第二章 過去と現実②

 アルバイトの出勤まで後1時間ある。余裕すぎだ。本当にその間暇である。一旦帰宅してシャワーでも浴びてから向かっても余裕で時間が余る程である。

 遠真がどうするか悩んでいると、ノイズのかかった女の声が脳内に響く。


 『トオマ!もしかしたらクリーチャーが出たかも!』


 テテの声だ。遠く離れていても、脳内に話しかけて勝手に遠真が喋ると、テテの意識と繋がるようになるらしい。

 えっ!こんな時に!と思いつつ、遠真は『まぁ、ちゃっちゃと始末しちゃえばアルバイトには間に合うか』と考えを切り返しポジティブに捉える。


 『どこにいる?近くか?』


 『いや、気配は感じるのだが、ここじゃないよ。もっと離れている。案内するわ』


 『オッケー!じゃあこの前言ってたテレポートって奴をよろしくな!』


 テテがテレポートを使う際の指示を出す。


 『じゃあ、アタシと意識をシンクロさせるから目を閉じて』


 そして、意識が繋がるよう強く念じるよう指示された。

 遠真は、一瞬でその場の地面がなくなって落下していくような体験をする。


 『着いた!』


 テテの声で目を開けると、そこはどこかの都会街。辺りには家電量販店やゲームセンターが並んでおり、知らない学校の生徒達が歩道を歩いていた。

 手にはファーストフード店で購入した食品やゲームセンターで獲得したであろうストラップを手に持っていた。

 遠真が後ろを振り向くと、テレポートのせいか急に現れた遠真にビックリしている大人達がいた。

 遠真は、何事もなかったかのように振る舞いながらその場を離れる。


 『ねぇ、あれって』


 遠くまで走って、誰もいない公園で見つけたのは、【クロックエリア】だった。


 『見つけた!あそこから出てくるかもしれない。トオマ!融合を』


『あぁ!だけど誰もいなぇよなぁ』


 『大丈夫だよ。戦いが終われば何事もなかったようになる。だから他の人達は記憶がない筈だから。見られても平気だよ』


 『まぁそうだな。やっつけちまえば全て結果オーライ』


 そして遠真は意識をテテとシンクロさせる。




 上空から【クロックエリア】に出てくるであろうクリーチャーを見届ける。遠真の身体はフワフワと上空を浮かび、街の景色を眺めながら待っている。


 『なぁ、あれって直接壊すことって確かできないんだよなぁ』


 『まぁ、不可能だな。触ることが出来ないし、下手に近づけば危機察知センサーのようなものが反応するのか、クリーチャーが大量発生してしまう』


 『そうだよな。まだかよ、クリーチャー』


 雑談している時だった。【クロックエリア】からクリーチャーが頭?から姿を現す。


 『おっ!来た来た!さっさと片付けて!』


『あのクリーチャー、なんか変な形してる』


 テテの言う通りだった。クリーチャーの頭かと思いきや、出てきたのは『手』の形をしている。また何か巨大なクリーチャーかもしれないと思った遠真は、手だけでも消してしまえばすぐ終わると思い、クリーチャーに向かって高速で向かう。


 『やめろ!トオマ!下手に近づいたらクリーチャーが!』


 そんな事気にせず、ジェットコースターのように猛スピードで向かうと、手の形をしたクリーチャーが遠真に向かって伸びてきた。

 掌から更に手の形をしたクリーチャーが分裂して出てきて、遠真の身体を握りつぶすように掴む。


 『しまった!コイツ!』


 遠真が力づくで拘束された身体を抜け出そうと奮闘するが、中々離れない。思いっきり腕を広げようとしても、拘束力の方が強かった。


 『トオマ!しっかりして!』


 『わかってるよ。こんなもの!』


 そして遠真の抵抗に対して更に強く拘束してくるのを、上から何かが覆い被さる。ひとまわり大きな手のクリーチャーだった。遠真の身体を完全に包み込み、叫ぶ声も聞こえかなった。

 そのまま遠真を紋章の中へゆっくりと引きずり込もうとする。長く伸びた手のクリーチャーは遠真を飲み込んでいき、【クロックエリアの中へと消えて行った。

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