第16話 受付嬢と、昇格試験と、マナ

 お待ちかね。

 ギルドでの換金だ。


「キングスケルトンの魔石が5、リッチとデュラハンが1つずつ。全部で金貨1384枚になります。テイストさん、今度お食事でもいかがですか?」


 ジャスがモテモテだったのは金回りが良かったからだな。

 俺は自腹でモンスター食材に金を使っていたから、貧乏だった。


 この誘いを無下に断って波風立てるのは不味いな。

 受付嬢を敵に回すと恐い。

 だが、敵対してくるようだったら、激ウマ極めを食わして、下の口で味わってもらおう。


「ごめん、忙しいんだ。今度、お詫びに差し入れを持ってくるよ。みんなで食べると良い」

「ちぇっ」


 機嫌を損ねたかな。

 でも隣の受付嬢は俺達を見て笑っていた。


「美味しいのを持ってくるから」

「絶対ですよ」


「Cランクの昇格試験を受けたい」

「すぐに大丈夫ですか?」

「問題ない」

「では連絡しておきます」


 準備整え修練場に行くと、教官と男がいた。


「お前は次だ」

「予約してたのに」


「見るのも良い勉強になる。おお、来たか。じゃ始めるぞ。掛かって来い」


 俺は干し肉を食ってから、デュラハンの塵を舐めた。


「行きます」


 激しい剣劇が始まった。

 見えるぞ。

 次の一手が見える。


 さっきの男があんぐりと口を開けているのを見る余裕すらある。

 そして、蹴りを食らった。


 あれっ、予測にはない手だ。


「成長したな。俺の攻撃パターンを読むとは大したものだ。だが奇想天外な手で出てくる事を忘れたらいけない。Cランクおめでとう。面接を受けると良い」

「ありがとうございました。次は勝ちます」


 Cランクからは面接がある。

 嘘判別スキルを持った真偽官が出てくる。


 俺は緊張して取調室に入った。


「昇格試験の面接よね」

「はい」

「そんなに緊張しなくて良いわ。じゃ始めるわね。【嘘判別】、今まで捕まるような犯罪をした事は?」

「ありません」

「【嘘判別】、今後犯罪を犯す予定は?」

「ありません。殺し屋は返り討ちにするかもだけど」

「ふふふ、正直なのね。襲ってきた殺し屋を殺すのは認められているわ」


「それに料理を振る舞って女の子と仲良くなるかも」

「口説いてるの?」

「いいえ、ちょっとパーティメンバーとの出会いがあれだったので」


「料理に薬を入れたりしない限り、法には触れないわ」

「薬を入れるなんてとんでもない。料理の味には自信があります。料理に対する冒涜です」

「なら別に構わないわ。もう行っていいわよ」


 受付に戻って手続きをする。

 見知った顔が現れた。

 マナだ。


「あんた、私に雇われなさい」

「何で?」

「つべこべ言わないの。あなたの為を思っていってるんだから。どうせ、キュアラにおんぶに抱っこで、古戦場に遠征したんでしょうけど。駄目だったのは分かっているわ」

「いや、たんまり稼いだけど」

「見栄なんか張らなくていいのよ。あなたの面倒をみてあげられるのは私ぐらいなものよ」


 なんでこう上から目線なのだろう。

 むかむかきた。


「マナなら、他のパーティでもやっていけるだろう。俺に構うな!」

「いけるけど。面倒をみてやると言っているのよ。大人しく頷いておきなさい」


 キュアラは俺の追放に反対してくれた。

 マナはそうじゃない。

 じゃあ、遠慮は要らないな。

 マナをメディシスの屋敷に連れていった。


「マナのリーダー就任のお祝いに、俺が腕によりをかけて料理を作るよ」


 マナとキュアラとメディシスが食卓に着く。

 俺は給仕だ。


「キュアラ、メディシス、マナを押さえろ」

「えっどういうつもり」


 俺はマナの口に料理を突っ込んだ。

 白目を剥くマナ。


 マナをベッドへ運ぶ。

 そして起きるまで待った。


「許さない【火っ】むぐっ」


 マナが白目を剥く。

 抵抗する気が失せるまで何度も激ウマ極めを味合ってもらう。


「くっ、好きにしなさいよ。でも心まで屈服しないんだから」

「くっくっく、下の口で味わってもそれが言えるかな」


 下のお口で激ウマを味わってもらった。

 やっぱりマナも処女だった。


「ちょっと、なにしたのよ。というかあんな事を。もう許さないんだから」

「じゃ殺すのか?」

「ちょっと、なにしようとしているの」

「分かるまで何度でも、料理を味わってもらうさ」

「いやーっ」


 マナは3回の激ウマで陥落した。


「あなたのおもてなしに付き合えるのは私ぐらいだわ。さあ、大して美味くない料理を持って来なさい」

「まだ食い足りないのか。大食いだな。まあいいか。3人まとめて、もてなしてやるよ」


 3人とも下のお口で激ウマを味わってもらった。

 ゴブリンの干し肉が大活躍。


 ふぅ、ゴブリンの干し肉さまさまだな。

 朝になり、キングスケルトンとリッチの骨から出汁をとったスープを振る舞う。


「一つ聞かせてほしい。何で俺の所へ来た?」

「あなたの不味い料理がちょっと懐かしいのよ。美味い物を食べ過ぎて、ああいうのが良いの。あなたがパーティを出てってから気づいたわ。でも、ぜんぜん後悔なんかしてないんだからね」


 胃袋を掴んでいたという訳か。

 味変の激ウマは美味いからな。

 気づくのが遅いよ。

 突き落としたのはジャスだから、奴意外に殺意があったのかは分からない。


 そうだ。

 これも聞いておかないと。


「俺がモンスター料理を食わしていたという話をしたな。どう思っている」

「信じなくて悪かったとか思ってないんだから。でも、やっぱり、ちょびっとだけ悪かったって思っているわ」


 うんうん、ちょびっとだけ思っているのか。

 まあそれで十分だ。


「マナも俺のパーティに入れ」

「やった! ちがうちがう、嬉しいなんて思ってないんだからね」


「マナは基本に立ち返って魔力の流れとかイメージとかを改善するように」

「生意気よ。アドバイス嬉しいなんて、ちっとも思わないわ」


 スープを飲んでマナが。


「これよこれ、この味よ。ちょっと何? みんな私を見て。美味いなんて思ってないんだからぁ」

「はいはい」


「【火魔法】。うそ、呪いが解けた。何で?」

「俺がいなくなるまでは、料理でバフが掛かっていたんだよ」

「そうなの。愛してるなんてちょっとも思ってないわ」


 マナはスカウトされた才能はあるんだから、なんとかやっていけるだろう。

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