりそうだ。


 こんな事でも考えてないとやってられん。

 ウインドウルフが全て息絶えた時には、俺の手の指は3本なくなっていた。

 腕と足の肉は食いちぎられ、少し骨が見えている。


 スキルを掛けてメディシスのポーションを飲む。

 ほんとにエリクサー並みだな。

 欠損も全て治った。


 キュアラも同じように酷い状態だったので、ポーションを飲ませた。

 遠くを見ると俺の背丈より、大きいウインドウルフがいる。

 ボスだな。

 モンスター寄せには反応しなかったが、手下がみんなやられたので出て来たというわけか。

 いいよ掛かって来い。


 ウインドウルフボスが一声吠えると、俺の鎧に傷がついた。

 やばい、遠距離攻撃だ。

 しかも見えないときている。


 何か手はないか。


「キュアラ、ウインドウルフの肉の中にいる寄生虫を殺せるか?」

「ええ、【回復魔法】。寄生虫は体が小さいから、回復魔法を掛けると過剰回復で死ぬはず」


 俺はナイフで肉を削ぎ取ると食った。

 これで、速度的に何とかなってほしい。

 ジグザクに走りボスに近づく。

 散発的にしか、あの遠距離攻撃は飛んでこない。

 連発は出来ないんだな。


 俺はボスに近づくと、手のひらを切り。

 口の中に突っ込んだ。


 悶絶して死ぬボス。

 どんなもんだ。

 ほっとしたら、血が少ないのでフラフラした。

 これから、ウインドウルフの死骸を運ばないといけないのは、うんざりだな。

 よし、依頼を出して運んでもらおう。

 金ならボスの魔石でお釣りがくるはずだ。

 ついでに干し肉も作ってもらおう。

 そうしよう。

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