第5話 オーガと、ピンチと、残念美人
俺は考えた。
邪神でも死ぬのなら、そこら辺のモンスターなんかイチコロだろう。
不味い餌を食わせて、モンスターを殺そう。
俺は冒険者ギルドで、ランク不問のオーガの依頼を手に取った。
オーガの棲み処は森の奥深くにあった。
俺は激マズの餌を仕掛けて、オーガを待つ。
やがてオーガが現れた。
オーガは餌の肉の匂いをしきりに嗅いだ。
毒だと疑っているのだろう。
そして、おもむろに食って死んだ。
やったぞ、金貨20枚だ。
討伐の証拠の魔石を早く採ろう。
小躍りしながら鼻歌を歌い、魔石を採り始めた。
ぬっと影が差して気が付いた。
もう一頭オーガが居た事を。
くそっ、万事休すか。
「ほら俺の肉は不味いぞ【味変】」
俺の肉を激マズに変えた。
それしか打てる手がなかったからだ。
オーガは俺の胴体を掴むとぱくりと食った。
食われてしまった。
予備の激マズ肉を用意してなかった俺のミスだ。
仕方ない。
俺は手首を切った。
ほとばしる血しぶき。
そして、オーガは死んだ。
くそっ、痛すぎる。
最下級ポーションを飲むが、血は止まらない。
深く切り過ぎたか。
こんな所で死ぬのかよ。
嘘だろ。
「そこの駆け出し冒険者君、激マズのエリクサー並みのポーションがあるのだが、飲むかね?」
後ろから、声を掛けられた。
振り返ると、分厚い瓶底眼鏡を掛けた白衣の女子がいる。
俺は差し出されたポーションをひったくって、スキルを掛け飲んだ。
スキルのおかげで極上の味だ。
エリクサー並みと言うのは本当だったんだな。
傷は痕も残さずに治った。
「ありがとう」
「別にいいのだ。料金はオーガの素材で払ってもらう」
「俺は魔石と肉が貰えれば良い」
「肉をどうするのかね?」
「いざという時の為に干し肉にする」
「【鑑定】。ふむ、オーガの肉には力を倍増させる効果があるのだね。激マズのようだが」
女の子は眼鏡外して、頭に掛けると、スキルを使った。
「凄いな、鑑定スキル」
「えっへん、もっと褒めたまえ。メディシスは天才なのだ」
眼鏡を取ると凄い美人だ。
でも変人だな。
「むっ、
「頭にあるよ」
メディシスは頭に手をやると、はっと気が付いたようだ。
眼鏡を掛け直し、くいっと眼鏡を持ち上げた。
「失礼したのである」
残念美人という言葉がぴったりくる人だ。
彼女に対するちょっと良いな、彼女にしたいなと思った思いなど、綺麗さっぱり吹き飛んだ。
「そう言えば、メディシスと言えば美味いポーションの開発者じゃなかったか」
「えっへん。私の事である」
「凄いな」
メディシスは得意げに胸を反らした。
意外に胸があるな。
眼鏡を取って、もっとお洒落したら、良いのにな。
彼女にしたいかはちょっと考え物だが。
「鑑定スキルが芽生えるのは、どうしたら良いのか知っておるかね?」
「知らないけど」
「本を沢山読むのだ」
「へぇ、そうなの」
「50万冊ぐらい読んだのだ。もちろん全て記憶してるのである」
「じゃ、色んな事を知ってるね」
「その通りなのだ。君が駆け出しだという事もすぐに分かったのである」
「君じゃなくてテイストだよ」
「テイスト君、君の血は猛毒なのかね。鑑定させてもらってもよろしいか」
「いいよ。メディシスが秘密にしておいてくれるのなら」
「もちろんなのだ。秘密は尊重する。では【鑑定】。むっ、凄いレベルなのだ。それに味変とは聞いた事のないスキルなのだ」
「味を変えられるんだ」
「ふむ、ならば、あの激マズポーションも飲めるのも頷けるのである」
「モンスター肉が食べられるのもこれのおかげさ」
「今度、工房に遊びに来るのだ。不味くて飲めないポーションをご馳走しようではないか」
「人体実験はお断りだな」
「心配しなくても良いのだ。鑑定で薬効は分かっている。だが、実践してみない事には、なのである」
「まあそのくらいなら」
メディシスと仲良くなれたと思う。
メディシスが収納バッグを持っていたのでオーガを丸ごと入れて、オーガの皮も俺が貰えることになった。
さて、帰って干し肉作りだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます