第8話 ヴァンパイヤの灰と、キュアラと、モンスター料理

「この、スケルトンの討伐依頼を受けるぜ」


 俺は冒険者ギルドでスケルトンの依頼を受けた。

 俺のランクはFだ。

 受けられる依頼は少ない。

 こないだのオーガ討伐は、ランク不問の依頼で、幸運だった。


 とにかくスケルトンだ。

 この依頼で大物が出ると嬉しい。

 リッチとか出てくると最高なんだが。

 だが、古戦場ならともかく、普通の墓場では望みは薄い。


「ご依頼のヴァンパイヤの灰が届いてます」

「ロードか? トゥルーじゃないだろうな」

「ノーマルです」

「まあ、レッサーでなかっただけましか」

「代金の金貨5枚は口座から引いておきました」

「ありがとな」


 ヴァンパイヤの灰は俺には関係ないんだよな。

 でも食材としてコレクションしておきたい。

 ソロでずっとやるつもりはないからな。

 そのうち色々と仲間に加える予定だ。


 ふと、気配を感じて後ろを振り返ると、キュアラが立って居た。

 俺は無言で受付嬢の方に向き直る。


「話だけでも聞いてもらえませんか」


 俺に構うなと言おうか。

 話す間柄じゃないはずだとでも言おうか。

 それとも無視して立ち去ろうか。

 待てよ。

 キュアラをスパイとして仕立て上げるか。

 でも、そんなの俺らしくない。


 俺らしくか。

 話ぐらい聞いてやるか。

 俺は振り返った。


「手短に話せよ」

「栄光を辞めました」


「なんでまた?」

「私は要らないようですので」


「何を馬鹿な事を。回復役がいないパーティは3流だぞ」

「ポーションに劣る私は必要ないみたいです」


 そんなに料理のバフが効いていたのか。

 まあ、金貨10枚相当の料理だけれど。


 魔法の威力を高める食材は、さっき手にいれたヴァンパイヤの灰が最適だ。

 こいつは錬金術師が使うので需要が高い。

 金額も上がる。

 俺は栄光の時は、ちょくちょくパーティに、ヴァンパイヤロード討伐をさせていた。

 灰をちょろまかして料理に使う為だ。

 ヴァンパイヤロードの灰は金貨100枚ぐらいする。

 1割ぐらい、ちょろまかしてた。


「そうか。それで俺に恨み言でも言いに来たか」

滅相めっそうもないです。謝りたくて。あなたが呪術を使ったかどうか分かりませんが。あの仕打ちは、間違いだと思ってます。退職金を払うどころか、身ぐるみ剥いで放り出すなんて、長く一緒にやって来た仲間に対して失礼です。呪われても仕方ありません」

「モンスター料理についてはどう思っている?」

「あなたが私達にそれを出したかどうかは分かりませんが、料理は美味しかったです。スキルが使われていたのでしょう。贅沢だとは思いますが、士気も大切な要素です」


 そうか、まだ疑っているんだな。

 思い知らせてやる。


「じゃあ、モンスターの食材を目の前で料理してやる。食っていけよ」


 場所を宿の厨房に移した。

 俺はヴァンパイヤの灰を取り出した。


「ほんの少し舐めて見ろ」

「ええ。ぐぇっ、何ですかこの味は。魂が汚される様な不味さです」

「ヴァンパイヤの灰だよ。これをひと匙入れて、普通の灰をとばっと入れて、山菜を入れる。そして煮る」


 山菜が茹で上がった。

 良く洗い、水を切り、味をつけて煮物にした。


「食ってみろ【味変】」


 激マズで邪神が死ぬなら、手加減無しの激ウマはどうなるか知ってるか。

 美味さのあまり絶頂してしまうんだぜ。


「はい、頂きます。%&$#*」


 美味さのあまり白目を剥いてがくがくいっている。

 今度は激ウマを体の奥底で味わってもらおうか。

 キュアラを担ぐと宿の部屋のベッドに乗せた。

 キュアラの服を脱がす。

 俺も服を脱いだ。


「【味変】。おれの体はどこからどこまでも美味い。汗の一滴さえもな。聞いちゃいないか。じゃあ、俺が今度は頂きます」


 キュアラには俺の体の美味さを嫌というほど味わって貰った。

 処女だったんだな。

 てっきりジャスとよろしくやっていたものかと思ったよ。

 キュアラの頬を叩いて起こす。


「はっ、駄目。あんなの味わったら、もうあれなしでは生きていけません」

「やった行為は全部覚えているな」

「はい、味は舌でなくても感じるのですね」

「今日からお前は俺の味の奴隷だ。毎日、下のお口で俺の激ウマを味わってもらうからな」

「はい」


 顔を赤らめるキャアラ。


「魔法を使ってみろよ」

「【回復魔法】。嘘っ! 魔法の威力が上がっています!」


「俺の料理の威力が分かったか?」

「ええ、分かりました。ごめんなさい。私達が甘やかされていたのですね。技を磨くのを怠ってしまったようです」


「そうだな。スキルレベルが上がると威力は増すが、スキルを使う時の魔力の流し方とか、イメージとか工夫すべき点はいくらでもある。そういうのをやってなかったのだな」

「ええ、普通に使えてましたから。力技みたいなスキル行使になっていたと思います。私は自分が天才だと自惚うぬぼれていました」

「素質はあるのだから、スカウトされた時に気持ちに戻って、やり直せ」

「そうします」

「それとさっきも言ったけどお前は味の奴隷だ。パーティメンバーになってもらうからな」

「分かりました。なんなりとご命令下さい」


 回復役は欲しいからちょうど良かった。

 回復役はどこに行っても引く手あまただ。

 味の奴隷なら裏切る事もないだろう。


「ちょうどスケルトン討伐の依頼を受けたから、回復役がいると便利だ」


 キュアラは少しふくよかだが、裏を返せばグラマーだと言う事。

 くびれとか痩せさせるモンスター食材もあったと思う。

 食べさせればもっとスタイルが良くなるな。

 奴隷のメンテナンスも任せろ。

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