第9話 パーティ名と、スケルトンのスープと、キングスケルトン

「まず、パーティ名を決めよう」

「そうですね」


 何が良いだろうか。

 料理に関係した物がいい。


 酒池肉林はちょっとな。

 だとすれば。


風味絶佳ふうみぜっかがいいな」

「いえ、風味絶禍ふうみぜっかにしましょう」

「味が禍いを絶つのか。良いかもな」


 味で邪神を討伐した俺に相応しい。


 スケルトンの討伐依頼は、街から少し離れた所にある墓地が指定された場所だ。

 街から出て墓地に行くと、3体の武器すら持ってない普通のスケルトンがいた。


 しけてんな。

 スケルトンをどうするかというと、討伐して骨からスープを取るのだ。

 スケルトンの骨の効果は自動回復になる。

 ヴァンパイヤにも回復効果はついているが、価格の面でいうとスケルトンの方が良い。


 それに料理のバリエーション的に、骨の出汁の方が、使い道が色々とある。


「いきます。【回復魔法】」


 回復魔法が飛んで、スケルトンの頭蓋骨を消し去った。

 頭蓋の中の魔石が転がり落ち、あばら、腕、足などの色々な骨が散らばるように崩れた。


 キュアラの魔法攻撃で、瞬く間に3体のスケルトンは骨の山になった。

 これを茹でて出汁を取り乾燥させる。

 そうすると携帯用のスープの素の完成だ。


 栄光の時はキングスケルトンの骨でスープの素を作ってた。

 キングスケルトン討伐をすると、それから俺は徹夜でスープの素作りの作業を行った。

 みんな討伐で疲れ果てて寝ていたから、知らないだろうけど。


 俺は慣れた手つきで、簡易のかまどを作り、スープの素を作り始めた。

 水場が近くにあっていいな。

 キングスケルトン討伐なんかだと、古戦場が多いので水場が遠い。

 ここは、墓地なので管理人の小屋もある。

 今、管理人はスケルトンを恐れて避難している。


「そんな事をやってたんですね。ヴァンパイヤ灰の灰汁とりは辛うじて許せました。でもこれはちょっと」

「今まで散々に、キングスケルトンのスープを飲んでおいて、そんな事を言うなよ」

「ショックです」

「ショックを紛らわせてやろう」


 俺は手をわきわきさせた。


「こんなところでは嫌です」

「墓場は不謹慎で燃えるだろ」


 キュアラの下のお口を激ウマで満たしてやった。


「スープの事を言ってたが、スケルトンの骨は、人骨から出来ているわけじゃないらしいぞ」

「知ってます。それでもちょっと」


「スープになっちまえば、豚の骨だろうが、アンデッドだろうが、見た目は分からない」

「豚の骨のスープだと暗示を掛けて飲む事にします」


「もう、寝てていいぞ。これから先は長い」

「では遠慮なく先に休みます」


 キュアラが寝袋に入って、寝息を立て始めた。

 寝顔は可愛いな。

 そのうち、余分なぜい肉を落とす料理を作ってやるよ。

 待ってな。


 深夜になっても作業は終わらない。

 弱火でことこと煮詰める。

 どろどろになったら、瓶に詰めて、後は魔法で乾燥してもらう。

 全部魔法任せだと金がいくらあっても足りない。


 むっ、墓場で何か光ったな。

 カンテラをその方向に照らすと、巨大なスケルトンの姿が浮かび上がった。


「キュアラ、起きろ! お客さんだ! 金持ちだぞ!」

「何でキングスケルトンが、出てくるんですか!」

「知らん。回復魔法を撃ちまくれ。【味変】」


 オーガの干し肉を咀嚼する。

 力が満ちて来るのが分かるような気がした。


 カンテラを置いて、キングスケルトンの脛にタックルをかます。

 キングスケルトンは転がった。


 普通のキングスケルトンより弱いのか。

 人の3倍はあろうかと思われる頭蓋骨にパンチの連打を浴びせる。

 頭蓋骨にひびが入り始めた。

 キングスケルトンから呪いが飛ぶ。

 俺は至近距離でもろに浴びた。


 何ともないな。

 流石、レベルカンスト。

 キュアラも回復魔法の連打で応戦する。


 呪いはどんどん飛んで来るが気にせずに頭蓋骨叩いた。

 埒が明かないな。


 そうだ。

 俺はキングスケルトンの首に飛びつき、体全体を使ってへし折った。

 これでしばらく動けないはずだ。

 骨が元通りになろうと動く。

 俺は頭蓋骨を蹴って転がした。


 頭蓋骨が戻ろうとしたので体を使って止める。

 キュアラの回復魔法がビシバシと頭蓋骨に当たった。

 ひびがますます大きくなる。

 そして、頭蓋骨の中の魔石が見えた。


「取った!」


 魔石を取られたキングスケルトンはバラバラになった。


「おかしいですね。こんな墓場でキングスケルトンが出るなんて、いったい何があったのでしょう」

「分からんが、儲けた。それに弱かったし。骨の良い所だけ使うのは勿体ないな。悪いが朝一で荷車を借りてきてくれ」

「はい、分かりました。では、お休みなさい」


 徹夜でもへっちゃらだ。

 ゴブリンの肉があるからな。

 何事もなく朝を迎え、パーティ風味絶禍ふうみぜっかの初仕事は終わった。

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