第4話 証拠と、告発と、裁定
ギルドに訴えるのは証拠が要る。
そこで目をつけたのは医者のヘロンだ。
やつなら冒険者じゃないから、どうとでもなる。
ヘロンの居場所はすぐに分かった。
場所を聞く時耳に挟んだのだが、藪医者で飲んだくれらしい。
ヘロンの治療院で待つと、気持ちよく酔っ払ったヘロンが帰ってきた。
俺の顔を見た途端ガタガタと震え出した。
「待て、話せば分かる。俺を呪い殺すのなら、栄光のメンバーから先に殺せ」
アンデッドになって復讐にでも来たと思ったのだろう。
聖句を唱え始めた。
俺が羽交い絞めにすると。
「はっ、暖かい。生きているのか?」
「ああ、ピンピンしてるよ」
「くそっ、離せ」
「良い物を食わせてやる」
俺はヘロンの口の中に飴玉を押し込んだ。
もちろん激マズにしてある。
「オエっ、オロオロ」
ヘロンはゲロを吐き始めた。
手加減したから邪神みたいに死ぬことはないだろう。
胃の中の物が全て無くなったのだろう。
吐く物が胃液だけになった。
俺はヘロンを放した。
「いいか、証言しないと言うのなら、もっと良い物を食わせるぞ」
「します。証言します。うっぷ、オエっ」
しばらく吐き続けげっそりとしたヘロンを連れて、ギルドに行った。
「Sランクの栄光パーティを殺人未遂で告発したい!」
「また、あなたですか!」
「ここにいるヘロンが証人だ」
「冗談ではないのですね」
「ああ、ヘロン話せ」
「俺はテイストを罠に嵌めて邪神のダンジョンに連れ込んだ。栄光に頼まれてな。そしたら、栄光がテイストを邪神の穴に落としたのさ。言っておくが俺は関与してない。俺の罪はおびき出した事だけだ。うっぷ」
「聞いての通りだ」
「分かりました後日裁定の日を設けます」
俺は裁定の日を待った。
そして裁定の日。
「くそっ、テイスト生きてたのか!」
俺が部屋に入るなり、ジャスが声を荒らげた。
「静かに。これより、ヘイスト殺害未遂の裁定を行います。
「ああ殺人未遂に関しては認めるよ。だが、理由がある」
「横領の件の報復なら、理由になりませんよ」
「いや、俺はは逆にテイストを呪術の関係者として告発する」
「証拠は何です?」
「証拠はない。しかし、俺達はAランク依頼を3度連続で失敗している。呪い以外には考えられない」
「テイストさん、これに関して反論は?」
「呪術なんてやってない。それしか言えない」
「困りましたね。この件は疑惑に留めておきましょう。証拠がない以上断定はできません」
「俺達はどうなるんだ?」
ジャスが尋ねる。
「警備兵に殺人未遂として突き出すのは無しにします。テイストさんには怪我が無いようですので。ですが、そこが新たな疑問です。どうやって生き残ったのか話せますか?」
邪神を殺したなんて話はできないな。
信じて貰える訳が無い。
俺だってそんな話を聞いたら、信じないだろう。
「運よく途中の横穴に引っ掛かって、ポータルがあったので無傷で生還できた」
「そのぐらいの強運が無いと無理ですね。その説明を暫定的に認定しましょう。しかし、呪術など特殊な能力を使ったとも考えられます。その疑いは晴れませんが、断定とまではいきません」
「呪いに決まっている! 邪神と呪い的な何かで取引したんだ!」
「静かに! ギルドとしては、心情的に横領をしたテイストを粛清したいという思いと、呪い疑惑を加味すると、3ランク降格辺りが妥当と考えます。栄光は今後テイストさんに手を出した場合、心象はかなり悪いと言わなければなりません。警告だと考えても構いません」
「くそう、3ランクも下がるのか。ちくしょう」
ジャスが殺意のこもった目で俺をみる。
3ランク降格か。
もっと厳罰を望んでいたんだが、仕方ないかな。
ギルドにモンスター肉の有用性を秘密にしたのが不味かった。
モンスター肉の有用性は金になる。
レストランを開けば、上級冒険者で溢れかえるだろう。
他にもモンスター肉での金儲けの種はいくらでもある。
誰だって、秘密にしておくだろうさ。
いよいよ、ジャス達は俺を殺しに掛かってくる事は間違いない。
入念に準備して今度こそ確実にくるにと思う。
医者の助手をやっている場合じゃないな。
こっちも準備しないと。
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