第2話 テイストの仕業

Side:ジャス

 グリフォンのねぐらに突撃する。

 ねぐらは小枝を集めて作られていた。

 樹の上でない事に感謝した。


「【貫通】しっ!」


 スカウが先手必勝とばかりに矢を放つ。

 矢は惜しい所で外した。

 グリフォンが飛び立つ。


「【挑発】来い!」


 シルドが挑発スキルを使う。

 グリフォンが急降下。

 シルドの盾に前足の爪を立てる


「【剛力】。くっ、持ちこたえられない」


 シルドが押されて倒れそうだ。


「【俊足】【斬撃】」


 俺はスキルを使いグリフォンに攻撃した。

 飛び散る羽毛。


「やったか?」


 俺は構えを解いた。


「油断しちゃ駄目だとあれ程言ったのに、馬鹿なの!【火魔法】」


 マナがファイヤーアローを放つ。

 グリフォンは再び舞い上がった。


 グリフォンが空中で大きく息を吸い込んだ。

 つんざく様な叫び声。

 俺達は一瞬固まった。

 その隙をついて急降下したグリフォンが、俺の腕をひっかいた。


 血が腕から噴き出す。


「【回復魔法】【解毒魔法】」

「キュアラ、助かった」


 グリフォンはと見ると逃げていく所だった。

 スカウが矢を放つが届かない。


 討伐依頼に失敗した。

 おかしい。

 Sランク依頼ならともかくAランク依頼だぞ。

 こんなのを失敗する訳ない。

 風の噂で聞いた事がある。


 呪いを掛ける呪術師がいると。

 呪いは本来、アンデッドなどのモンスターが掛けてくるものだ。

 人間には出来ないはずのそれをこなす人間がいるようだ。


 きっと、その呪いに掛かったのだ。

 テイストの仕業に違いない。

 そんな事をするのは奴しかいない。

 そういえば、討伐の時にいやに体が重かった。

 いつもは楽々振るえる大剣もキレがない。


「呪いを掛けられたようだが、みんなはどうだ」


「盾がいやに重かったな」


 とシルド。

 やっぱりだ。


「スピードにキレが無かったわ」


 とスカウが。

 やっぱりだ。


「魔法の威力ものらなかったわね」


 マナも同様の事を言う。


「回復量が少ないようにみうけられました。ですが、呪いだとは断定できないと思います」


 キュアラも不調は感じたが、呪いには否定的だな。


「解呪師の所に行こう」


 ギルド紹介の解呪師は、裏通りに店を構えていた。

 清潔な感じのする内装で、治療院を思わせる。


「弱体化の呪いを掛けられた」

「ふむ、では。【解呪魔法】。どうですかな?」


 俺は部屋を出ると庭で大剣を振るった。

 重いな。

 部屋に戻り。


「解呪されていない」

「そうなりますと、スキルレベル5以上ですな」

「英雄クラスか。そんな事が可能なのか?」


「代償を払えば、あるいは。スキルレベルなどを犠牲にすれば可能でしょう」


 テイストが怪しい。

 きっとスキルレベルを奉げたんだ。

 カンストしたと言っていた。

 そうに違いない。


 だいたい、あいつは前から気に入らなかった。

 パーティの中で最古参。

 戦闘には加わらない。

 戦闘中はポーションの管理だけ。

 他には雑用をこなしただけなのに、大きな顔をする。

 分け前だって人数割りだ。


 前々から報酬に関しては不平等だと思ってた。

 働きに応じて分けるべきだと。


 過ぎた事は仕方ない。

 これからどうするかという事だ。

 俺の頭にある計画が浮かんだ。


「代償を払った者を殺せばどうなる?」

「呪いは解けますな」

「世話になった」


 俺はパーティメンバーを集めた。


「みんなはどうだった?」

「駄目だな。解呪できなかった」

「私も駄目」

「もう鬱陶うっとうしくて適わない。この呪いを早くどうにかしたいわ」

「私も駄目でした」


「俺に計画があるんだ」


 俺は計画を話した。

 驚きの声が上がる。

 これからやろうとしている事は犯罪だ。

 だが正当防衛とも言える。

 それに呪術師は火あぶりと決まっている。

 依頼者もだ。


 正義は俺達にある。

 呪いを解いて元のSランクの実力に戻るんだ。

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