最終話 スカウと、決闘と、結末
仮面を被った俺の前にスカウがいる。
それは別に良い。
問題はシルドまで付いて来た事だ。
シルドも別の方法で罠に嵌めるつもりだったが、こうなれば作戦変更だ。
「早く解呪しなさいよ」
「そうだ。金ならいくらでも払う」
「解呪する前に言っておくことがあります」
「何よ?」
「もったいぶりやがって」
「聖水を飲んでもらうわけですが、少々味が特殊でして、人によっては美味く感じたり、不味かったりします」
「味ぐらい。少しぐらい変でも気にしないわ」
「そうだな。気にしないぞ」
「それを聞いて安心しました。後で文句を言われても困るので」
モンスターのバフましましのスープを杯に入れた。
「怪しいわね。飲んでみなさいよ」
「では」
俺は小声でスキルを発動。
普通に美味くしたスープを飲んだ。
「毒は入ってないようね」
「ええ、入ってません。神に誓えます」
二人の杯にスキルを掛けた。
何の疑いもなしに二人は杯を仰ぎスカウは白目を剥いて、シルドは泡を吹いて死んだ。
スカウの杯は激ウマに、シルドのは激マズにしてあった。
「よし、撤収」
シルドの死体を残して、気絶したスカウを4人で運ぶ。
そして、メディシスの家のベッドでスカウを起こした。
「怪しいと思ったが、あんただったのね。殺すの」
「いや、極上の料理を味あわせてやるだけだよ」
スカウの下のお口で極上を味わってもらった。
抵抗したが、最後には屈服した。
「はぁはぁ、酷い洗脳ね」
「そうでもないだろ。苦痛はなかったはずだ」
「快楽も苦しいものよ。でももうこの味からは抜けられない」
「スキルを使ってみろよ」
「【鷹目】。嘘っ! 呪いが解けている」
「聖水を飲ませたろ。あれはバフが掛かるんだ」
「何ですって」
「モンスターの料理を食わせたと言ったよな。あれは真実だ。メディシス、鑑定を掛けてみろ」
「【鑑定】。モンスターのスープ。脳をかき回すような激マズ。集中力増強」
「メディシスが嘘を言っているかも知れないと思うだろうが。こいつは薬師だ。薬効に対して嘘はつかん」
「どうもそうみたい。結局、私達が悪かったという事なのね」
「さっそく仕事だ。毒矢を使う殺し屋が俺を狙っている。遠距離攻撃は苦手でな」
「任せて。毒矢を使うなんて許せない」
街に出てスカウが弓を構えた。
「【鷹目】。見つけた。もやみたいな人ね。スキルかしら」
「【味変】。特別な味をつけた矢だ。味わえよ」
「しっ」
矢が放たれた。
「当たったわ。手ごたえがあったから。でも体が霧散したようね」
「スキルの副作用かなんかだろ。激マズの矢を食らって無事なはずがない。気絶ぐらいはするはずだ」
「ジャスが出て来たわ慌てているようね。こっちに向かって走って来る」
「矢で殺すのは不味いな。近くに来たら殺そう」
しばらく待っていたら、ジャスが現れた。
「ミストを殺しやがって、殺してやる」
そう言うとジャスは俺に化けた。
「変身なんてスキルを得たのか」
そうだ、いい考えがある。
「あー、こいつはモンスターに違いない。殺しても罪には問えないな。キュアラ、ジャスに化けていたモンスターに回復魔法だ」
「【回復魔法】」
キュアラがジャスに回復魔法を放つ。
「【味変】」
俺は回復魔法を激マズに変えた。
「【味変】。スキルをコピーしてやったぞ。これで互角のはずだ。ぐはっ……何で」
そう言ってジャスが死んだと思ったら、灰色のモンスターの死骸が現れた。
「おい、モンスターなのかよ。じゃあ、ジャスはもう死んでいる?」
「確かめてきてあげるわ。ついでにパーティを抜けて来る」
そう言ってスカウが足早に去って行った。
急展開だ。
これで一件落着なら良いのにな。
「テイスト、お前に決闘を申し込む」
ギルド前でジャスに決闘を申し込まれた。
こいつ、モンスターにやられてたわけじゃないのだな。
とりあえず、聞きたい事は一つ。
「お前、俺を邪神の穴に突き落としたか?」
「何を言っている。ああ、突き落としたさ。それの復讐でパーティメンバーを引き抜いたんだろ。シルドを殺したのもお前だな」
「シルドを殺した証拠は?」
「ない、ギルドの見立てでは、病死だろうと。だが、そんな事は信じない」
間違っちゃいないが、証拠を持って来てから言うのだな。
それにシルドは味が変だと言った警告を無視してスープを飲んだ。
俺が殺したというより自殺だな。
俺はそう思っているから、嘘判別スキルにもそう出るだろう。
「決闘は受けてやるよ。掛かって来い」
立会人が出て来て決闘が始まる。
「始め」
俺は一撃でジャスの腕を斬り飛ばした。
バフが掛かっているとはいえ、こいつこんなに弱かったか。
「頼む。殺さないでくれ。お願いだ」
どうしようかな。
「殺してもらっては、困りますね」
黒い衣装を身に着けた男が現れた。
「お前、誰だ?」
「ルシフェと申します。名前を憶えておいてもらわなくても結構です。この場にいる者はみんな死ぬのですから」
ルシフェはジャスの傷口に卵を押し付けた。
「恨み恨み恨みぃぃぃぃ」
ジャスがおかしくなった。
そして、ジャスが膨れ上がる。
どこかで見た、形になった。
ああ、邪神だ。
「テイスト、殺すぅ」
邪神がそう低い声で言った。
「キュアラ、ルシフェに回復魔法だ」
「はい、【回復魔法】」
「【味変】」
回復魔法は激マズになり、ルシフェに当たった。
ルシフェは角が生え肌の色が青くなった。
こいつもモンスターだったか。
「ぐぉ、これは……そうか」
ルシフェは息絶えた。
さて、残るは邪神だ。
俺は邪神に飛びつくと口の中に飛び込んだ。
そして。
「【味変】。激マズを食らえ」
俺がナイフで手を切ると、血が垂れ、邪神が俺を吐き出した。
「いてぇなこの野郎」
邪神が悶えしぼんで、ジャスの死骸と卵に戻る。
傷に卵を押し付けると復活するんだったな。
激マズの俺でもそうなるかな。
俺は卵に手の平を押し付けた。
卵が震えて、そして砕け散った。
脳内に『人類よ。喜べ。滅びの一つがなくなったぞ。この偉大な行為に祝福を贈ろう』と声が聞こえた。
もう復活はしないって事だな。
「おい、聞いたか。英雄の誕生だ」
決闘の観客が騒ぎ出す。
俺って、もしかして人類を救っちゃった。
味を変えただけなのにな。
-完-
――――――――――――――――――――――――
題材的には小ネタです。
話の広がりもそんなにないので終わらせました。
味変スキルがレベルMAXで最強無双~ポーションの味を変え続けて10年。俺を追放したあいつらは、俺がモンスター肉を激ウマのステータスアップ料理に変えてた事を信じない~ 喰寝丸太 @455834
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます