第7話 チンピラと、ゴブリンと、スタミナアップ

 オーガの皮と討伐の証拠の魔石を、冒険者ギルドに納め、ホクホク顔で通りを進む。

 肩がぶつかった。


「いてえな! この野郎!」


 ぶつかった相手が気色ばむ。


「それは俺の台詞だ」


 俺は喧嘩を買った。

 冒険者がチンピラ程度に退いたら、いい笑い物だ。


「【味変】」


 昨日、作ったオーガの燻製を齧る。


「肉なんか食って余裕だな。そんな物は吐き戻させてやる」

「ここじゃ人目が多い。そこの路地で勝負をつけよう」

「ああ、良いぜ」


 路地に入ってチンピラと対峙した。

 俺はデコピンを一発放った。

 頭がのけぞりフラフラになって、倒れ込むチンピラ。


「くそっ、こんなに強いなんて、聞いてない」


 誰に聞いてないって?

 陰謀の匂いがするが、少しお粗末だな。

 大方、ジャス辺りが仕組んだのだろう。


 俺はオーガの怪力でチンピラの口をこじ開け、激マズの飴を食わせてやった。

 吐きまくるチンピラ。


「じゃ、吐いてもらおうか。おっと、もう吐いているんだな。喋ってもらうぞ」

「何でも喋る。あの飴は勘弁してくれ……ぐっ」


 チンピラの言葉が止まる。

 チンピラが倒れたのでどうしたのか見ると。

 背中に矢が刺さってた。

 矢が刺さっている服の穴の周りに、毒がべっとりと付いている。


 これはスカウの仕業ではないな。

 奴は、自分の持っている貫通スキルに誇りを持っている。

 毒を毛嫌いしてたはずだ。


 と言う事はプロを雇ったな。

 殺し屋か犯罪組織だろう。


 今回のチンピラは、俺の実力を把握する為じゃないかな。

 呪術を疑っているから、実力が未知数だと思っているのかもな。

 何せ、人間の呪術師は伝説だ。


 俺は周囲を見回して人がいない事を確かめた。

 この殺人を俺のせいにされたら敵わない。

 足早に立ち去った。


 オーガの討伐で得た金は冒険者ギルドの依頼に使った。

 モンスターの料理の食材だ。

 そんなに高い物はないけど、入手しづらい物もある。


 仕方ない、簡単に手に入る物を調達しよう。

 俺は荷車を引いて、街を出ると森に入った。

 ゴブリンを狩るためだ。

 ゴブリンは俺の胸ぐらいの身長しかなくて非力だ。


 だが、そのスタミナには驚く。

 1週間戦闘し続けられるのだ。

 夜のあれが凄くて、繁殖力が高いのも頷ける話。


 レベル1でも狩れる相手だ。

 俺も栄光に入っていた時はよく狩りに行って、みんなに食わせたよ。


 やつら、野営の時に俺がこっそりゴブリンを狩っていた現場も、見てなかったんだな。

 収納魔法持ちがいないのに新鮮な肉が出て来たら、おかしいと思うだろ。

 何にも思わなかったんだな。


 野生動物でも狩ったとでも思っていたのかな。

 来たな。


「肉になっちまえ」


 俺はオーガの力でゴブリンの首を締め上げた。

 ほんとうにオーガの肉のパワーは凄いな。

 栄光の時は、オーガの干し肉が高かったので、俺は食ってなかった。

 オーガの肉は捨てる部位だから、安いと思うだろが、討伐と運搬には危険が付きまとう。

 結果、捨てる部位と言えども高くなるってわけだ。


 それに、オーガの干し肉なんて依頼は特殊だから、足元を見られた。

 何に使うか聞かれたら、モンスターをおびき寄せる餌だと言い訳してたが、それも不味かったのかもしれない。

 オーガの肉を好んで食うようなモンスターは強い。


 その依頼料は必然として高くなる。

 足元を見られる要因だ。

 栄光がオーガ討伐を受けてくれたら良かったのだが、Bランク依頼なので、ジャスが嫌がった。

 そんな訳だ。


 ゴブリンの皮を剥いで、肉を採る。

 余ったのは干し肉にしよう。

 ゴブリンの肉は緑色だが、焼くと実に美味そうな赤に変わる。


 スキルを使いゴブリンの焼肉を楽しんだ。

 俺が栄光の討伐についていけたのはこの肉のおかげだな。

 スタミナ満点だからな。

 激マズなのは言うまでもないがな。


 ゴブリンを30匹も狩ってしまった。

 解体して、肉を荷車に積む。


 俺も収納バックが欲しい。

 いくらぐらいするのかな?

 ジャスも買わなかったから、相当するんだろうな。


 目標の一つにしておこう。

 オーガのパワーとゴブリンのスタミナがあれば、取り敢えずは楽勝だ。

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