第14話 古戦場と、激マズ魔力と、精霊の粉

 古戦場は死者の怨念のせいなのか瘴気が渦巻いている。

 長く中にいると、精気を吸われ段々と弱っていく。

 平気なのはアンデッドぐらいだ。

 だが、俺達にはモンスター肉がある。

 精気補充は任せとけ。


「よし、モンスター肉は食ったな。入るぞ」


 境界には石碑が建っている。

 その石碑の先は古戦場だ。

 境界近くは、瘴気が薄いのだろう。

 迎えてくれたのはスケルトンの一団。


 キュアラの回復魔法のさびになってもらった。

 しばらく進むと、霧がかたまったようなゴーストが出て来た。


「実験してみたい。任せてくれ。【味変】」


 俺はゴーストに近づくとゴーストの中に腕を突っ込んだ。

 ゴーストは四散して、魔石を落とした。

 何をしたかと言えば、吸われる精気の味を不味くしたのだ。

 ゴーストも精気を食うなら俺の敵じゃない。

 レイスでもなんでもどんとこいだ。


 呪いは俺には効かないし、アンデッドとの相性はいいな。

 問題はキングスケルトンと殴り合いになったら勝てるかという事。

 あれっ、スケルトンは動いているよな。


 動くのに何にも食わないというのはおかしい。

 動けば腹が減るからな。

 スケルトンの主食は何だ。


「メディシス、スケルトンて何の力で動いている」

「魔力なのだ」

「なんだ。アンデッドも物を食うじゃないか。勝ったな。後はリッチと魔法戦か」


 スケルトンが来たので実験してみる事にする。


「任せろ。【味変】」


 スケルトンを掴み不味い魔力を流し込む。

 スケルトンは死んだ。

 死んでいるのに不味さに耐え切れず死ぬのだな。

 邪神も死ぬから、頷けるけどね。


 魔力を流すのは誰にでもできる技だ。

 魔道具を使うには必須だからな。


 待てよ。

 これをもっと発展させられないか。

 不味い魔力を飛ばしたら遠距離攻撃が出来る。

 スケルトン系アンデッドに対しての必殺技になる。


「テイストは何で触っただけで、ゴーストやスケルトンを殺せるのだ」

「あのね。味を激マズに変えているらしいわ。死ぬほど不味いらしいわよ」

「不味さを極めたら毒になるのか。ポーションで吐いた人はいたけど、驚きなのだ」


 二人の俺を見る目が、変態を見る目だ。

 仕方ないだろ。

 これしかスキルがないんだから。

 5つも戦闘スキル持っている奴とは違う。

 戦い方が泥臭くなるのは許してほしい。


 さて、魔力を飛ばすのだが、切り離すと霧散してしまう。

 鞭の様に絡めとるのが正解か。


 魔力なら腐るほどあるから、スケルトンで練習だ。


 スケルトンの一団がやってきた。

 俺は魔力の鞭を繰り出した。

 狙っていた隣のスケルトンが死ぬ。

 魔力が見えないから、狙いが定まらない。

 結局、接近戦で魔力を流し込んで始末した。


「メディシス、魔力を見る能力のモンスターはいる?」

「本によれば、バンシーは魔力を見て死期を判断すると、言われているのだ」


「死の叫びで精気を持ってかれる奴ね。魔力じゃなくて精気を見ているんじゃないか」

「他のだと、邪精霊が魔力を見てるかもなのだ」

「そうだな。精霊は清浄な魔力に惹かれると言うな。よし、【味変】」


「何をしたのだ」

「俺の魔力を極上の味に変えた。邪精霊がいれば寄って来るはずだ」


 邪精霊は精霊が瘴気で狂ったと言われる存在だ。

 生命なら何でも襲い掛かる。

 精霊は大人しいので、モンスターの括りだが、討伐は禁止されている。

 精霊が手助けしてくれる事もあるからだ。


 しばらくして、つむじ風が寄って来た。

 邪精霊だな。

 俺は駆け寄る。

 俺を標的と認めたらしい。


 俺は邪精霊の下に布を敷いて、邪精霊の中に腕を突っ込んだ。

 もちろん魔力の味を激マズに変えてある。

 邪精霊は霧散した。

 布に魔石と体の構成物が落ちる。


「鑑定してくれ」

「【鑑定】。名称、精霊の粉。味はしない、魔力が回復。魔力視が備わる。食用できるのだ」


 精霊の粉なんて素材は初めて聞いた。

 邪精霊を倒すのは大変だからな。

 Sランクパーティが必要だ。

 セオリーは遠距離からの魔法戦だ。

 物理は効かない。

 魔法で吹っ飛ばしたら、素材は魔石ぐらいしか採れないよな。

 それで知られてないのか。


 精霊の粉を舐めて見る。

 おお、魔力が分かる。

 これは凄い素材だ。

 風で飛ばされないように、手早く精霊の粉を回収した。


 よし、がんがん行くぞ。

 俺達はアンデッドを蹴散らしながら、中心部に向かった。

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